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LED照明産業の活気、パナのユニフィエ外販、電力貯蔵にLiイオン電池が話題

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先週は、LED照明に関する記事が目立った。これまで、日本では白熱球から蛍光灯と進んできて、LED照明はその次に来る第三の照明という呼び声も高い。一方、欧米では昔から蛍光灯は嫌われ日本ほど普及してこなかった。昨今の環境への配慮から、世界レベルで一挙にLED照明へと変わる気配を見せている。

6月20日の日経産業新聞は、中国におけるLED照明市場への参加の過熱ぶりを伝えている。中国政府が広東省深せん市や江蘇省揚州市等7都市を重点地区に選びLED産業を育てる計画だったが、この7都市以外の広東省江門市や安徽省蕪湖市がLED産業を積極的に誘致していると伝えている。江門市はLED製造に使うMOCVD(有機金属化学的気相成長)装置の購入金額の半額を企業に補助することで現在同市にある19台の装置を220台に増やすとしている。蕪湖市は、中国LED最大手の三安光電の誘致に成功した。同市から三安への補助金は11億元(136億円)を超えると報じている。

MOCVD大手の米Veecoが2011年に世界市場へ出荷する量850〜1100台の6割が中国向けだという。MOCVD製造装置メーカーにとって中国市場はブームともいえる。そもそもLEDは構造が単純なディスクリート半導体であるから、SoCと比べると設計力は全く要らない。製造力だけが必要で、製造装置に頼ることで大量生産が可能なビジネスだ。逆に言えば、LEDは設計力の乏しい中国でも作れる半導体製品ともいえる。

日本の菊川工業が太陽電池パネルを敷き詰めたLED街路灯を発売したというニュースもある。6月17日日刊工業新聞が報じたもので、建築物の金属内・外装工事を手掛けている菊川工業がLED照明に参入している。ソーラー電源用に蓄電池を内蔵しているため、災害時や節電の非常灯としても単独に使える。

LED照明ではGaNをベースにした半導体結晶を利用するが、有機EL(海外では有機LEDと呼ぶ)はフレキシブルに曲がるプラスチック素材をベースにできる。6月15日の日経MJは有機ELを使ったファッション、照明デザインなどの見本市がイタリアのミラノで開かれたというニュースを伝えている。LEDの応用がエレクトロニクスからこれまでにない分野へと進展していることは市場が膨張していることを表している(参考資料1)。

半導体システムLSIでは、社内市場(キャプティブマーケット)にしか向けてこなかったパナソニックの半導体部門がビデオ処理関係の共通LSIプラットフォームである「ユニフィエ」を社外にも活用する方向に転換し始めた、と日刊工業が報じた。これはスマートテレビ用ユニフィエシステムLSIを開発したという6月7日付けのニュースリリースを元に追加取材したようだ。このニュースリリースを読むと、このLSIにはビデオコーデック「ユニフィエ」にCPUコアとしてARMのCortex-A9デュアルコアプロセッサと3D/2Dのグラフィックスコアを集積しており、CPUはネットワーク処理を受け持つ。ただし、開発キットは用意していない模様で、LSIユーザーが独自性(差別化機能)を持たせることはできないため、社外のユーザーにどれほど受け入れられるか、不明である。

リチウムイオン電池は、これまで大きな電力を貯蔵するほどのメガワット(MW)級の大型蓄電システムにはほとんど使われてこなかった。NAS電池やNi-MH(ニッケル水素)電池などが新しい電池だったが、重量エネルギー密度、体積エネルギー密度の優れたリチウムイオン電池でMW級蓄電システムを三菱重工業が開発した、と6月17日付けの日刊工業が報じている。最大出力1000kW、蓄電容量は408kWhで、100世帯の家庭で3〜8時間使える電力を貯蔵できる。3.6Vのリチウムイオンセルを直並列に2000個以上搭載した40フィートコンテナ(長さ12.2m、幅2.4m、高さ2.6m)と、電力貯蔵・取り出しのためのパワーコンディショナを搭載した20フィートコンテナ(長さ6.1m、以下同じ)で構成するという。7月初旬に実証実験を始める計画。

参考資料
1. 世界のLED市場、2010年の5億ドルから2020年に134億ドルに成長という予測(2011/06/10)

(2011/06/20)

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