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またしても日の丸企業連合のニュースの一方で、新市場を開発する企業も活発

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先週は、液晶や太陽電池などの企業連合のニュースが相次いだ。これまでも企業連合の例はたくさんあったが、概して成功を収めたとは言われてこなかった。正直言って「またか」という思いを受けた。一方で、企業が独自に新しいマーケットを探しているというニュースもあり、特に成長の期待される市場に向けた模索が始まっている。

液晶では、東芝とソニーの連合が中小の液晶パネル事業で統合するという交渉を進めているが、その中に日立製作所も加わりそうだというニュースを6月30日の日本経済新聞が掲載した。7月中の合意を目指し、統合新会社を設立する。この新会社に政府系ファンドの産業革新機構が7割を出資するという。革新機構はファンドであって、決してVC(ベンチャーキャピタル)ではない。取材を通してわかったことだが、実績のある企業に投資して、株価の値上がりを期待し投資を回収するというビジネスモデルであり、実績を重視する。7月1日の日刊工業新聞は、「『事業統合は2社でも難しいのに3社でまとまるものだろうか』−業界内には日の丸液晶の動きに対する懐疑的な声が濃厚だ」と報じている。

一方、液晶を巡って、台湾の鴻海精密工業とシャープが提携しようとしている中(図1)、EMS(コントラクトベースの製造専門サービスメーカー)の鴻海精密が、日立の関連会社である日立ディスプレイズの経営権を取得しようとしている話を日経が報じている。鴻海は日立ディスプレイズが実施する第三者割当増資分を引き受けることで出資する。日立ディスプレイズは鴻海の子会社である奇美電子と生産委託で提携している。


図1 鴻海精密を巡る日本企業との関係 出典:セミコンダクタポータル

図1 鴻海精密を巡る日本企業との関係 出典:セミコンダクタポータル


台湾のEMSは欧米の企業からは、安く製造するための産業として「ピカ一」という評判を得ており、例えばアップル社は設計と販売、新ビジネスモデル、サービスなどは自前で行うが、製造部分のみ鴻海(工場は中国)に依頼している。英国の電子ブックメーカーのPlastic Logic社も基本設計は英国、試作と量産設計はドイツ、量産は中国、というように完全に役割分担している(参考資料1)。

太陽光発電に関しても、日本のパネルやセルのメーカーとプラント建設企業、商社・金融企業がチームとなって、タイやインドネシアなどのアジアと中東・北アフリカ、中南米に売り込みを図るというニュースが7月3日の日経に掲載された。政府もODAの枠を使うことで資金面の援助を行う。それぞれ得意な所を持ち寄ったチームであり、官民一体のうまい仕組みのように思える。

半導体の新しいマーケットを探る動きとして、7月4日の日刊工業がアジアのエアコン市場に向けて、インバータ用パワー半導体が伸びているという報告をしている。「三菱電機の民生用パワー半導体の2010年度の売上高は09年度比2倍の約400億円に達したが成長を支えたのが中国のエアコン市場だ」と伝えている。富士電機もインバータ用パワー半導体市場への参入を検討しているという。もう一つ具体例としてNFCがある。7月1日の日経産業は情報サービス企業のアルファメディアが学生の持つICカードと、授業を受ける机の上に張ったICタグを、カードリーダーで読み取らせ、学生の「代返」を防ぐ仕組みを提案したと報じた。授業中にカードリーダーを回覧し、ICタグとICカード(学生証)を読みとらせるという仕組みだ。リーダーと管理ソフトだけで12万円。富士通の特許を活用してシステムを試作した。将来、ICカード情報と読み取り回路を携帯電話のSIMカードに搭載し、携帯電話をカードリーダーとして活用すれば、NFCの市場はさらに拡大するだろう。

その他の半導体の新市場として、スマートハウスの試験を豊田市とトヨタ自動車などが市内で始めたというニュースが7月1日の日刊工業に、音楽配信のダウンロード市場が頭打ちになったことからクラウドを利用したストリーミングによる聞き放題サービスが出始めたことが7月1日の日経産業にそれぞれ掲載されている。

参考資料
1. 英国特集2010・有機トランジスタを利用した電子ブック、Plastic Logicが発売

(2011/07/04)

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