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東芝のECスマートハウスプロジェクト参加、三菱の三つの成長柱に期待

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先週は、富士通のスーパーコンピュータ「京」の計算速度が1秒間に8162兆回という最高性能を示し、「京」が世界一になったというニュースはあったが、産業競争力とは無縁の世界の話であるため、半導体業界の話題としては小さかった。むしろ、これからの成長産業に目を向けたスマートグリッド・EVに注目したい。

スパコンの市場規模は2015年にようやく1兆円という予想があるほど小さな規模。世界一という「実績」は研究者のモチベーションアップにはつながるが、ビジネスとはあまり関係ない。開発メーカーは大企業とはいえない、米クレイやSGIが10位中4つも占めている。非常にニッチなマーケットである。気象観測の大規模なデータの計算や宇宙の太陽風の解析などには強い需要がある。しかし、パソコンやサーバの能力が上がっているため、スパコンの領域が徐々にパソコンに浸食されている。例えば、10年以上前だと風洞実験や流体力学的なメッシュの細かい計算にもスパコンが使われていたが、今ではパソコンレベルである程度の流体力学を計算できるようになった。余談だが、自動車の衝突実験は今では最終確認として1回しか行わず、ほとんどパソコンやサーバによるシミュレーションで行われている。

評価したいニュースは、東芝と三菱電機からのもの。6月27日の日本経済新聞は、EC(欧州委員会)が2012年1月から始める次世代省エネルギー住宅実験に東芝(欧州研究所)が参加すると報じた。ワイヤレス通信技術の盛んな英国ブリストル市に研究拠点を持つ東芝にとって、欧州でのスマートグリッドの実験は極めて大きな意味を持つ。電力情報ネットワークのプロトコルなどを決める標準化活動にはじめから参加できるため、世界標準の内容と低コスト技術を手に入れられる。スマートハウスに使う、大きなHEMS(家庭用エネルギー管理システム)市場の主導権をとれる。東芝欧州研究所の所長でありブリストル大学の教授でもある、ジョー・マクギーハン氏(参考資料1)は英国と欧州の無線業界に影響力を持つ。東芝にとってメリットは極めて大きい。

もう一つ、三菱は、スマートグリッド、SiC、EV(電気自動車)の三つの分野を成長の柱とすると6月24日の日刊工業新聞が伝えている。スマートグリッドには国内プロジェクトに加え、トルコでの実証実験にも乗り出す。パワー半導体に強い三菱はSiCの開発も進めており、11年度内に鉄道用のデバイスを開発するとしている。EVやハイブリッドカー向けには14年度をめどにモーターとインバータのセットで提供するという。パワーエレクトロニクスに強い三菱をますます強くするという明確な戦略だ。


図1 Tesla社のEV、ロードスター

図1 Tesla社のEV、ロードスター


EV開発では米国のテスラ(Tesla Motors)社がスポーツカーを中心に市場へ投入、実績を徐々に上げているが、搭載された電池容量が大きい。大量に電池を積み込んでいるため、市販のロードスター(図1)は394kmの航続距離(参考資料2)を得ている。しかし、電池の体積が大きいため2人乗りに留まっている。日産自動車が昨年12月に発売したリーフでは電池の体積はその半分に抑え4人乗りとしたが、航続距離は200kmと短い。6月22日の日刊工業では、テスラは500kmの航続距離を目指すEVを2013年に発売すると発表している。

半導体メーカーそのもののニュースはどちらかといえば後ろ向きの話題が多い。27日の日刊工業では、東芝、ルネサスエレクトロニクス、富士通セミコンダクターが製品を絞り込むという話をまとめている。例えばルネサスは低収益の製品や成長が見込めない製品の生産中止を検討するとする。東芝はマイコンとアナログを半減させ、富士通は20分野を14分野に削減するとしている。まだ成長戦略の発表は東芝のNANDフラッシュ以外ない。

震災の教訓から、同一製品を複数の工場で生産することに対して「コスト競争力の維持が簡単ではない」(東芝)というコメントを23日の日刊工業で述べている。しかし、世界のいくつかの半導体メーカーはコピーエグザクトリ戦略でリスクを分散しながら利益率20〜40%を確保しているのに対して、日本の半導体メーカーはリスク分散しないで利益率が赤字〜数%というまずい結果を震災前から残してきた。何か根本的に間違っていないだろうか。競争力をつけるための低コスト技術の開発(設計技術から製造技術、テスト技術、流通に至る全て)をおろそかにしてきたつけが回ってきた。

参考資料
1. 英国特集2009・付加価値の高いモノづくりに貢献するために大学が存在する (2009/04/08)
2. インホイールモータEVは日産リーフと同じ電池容量で1.6倍の航続距離を達成 (2011/06/17)

(2011/06/27)

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