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タブレットに見る携帯機器報道の温度差〜MWC2011から

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先週は、携帯技術の最大の見本市であるMobile World Congress 2011がスペインのバルセロナで開催されたせいか、スマートフォンなどの携帯機器に関するニュースが多かった。しかし、現地で取材した感触とはずいぶん違う。このニュース解説では、日本のメディアの捉え方とはずいぶん異なる、現地の業界人が感動したタブレットを伝えたい。

図 使い勝手の良さで評判のモトローラのXoom、指操作が速く種類も豊富

図 使い勝手の良さで評判のモトローラのXoom、指操作が速く種類も豊富


国内メディアはスマートフォン携帯端末を報道していたが、展示会と限られたコンファレンスの入場料が7万4000円もするMobile World Congressにはコンシューマ(一般消費者)はほとんど来ない。それでも200カ国から6万人以上が入場し、1361社が出展したと主催者は伝えている。特に、CEO(最高経営責任者)やCTO(最高技術責任者)などCのつく経営陣が参加者の51%に上ったという。すでに大きな流れは、「MWC2011〜LTE-Advancedチップや LTEの利用環境、M2Mのエコシステムが焦点」(参考資料1)で報じたので、現地での評判を元に日本の新聞が伝えなかった携帯端末について報告する。

日本経済新聞や日経産業新聞はサムスンのギャラクシやギャラクシタブ、オプティマス3Dなどを報じていたが、スマートフォンはほとんど話題に上らず、取材した欧州企業のエンジニアやマーケティングなど技術のわかる人たちが強い関心を寄せた携帯端末は、モトローラのタブレットであるXoomだけだった。Xoomは1月のCES(Consumer Electronics Show)で2月に発売すると発表されたが、実際に手にとって体験できたのは今回が初めてであり、多くのビジネスマンが感動したと述べている。

この端末はAndroid 3.0(別名Honeycom)という最先端のアンドロイドを使っており、モトローラの担当者は「タブレットに最適化された初めてのアンドロイドだ」と胸を張る。画面サイズが16×9のHD(high definition)コンテンツを見るのに適している、16×10のアスペクト比である。性能的には1GHzのデュアルコアプロセッサを用い、RAMメモリは1Gバイトとゆったりとしている。ブラウザベースでの仕事を行いやすくできているとしている。デモで見せたテレビ電話会議として数人相手の顔を写す複数の画面は小さく、パワーポイントなどの資料のウインドウを大きくすると、資料を見ながらテレビ会議を複数の人間と行うことができる。担当者によるとテレビ電話会議の人数に制限はないという。

画面のユーザーインターフェースはさらに身近になり、まるでボリュームのつまみのように右に回すと画面が大きくなり、左に回すと小さくなるといった、pinch-to-zoomと呼ぶ機能を搭載している。その画面は4〜5本の指による動作を読みとれるタッチスクリーンである。画面に現れるグラフィックスの動作が速く、指でコマンドを要求するとその反応は速い。NvidiaのTegra 2デュアルコアプロセッサを使っているらしい。モトローラが以前、開発していたPowerPCプロセッサではないようだ。

携帯電話では、サムスンやLGに抜かれ、今や存在感が失われつつある通信機器大手のモトローラだが、このタブレットXoomは巻き返しの大きな武器になる可能性を秘めている。実際に操作してみると実にスムースに画像の回転や拡大縮小を扱いやすく、何よりもウェッブベースでテレビ電話会議やコンテンツを見るという操作が、常時接続を前提とした新しいタブレットの使い方を示唆しているかもしれない。日本の企業にもこういった新しい感動を生むような機能を付加し、一発逆転を狙うことは十分可能である。モトローラのこのタブレットが成功するなら、それは日本企業にとって大きな勇気を与えると信じている。モトローラという企業風土は日本の大手メーカーのそれとよく似ているからだ。

参考資料
1. MWC2011〜LTE-Advancedチップや LTEの利用環境、M2Mのエコシステムが焦点 (2011/02/17)

(2011/02/21)

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