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インテルがインフィニオンのワイヤレスソリューション事業を買収する意味

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先週はやはりインテルが、インフィニオンの携帯電話用半導体事業を買収することで合意したというニュースをとり上げよう。買収金額は14億ドル。なぜインテルはインフィニオンの携帯電話用半導体事業を買うのだろうか。8月30日に両社から買収に関するニュースリリースが流された。

まず事実関係を整理しよう。8月31日の日本経済新聞では、インテルが29日に買収することを発表したとあるが、正確には30日である。29日は買収するという発表を行うという旨を述べただけにすぎない。しかも日経新聞が記事を掲載したのは8月31日である。

インフィニオンはWLS(ワイヤレスソリューションズ)事業をインテルにそのまま移転するとニュースリリースには書かれている。WLS事業部門は世界の携帯電話機メーカーに電話用のプラットフォームを提供してきた部門である。片やインテルはネットブック、ノートパソコン、デスクトップ、サーバーに至るまでマイクロプロセッサに注力してきた会社である。これからの時代のキーワードがコネクティビティ(接続性)であることは先端的な欧米企業が叫んでいることである(例えば参考記事1)

インテルは残念ながらコネクティビティ技術を開発してはいるがビジネスは持っていない。だからこそ、インフィニオンからRF技術とベースバンド技術を買うことにした。Wi-MAXを提唱しながらも自らはWi-MAXビジネスをやっていないインテルが今Wi-MAX技術を手に入れることでコネクティビティをさらに推進していける。かつてインテルは携帯電話向けのアプリケーションプロセッサを開発していたが、マーベルセミコンダクターに手放してしまったという過去がある。この時は携帯電話を高機能にするためのアプリケーションプロセッサであったが、残念ながらGSMなどの世界市場ではこの時点はまだアプリケーションプロセッサを欲していなかった。

アプリケーションプロセッサは携帯向けのプロセッサだと考えることはできるが、これだけではコネクティビティは実現できない。今回、アプリケーションプロセッサはさておいて、ベースバンドとRF技術を手に入れなければ、コネクティビティ機能を持たせたパソコンやこれからのタブレットPC、ネットブックなどが作れない。しかもさまざまな規格がころころ変わるLTEやLTE-Advancedなどにも対応できなければならない。

一方、インフィニオンから見ると3G携帯電話用ベースバンドモデムやRF回路は競争が激しく、差別化することは難しくなっていた。このため3G携帯技術を高く買ってくれるのならインフィニオンが手放しても不思議ではない。では、インフィニオンはコネクティビティ技術を全く失うのか。それはありえない。これからの成長産業がコネクティビティであることが明白だからである。インフィニオンが次世代のコネクティビティ技術を持っていると考える方が自然だろう。WiMAXや次のLTE製品を作るには3G携帯とは全く異なる技術、異なるソフトウエアが求められる。このためインフィニオンは古い3G携帯技術を手放した所で、次世代のWiMAX、LTE技術をもっていると考えられるからこそ、インフィニオンのペーター・バウアーCEOが「WLSの売却はインフィニオンの価値を高めるための戦略的な決断」という意味を理解できる。

参考記事)
1.電子機器にコネクティビティを持たせることで市場を広げていく (2010/07/08)

(2010/09/06)

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