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電子機器にコネクティビティを持たせることで市場を広げていく

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Hossein Yassaie氏、英Imagination Technologies社CEO

英国イマジネーションテクノロジーズが快走している。6月下旬に発表された2010年度(2009年5月〜2010年4月)の売り上げは、前年比26%増の8090万ポンド、利益は840万ポンド増の1330万ポンドとなった。5月にはTIの新しいアプリケーションプロセッサOMAP向けにグラフィックスIPコアをライセンス供与したばかり。来日した同社CEOのHossein Yassaie氏に今後の戦略について聞いた。

英Imagination Technologies社CEOのHossein Yassaie氏

英Imagination Technologies社CEOのHossein Yassaie氏


Q1: 2009年の1〜3月に不況の底が来てそれ以降、徐々に回復基調にはありましたが、イマジネーションの業績は良いですね。
A1: 金額ベースでは増収増益を保っていますが、数量的にも急激に増えてきています。イマジネーションのIPコアを使ったチップは2009年4月に8600万個でしたが、2010年4月時点では1億2600万個に達しました。2011年の4月にはおそらく2億個を突破するでしょう。一つのチップに当社のIPコアは平均2個程度使われていますので、IPコアの数にすれば4億個になります。
当社のIPコアは、インテルやシャープ、アップルなどの大手ユーザーが使うようになってきましたので、IPコアの数が増えてきたのです。この結果、IPコアベンダーとして、第1位のアーム、第2位のシノプシスに続き、第3位にランクインされていると思います。ただし、シノプシスのIP部門はビラージロジックに買収されたので、第2位にビラージロジックが来るので、第3位は固いと思います。

Q2: 半年前に英国大使館でお会いした時に、RPU(radio processing unit)という新しいIPコアの構想を述べられましたが、その後の発展について教えてください。
A2: 今はRPUも含めて、コネクテッドワールドという概念を打ち出しています。携帯機器にはインターネットなどのネットワークとの接続性(コネクティビティ)が重要になります。組み込みシステムでは、CPUとGPU、そしてネットとつなげるRPUの三つは基本プロセッサとなります。IPベンダーとして、この3つのエンジンを持っていることが大きな強みとなります。
RPUが重要と述べたのは、半導体を使う電子機器がネットワークとつながるようになってきたからです。デジタルテレビでは、新しいデジタル変復調方式が世界各国で違う状況が続いています。DVB-TやDMB-T、ISDB-T、ATSCなどが乱立しています。デジタルラジオでも10種類程度の規格があります。パソコンでは、Wi-FiやEthernet、Bluetoothなどのネットワーク接続規格が含まれています。そして携帯電話。これも従来の3GからHSPA+やLTE、さらにはLTE-Advancedなどの新しい規格が次々と出てきます。
こういったさまざまな規格に対応するためにはプログラマブルなRPUが適しているという訳です。

Q3: 具体的にどのようなIPコアを使いますか。
A3:  こういったさまざまなモデムの規格に対応するRPUとして、当社はMETAプロセッサコアを使って実現します。METAはシングルコアながらマルチスレッドという並列処理を行うIPコアです。
また、METAはDSPも内蔵したCPUなので、もちろんCPUコントローラとしても使えます。METAを使うことで、プロセッサ+コネクティビティ+ソフトウエアという構成が可能になります。
シングルコアなのでシリコン面積は小さいまま並列処理ができますから、ストリーミングオーディオやビデオ、さらには接続性のあるグラフィックスなどにも使えます。当社が製造販売しているデジタルラジオの製品ブランドPUREもコネクティビティが必要であるためMETAプロセッサコアを使って開発してきました。
このデジタルラジオ機能をインターネットに載せることでインターネットラジオを聴くことができるようになります。例えば、デジタルラジオがiPhoneに載るようになるでしょう。インターネットラジオとなれば世界中のインターネット放送局のコンテンツを聞くことができます。近い将来、携帯電話でもiPhoneでもそれが出来るようになるでしょう。

RPUのブロック図

RPUのブロック図


Q4: グラフィックスIPのPOWERVR SGXなどの製品の状況はいかがですか。
A4: インテルのAtomのチップセットやTIのOMAPアプリケーションプロセッサに使われてから、好調です。特に、最近の組み込みシステムの状況を見ていますと、電子製品はもはやプロセッサCPUでは差別化できません。電子製品を差別化するのは、グラフィックスプロセッサGPUです。GPUはユーザーインターフェースを豊かにしたり、これまでよりもずっとリアルに近い人や馬を描いたりすることができます。
 これからのグラフィックスは大きく変わります。特にこれまでコスト重視だったのが性能重視に変わります。4年以内に今の100倍以上の性能になるでしょう。ただし消費電力は維持したまま増加させません。バッテリパワーで動くことが条件なのです。ある企業の首脳陣は、CPUではなく今はGPUが差別化する要因となると言い切っています。
 当社のGPUには顧客が多く、米テキサスインスツルメンツ社の次世代アプリケーションプロセッサOMAPに組み込むことを数週間前に発表しました。イマジネーションの特長は、常にローパワーで性能を上げていくことです。バンド幅が狭くてもかまいません。パワーエフィシャントなアーキテクチャで、しかも拡張性のあるアーキテクチャですから、ゲームからパソコン、さらにラップトップへと搭載していくこともできます。
最近発表したグラフィックスコア、SGX-543/544は拡張性が高く、今は最大16コア64プロセッシングエレメントですが、次世代は256以上のプロセッシングユニットを目指します。グラフィックスコアの最大の用途はゲーム。ゲームの性能は次の5年間で100倍に上がるでしょう。これは2.5倍/年のペースです。
グラフィックスコアが1億個を突破しましたが、こんなに数が出たのは、エコシステムが充実しているからです。OpenGL2は18000社ものサードパーティ開発者がいます。言い換えると、コンテンツを作る人たちが多いわけです。これがキーです。アップルのApp StoreはOpenGL2で作っています。

Q5: これからのイマジネーションについて教えてください。
A5: コネクティビティをさらに広く展開していきます。METAが持つコネクティビティをインターネットから、ヘルスケア、エネルギー、セキュリティ、スマートグリッドなどにも適用していきます。例えば、ヘルスケアのベンチャーである英Toumaz社の株式の10%、エネルギー関係のベンチャーである米Green Plug社の株式15%をイマジネーションが取得しています。
 これまで、イマジネーションはシリコンのIPからソフトウエアのIPへと上に向かって広げていますが、これからは上から横へと展開していきます。特に、インターネットテクノロジーを持つ部門を強化していきますので、ソフトIPに大きな投資を行います。

(2010/07/08)

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