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エルピーダ、過去最高の売り上げを達成、営業利益率は25%に

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エルピーダメモリが快調だ。2010年度第1四半期(4〜6月)の決算は、過去最高の売上高である1763億円に達した。1年前が半分以下の726億円だったから、健全な財務レベルが3期続くようになった。

エルピーダの業績 2009年度第3四半期(10〜12月)から回復した

図 エルピーダの業績 2009年度第3四半期(10〜12月)から回復した


今季の売り上げは対前期(2010年1〜3月)比では28.8%と伸ばし、営業利益も6.7%増と伸ばした。円高の影響で為替差損が40億円程度あったものの、ドルとリンクしている台湾元のおかげで、台湾での生産が為替の影響を少なくしてくれた。日本だけで生産すると為替の影響をまともに受けてしまう。

今回の好調さは、DRAM単価が2009年11月〜2010年2月に3ドル〜2.5ドルの間にいて、2月から8月に2.45ドルと15%程度下がってきたが、こういった価格の緩やかな下落にも対応できたこと、しかもDRAMのASP(平均単価)が9%上昇していること、などDRAM市場が堅調な動きを示していることが大きい。米調査会社のアイサプライの調べでは、DRAMの充足率は2010年4〜6月は1.01とわずかに出荷量が需要量を上回ったが、2010年7〜9月および10〜12月にはそれぞれ0.96、0.95と供給不足になると予想している。同社代表取締役社長兼CEOの坂本幸雄氏も同様の見方をしている。

エルピーダ側の低コスト化の活動も奏功した。広島の工場と台湾のレックスチップ社の工場におけるコスト差は5%にまで縮まった、と坂本社長は語る。これまでは台湾のレックスチップがDRAMを安く作るためにプロセス工程の短縮、マスク枚数の削減などプロセス改善努力を行い、低コストで作るラインを構築してきた。このためレックスチップと広島工場とのコスト差はずっと大きかったという。その間、広島工場はレックスチップの低コスト技術を採り入れることは全くしなかった。しかし、新たに赴任した広島工場の責任者がレックスチップの低コスト技術を採り入れるように指導を行い、広島工場がレックスチップ社を見習ったことでコスト差が5%まで縮まったのだと坂本社長は言う。この5%の差こそが日本と台湾との差になる。

エルピーダは、台湾とのコラボレーションをさらに進めていく計画だ。「中国よりも台湾との関係を密にしたい」(坂本社長)。ロジックとDRAMとの積層技術についてウェーハファウンドリのUMC、ICパッケージングのパワーテックテクノロジー(Powertech Technology)社と共同でTSV(スルーシリコンビア)技術を開発していくことを決めたが、その理由を以下のように語る。「UMCはTSMCよりも協力的だったし、パワーテックは日本のアセンブリメーカーよりも競争力がある。2011年の第2四半期にはTSV製品を出したい」。

フラッシュメモリーでも同社は米スパンションと共同でMirrorBit技術のNANDフラッシュを開発する旨を発表したが、今後は「NORフラッシュの利益率が圧倒的に高いので、今後NORフラッシュも開発したい」と坂本社長は意気込む。

広島工場では、今後モバイル機器向けのDRAM(3xnm/40nm/50nm)に注力するとしている。これはモバイル市場がスマートフォンやタブレットPCが成長のエンジンになるため「この市場は絶対に取りたい」(坂本社長)。今でも生産能力の2倍もの需要があると見ている。特に2011年の後半になると全DRAMの3割をモバイル向けが占めるようになると見ている。ただし、他社も50nm以下のモバイルDRAMを生産するのなら供給過剰の恐れも出てくる、と警戒感を緩めない。パソコン用DRAMはパソコンの買い替え需要が2011年に伸びてくると見ており、これらは台湾で生産する。

この市場に向けて、MCP(マルチチップパッケージ)を進めていく。現在のモバイル用RAMはPoP(パッケージオンパッケージ)で2G/4Gビット製品を生産しているが、チップを積層するスタック型のMCPに力を入れていく。

現在、TSVはコストが高いことが最大の問題であるが、TSVの低コスト化に対しては、2013年〜2014年ごろには現在のワイヤボンディング法並みに安くできると考えている。コストダウンのためにはTSVを加工するためのエッチング装置などを自社で開発する方向だ。スループットを上げ、深い溝を安定に加工できる装置を開発することで、コスト的に見合うようにできると信じている。もちろん、自社で装置を製造するのではなく装置メーカーに依頼する。

今後の微細化技術には、EUVリソグラフィを装置メーカーと契約し、2012年には納入されるという。ただし、同社内のエンジニアによってEUVかダブルパターニングかは意見がまだ分かれている。

(2010/07/30)

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