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やっと決着するか、三洋半導体の買収先、オンセミは製品を強化できる買い物

先週の土曜日、三洋電機が米オン・セミコンダクターに売却する方向で話が進んでいることを、日本経済新聞が報じた。アナログ関係の半導体が強い三洋半導体は、パナソニックグループに統合されると製品の重複が見られるため、パナソニックは三洋半導体の売却先を探していた。一方、政府の期待が膨らむニュースもある。

オン・セミコンダクターはモトローラの半導体部門からアナログとディスクリート部門を切り離すことで生まれた。デジタル部門はフリースケール・セミコンダクターとして分離された。オンセミはパワー半導体が強く、パワーMOSFETやパワーマネジメントICの製品ポートフォリオを持つ。これまで自社製品を強く、しかも得意なパワーマネジメント分野を広げるため、買収を繰り返してきた。昨年こそ、世界不況の影響を受け、PulseCore Semiconductorのみに終わったが、今年に入ってすでにCalifornia Micro DevicesとSound Design Technologiesを買収した。2008年にはCatalyst SemiconductorとAMI Semiconductorを買収している。2006年にはLSI Logicからオレゴンのファブを購入している。

1999年のモトローラからのスピンオフによる創業の後には買収はさほど活発ではなかったが、当時から比較的強かったパワーMOSFETの周辺に使うICビジネスを中心に2005年くらいから企業買収を活発にしてきた。例えば2007年にはアナログデバイセズ社から電圧レギュレータ&サーマルマネージメントグループを買い取り、多相コントローラやドライバなどの新製品を生みだしている。

三洋もパワーマネジメントICやモータードライバIC、AV機器用ICなどを手掛けてきたが、独自の分野を切り開いてきた製品も多い。例えばパワーマネジメントICではチャージポンプICや同期整流コントローラなどを持ち、三洋らしさを特長づけるものがある。オンセミから見ると自社のパワーマネジメントIC製品を拡充できる上に、元々強いパワーMOSFETとセットで売り込むことができる。

ちなみにオンセミの2009年の業績は売上が17億6900万ドル、GAAP基準の利益は6100万ドルの黒字であるが、特別支出1億490万ドルを含むため、これを除くと1億6590万ドルの黒字となる。三洋買収は時期的にも買いやすいタイミングである。

もう一つ、期待したい出来事は、政府がICTの活用を促すため各省庁にまたがる規制の見直しに乗り出すというニュースだ。日経新聞7月3日付けによると、総務省は関係する省庁の調整に近く着手し、2011年の通常国会に、規制の見直しを盛り込んだ「ICT利活用促進一括法案」(仮称)を提出する方針だという。

これまでは例えば遠隔医療は認められておらず、厚生労働省は医者との対面診療を原則としているとか、文部科学省は情報端末「電子教科書」を教科書とは認めていない。データセンターを誘致する場合には建築基準法が妨げになっているとしている。

遠隔医療に関して、2年前にセミコンポータルの「特集:英国株式会社(6)医療用半導体信号処理の大学発ベンチャー」で紹介したような、デジタルプラスター(バンドエイド[商品名]のように腕に張って血圧、心拍、体温などを24時間モニターする使い捨てのIC)は日本では商品化できないと言われている。厚労省の規制があるためだ。しかし、新しいICTを利用する医療や教育などの分野では半導体にとって全く新しい市場になる。それを阻むのが各省庁の規制であることから、総務省がこの新しい法案を提出してくれることは半導体産業にとって大変ありがたい。

ちなみに、医療関係では、こういったBAN(ボディアエリアネットワーク)を始め、機器の小型化が半導体ビジネスにとっては大きな市場になりうる。大病院に1台しかないようなMRIやCTスキャナーを半導体によって小型化・低コスト化すれば、町医者が1台持てるようになる。また町医者に1台しかない装置は各家庭で1台持てるようになる。現実に、血圧計や体重計はMEMSセンサーとマイコンのおかげで家庭に入るようになった。

(2010/07/05)

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