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ソフトウエアのソースコード開示にインドは反対、台湾も反対する方向か

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先週は、ISSCC(International Solid-State Circuits Conference)が行われ、日本の企業や大学が発表するICに関する発表が多かった。新聞各紙に報道される半導体回路技術は、半導体チップ内の一部にすぎずSoCといったシステムベースのチップの話は少ない。このニュース解説で採り上げるべきものかと悩んでしまう。

そのような中、気になったニュースは、2月25日の日本経済新聞に掲載された、中国がソースコードを企業に強制開示させるというニュースだった。ソースコードはプログラミングに使われる基本的な文字列そのもので、それを開示してしまったら誰にでも同じソフトウエアを作成できる。中国は以前、国営企業に納入する外国製品が対象だったが、日本を含む外国政府の反対を受け、政府調達に限定してこの措置を導入している。ブラジルとロシア、台湾も同様な措置を検討中と報じているが、外国企業としては到底受け入れられない。ソフトウエアはマネされると簡単にコピーできるためだ。

インドはこの制度の導入を中止する方針を固めたそうだが、インドは知的財産を盛り込んだソフトウエアを開発できるようになったからである。例えば、インドで長い間デザインハウスとしてLSIを設計してきたインドのLSI設計企業Softjin社(参考資料1)は、独自の価値のあるLSI設計ソフトウエアを作れるようになってきた。すなわちインドのソフトウエアのレベルが高くなっている。自ら価値のあるソフトウエアを開発できるようになると、この制度は逆に働く。インドで開発したソフトを中国に売り込むことができなくなるためだ。

日経新聞では台湾もソースコードの開示制度を検討していると報道しているが、台湾もインドと同じ行動をとるに違いない。というのは台湾にも設計だけのファブレス半導体企業が100〜200社もあるといわれており、設計用ソフトウエアを作る技術が長けてきたからである。台湾はTSMCに代表されるファウンドリ事業が有名であるが、ファブレス事業でも売り上げが10億ドルを超す世界のトップ13社に3社も含まれる(参考資料2)ように成長してきた。パソコンや携帯電話、さらには組み込みシステム用のソフト開発は半導体の世界でも同様であり、価値の高いソフトウエアが半導体の新たな価値を作り出す。冒頭でISSCCの話をしたが、システムLSIとしてのSoCでは回路における価値よりはソフトウエアの価値の比重が高くなりつつある。

半導体マイクロプロセッサのIPコアを開発している英ARM社は、ソフトIP(RTL出力)を決して中国に売らない方針だと聞いた。ソフトIPはいくらでもコピーされてしまう恐れがあるためだ。シリコンに焼きこんでしまうハードIPコア回路としてしか供給しない。ルネサスのように独自のIPを開発してきたメーカーも同様な方針を望む。

折しも日産自動車が手掛ける電気自動車の情報がルノーから流出したというニュースは記憶に新しい。キヤノンの執行役員知的財産法務本部長の長沢健一氏とのインタビュー記事が日経の2月25日付けに掲載されているが、全社的なガイドラインを作り、機密情報を外に伝えざるを得ないような場合には実績のある企業に限定しているという。ルノーからの流出事件は大変なショックだとしている。

また、定年退職者に海外から声がかかっていることに対しては、特別な技術を持つ人は手厚く遇するなど総合的に対応したいと応えている。60歳になると即会社を退職、という企業が多い現状を見直すことも、技術の流出を企業自身で防ぐことにつながるだろう。
(2011/02/28)

参考資料
1. レイアウトデータやマスク検査用EDAツールを提供するインドの「ソフト人」 (10/12/24)
2. ファブレス半導体、10億ドルプレイヤーが2010年には13社に増加、日本はゼロ (10/12/22)

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