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決算発表、海外勢はみな好調、不調な日本勢で唯一好調なのはエルピーダのみ

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先週は、各社の4〜6月期の決算発表が相次いだ。海外勢と比べると日本の半導体メーカーの不調さが浮き出ている。ルネサスエレクトロニクスがまだ赤字、東芝や富士通はやっと黒字という部品事業の状況に対して、先週発表した英ARMは営業利益率42.7%、台湾のTSMCは同38.6%、韓国のサムスン電子の半導体部門が同30.8%という健全な財務状態だった。

米国勢はその前の週に発表しており、米国のテキサス・インスツルメンツは7月19日発表だが経常利益率31.7%と好調に推移している。7月30日に発表したドイツのインフィニオンテクノロジーズは、前四半期比で17%増の12億900万ユーロであり、営業利益は1億4000万ユーロであり利益率は11.6%となった。

海外勢のうち、記者会見を開いたTSMCは、1049億6000万台湾元(3149億米ドル)の売り上げを達成、1000億台湾元を超えた四半期はこれが初めてとなった。対前四半期比では13.9%増と成長している。売り上げが伸びたのは40nmプロセスからの収入で、65nmプロセスは4連続四半期においてほぼフラットで推移している。微細化の開発をやめたIDMやファブレスからの注文を一手に受けることで成長したといえる。

TSMCの財務資料によれば、2010年第2四半期の売り上げ1049億6000万元、営業利益率38.6%に対して、1年前の2009年第2四半期の売り上げは742億1000万元しかなかったが営業利益率は37%と、回復途上でも利益をきちんと確保している。コストをどのように抑えているのか。TSMCジャパンの小野寺誠社長によれば、まず日本の半導体企業と比べてオーバーヘッドが少ない、限界利益を厳しく見ている、の2点を挙げた。ひどかったのは2009年の第1四半期で、第2四半期はむしろ戻った数字になっているという。

ちなみに2009年第1四半期におけるTMSCの売り上げは395億元で、利益は12億1000万元と営業利益率3.0%となったが、黒字は確保した。この期間、TSMCは従業員をカットしなかったが、無給休暇を3ヵ月実施したという。働く者としては、給料は出ないものの、雇用は確保されているというメリットはある。この制度は、企業にとっても需要が戻るとすぐに採用でき、しかも業務に慣れた人たちを使えるという利点がある。

日本のメーカーでは、エルピーダの好調さはすでに伝えたとおりだが、ルネサスエレクトロニクスは売り上げが2920億円、営業損益は3億円の赤字という結果になった。東芝は電子デバイス部門が売り上げ3319億7100万円、利益270億3400万円という結果だった。東芝のNANDフラッシュは利益が多く好調なはずなのに、利益率が10%も行かないとは、フラッシュ以外の部門の業績がかなり悪いことが想像される。富士通では、電子部品とLSIを合わせたデバイス部門の売り上げが1585億円、営業利益が60億円となった。日本の半導体メーカーは世界のエレクトロニクスが好調なのに、やっと黒字という状態が多い。

最後に、ルネサスの100日プロジェクトの成果が発表された。4月に合併された直後の記者会見では、100日プロジェクトで成長戦略を発表するということであったため大いに期待していたが、7月29日に発表されたプレスリリースでは、成長戦略の具体的なシナリオまでは踏み込んでいない。成長戦略として示されたのは、事業ポートフォリオの最適化、社会インフラを支える事業の強化、海外事業の強化、と3つだが、具体的にどの製品を強化するのかはまだ発表はなく、社会インフラの強化には親会社の顔がちらほら見える。海外事業で言及しているのは中国のみ。むしろ、リストラクチャリング(事業再構築)のためのコストカットの具体案が発表された。28nm以降の先端プロセス開発をやめファウンドリに委託する、5000名の人員カット、固定資産の減損処理などが示された。期待が大きかっただけに落胆の声を上げるメディアも多い。

(2010/08/02)

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