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日立と三菱重工の経営統合はどこへ行く

先週はビッグニュースが飛び交った。8月4日日本経済新聞は、トップニュースで日立製作所と三菱重工業の経営統合の話し合いを始めることで合意した、と伝えた。日立、三菱重工共、同日ニュースリリースを流し、そのような事実はない、当社が流したものではない、という公式のコメントを発表したものの、日経は同日の夕刊でも同様なニュースを流した。

今のところ、どこまでどういう形で経営統合するのかについてはこれから協議するため、
まだ何も出てこない。日立は重電部門だけではなく、ITや半導体部門(ルネサス)も持っている。対して三菱重工は発電プラントなどの重電は共通するが、交通インフラが強い。航空機や宇宙開発、エネルギー、船舶、車両などが得意な企業だ。トンネル掘削機や巨大な排水設備などのインフラ事業も大きい。これからの再生可能エネルギーやスマートグリッドなどの施設には両社共に強いが、逆に言えば相互補完する製品やサービスは何か、もっと詳細に見て、これからの成長を期待できるかどうか、という視点で統合を論じることが必要となろう。

両社の部門統合はこれが初めてではない。製鉄用の機械を製造する会社として合弁会社、三菱日立製鉄機械株式会社がある。2000年に両社の製鉄事業部が統合してできた会社だ。かつてこの合弁会社の社長の講演を米国のソフトウエアメーカーPTC社のセミナーで聞いたことがある。統合した新会社は、共通システムの構築に際し、三菱製コンピュータでもなく日立製でもない、IBMコンピュータを導入し、PTC社のPLM(product life-cycle management)ソフトウエアを導入、各工場におけるさまざまなソフトウエアの共通化を図った、というお話だった。IBMという新しいシステムを導入することで両社員が一緒にシステム構築を進めるという共同作業を通して、両社員の壁を取り除いた。PLMは設計から製造、製品の在庫管理や寿命管理まで一貫して行えるソフトウエアであり、顧客やパートナー企業も必要な情報を共有できるという特長がある。設計から量産まで同じ部品情報を使えるためタイムツーマーケットを短縮できる。両社が個別に持っていたソフトをPLMに載せることで、同じ環境を作りやすく、国内・海外の違う工場で同じ部品情報、同じ工程情報、受注発注情報などを共有できるため、コピーエグザクトリ戦略を進めるのに向いている。

大企業同士の合併は、ともすれば遠慮しがちになる、その逆に一方を追い出すようなことにもなりがちだが、この社長の話は共に新たにシステムを構築するという仕事を通じてお互いの力をフルに引き出す効果があったと結んだ。今後、両社が統合する場合は全社なのか事業部門だけなのか、これから明らかになるが、こういった企業経営がこれからの統合に望まれるかもしれない。

最近は「超」がつくほどの円高が続いているが、世界的にみれば「超」ドル安なのである。円だけが高い訳ではない。台湾元も高くなりドル取引での企業の決算は悪化している。8月5日の日経産業新聞は、液晶パネルメーカーのAUO(友達光電)、奇美電子とも2011年の第2四半期には100億元(280億円程度)を超える赤字を計上したと報じた。液晶テレビの伸びが鈍化、ノートパソコンはタブレットに押されて減速しているという。

2011年上半期の半導体ランキング(参考資料1)の記事によると、前年の同時期と比べた為替レートは、日本円が12%高であり、台湾元は10%高となっている。欧州ユーロは6%高、韓国ウォンも5%高とドル安傾向が顕著になっている。もちろん日本の円高が最もひどいことには間違いないが、台湾元も同様にひどい。

新ビジネスとしてLEDの伸びはますます期待できるが、LED製造に必要なMOCVD装置のメーカー、太陽日酸は6インチウェーハを10枚処理できるMOCVD装置を開発、2012年はじめに発売する計画だ。8インチウェーハだと6枚同時に処理できる。LEDチップは0.25mm〜0.3mmと小さい製品が多いが、照明用に輝度を上げるために電流を増やしチップをもっと大きくする傾向がある。大チップに対応するにはGaNウェーハの大型化は必須になる。基板にはシリコンを使い、気相成長でGaNを堆積するという方法が注目を集めている。LEDはハロゲンランプやナトリウムランプに比べ消費電力が小さいため、LEDランプの設置が世界各地で増えている。


参考資料
1. 2011年上半期の世界半導体ランキング、インテルが再びサムスンを引き離す (2011/08/03)

(2011/08/08)
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