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ASML、EUV開発のリスク分散を狙いインテル等と共同開発プログラムを提案

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世界第1位の半導体メーカーと世界1位の半導体製造装置メーカーが「深い関係」を持つことで合意した。インテルはASMLの株式の15%を出資する。この出資金はASMLの、将来に向けたEUVや450mm装置の開発に使われる。

図1 ASMLの長期開発ロードマップ

図1 ASMLの長期開発ロードマップ


ASMLは、共同開発プログラムを提案、パートナー(実質的にはASMLの顧客となる半導体メーカーやファウンドリ)に株式の最大25%(13億8000万ユーロ相当)出資してもらう、というもの。このうちインテルが最初に手を上げ、15%相当(8億2900万ユーロ:インテルの場合1株=39.91ユーロ)を出資するという訳だ。残りの10%分を別の顧客などに投資してもらうが、1株当たり39.91ユーロ以上の価格で発行する。資本参加は任意だが、提供された資金は研究開発だけに投入されることに同意しなければならない。

資金提供パートナーにとっては、共同で開発することでリスクを分散・共有することができる。インテルは、ASMLと共に研究することで450mmとEUVの実用化を加速できる。インテル以外にも、他の半導体メーカーやファウンドリにも参加を呼び掛けている。

ASMLは、IMEC、SEMATECHともこれまで進めてきたEUVリソグラフィ技術開発にさらに必要な今後の資金を調達するため、この共同プログラムを考案した。今回真っ先に手を上げたのがインテルであり、インテルは450mmウェーハ技術に力を入れてきた。そこで、両社が結んだ合意では、この二つのテーマを今後5年間に渡って共同で開発する。

インテルが出資する8億2900万ユーロの内訳は、EUV開発に約3億ユーロ、450mm開発に約5億ユーロとなっている。今回、8億2900万ユーロのうち2/3に相当する金額を出資し、残りの1/3を次の新株発行時に出資する。

この共同開発プログラムは、研究開発に力点を置いた増資であり、資金提供パートナーは研究開発に対するリスクをASMLと共に持つことになるが、450mmとEUVの装置に対して優先的に注文できるというメリットがある。ただし、今回の資金提供パートナーには基本的に議決権はなく取締役会に代表者を送ることはできない。

また、今回のプログラムでは既存の株主の承認も必要としており、既存株主をケアしている。既存株主の承認を得た後、増資による株式の希釈化がないようにするため、新株発行による現金は株主に直接還元されるという。

大きな投資が必要な研究開発を自前で行うのではなく、ASMLはユーザーである半導体メーカーやファウンドリに向けて、一緒に開発しようと呼びかけ、開発リスクを分散している。こういったコラボレーションこそ、リスクを減らし、開発期間を短縮し早く製品を市場に出せる手法となる。研究開発に絞った、この増資プログラムは、新しい資金調達手法として注目されるだろう。

(2012/07/11)

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