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メモリーメーカーの積極投資が再び活発に、ただしカルテル問題も後を引く

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メモリーメーカーの積極的な投資が続いている。韓国のサムスン電子は、2010年の設備投資額をこれまで最大の18兆ウォン(1兆4500 億円)にする計画だ、と5月18日付けの日経産業新聞は伝えている。サムスンは半導体メモリー、液晶、携帯電話が大きな事業の柱であるが、メモリーがその半分の7750億円という。東芝+エルピーダの投資額はそこまでいかない。

微細化をけん引するデバイスがメモリーとロジックであるが、ロジックは大量生産しないものが圧倒的に多いためファウンドリが微細化を担う。すでに2010年2月24日付けの「2010年の設備投資額トップ10社のうち9社がファウンドリとメモリーメーカー」で伝えているように、巨額の設備投資を必要とするメーカーはメモリーメーカーとファウンドリという2大半導体分野に絞られてきた。こういったトレンドに沿って、先週のニュースはサムスンの投資が話題に上ってきた。

ただし、サムスンはフラッシュメモリーとDRAMの二つの製品に投資するため、サムスンの投資額と、東芝(フラッシュ)+エルピーダ(DRAM)の合計額がリファレンスになる。5月18日付けの日経新聞は、東芝が3年間で4000〜5000億円を半導体に投資する予定で、エルピーダは1150億円投資するとしている。合計しても2010年度はせいぜい2500億円程度にしかならない。サムスンの1/3程度である。これでは、メモリー事業で再び差を広げられるだろう。

DRAMに関しては、10年ほど前にDRAMの価格カルテルを結んでいたとして、欧州連合(EU)が総額3億3100万ユーロ(370億円)の制裁金を命じたことが報じられた。日本の5社を含む世界のDRAMメーカー10社が価格カルテルを結んでいたということだが、このうちマイクロンだけは情報提供で協力したとして制裁金を免れた。残り9社にはドイツのインフィニオン、韓国のサムスン、ハイニックス、台湾の南亜科技も含まれている。

このうち、エルピーダと日立、NECとは3社まとめて849万ユーロ(9.5億円)の支払いが求められているが、これには課徴金を支払う旨をエルピーダがプレスリリースで表明している。ところが、今度は米国でのDRAMカルテル行為(1999年4月から2002年6月まで)への和解金に関して3社でもめている。1999年12月に設立されたエルピーダは、この和解金を必要以上に支払ったとして、日立とNECを訴え賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしている、と21日の日経新聞は報じた。NECと日立は裁判で争う方針だと伝えている。

明るいニュースとして、パワー半導体の市場規模が2015年に1兆3964億円になるという予想が富士経済から発表されたと5月20日付け日経産業新聞は伝えている。翌日には富士通セミコンダクターがGaNはパワー半導体のサンプルを夏までに出荷し、三菱電機はSiCパワー半導体を2010年度中にサンプル出荷するというニュースも伝えられた。東芝もSiC MOSFETを開発中だとしている。またパワー半導体の専門メーカーであるサンケン電気は電気自動車・ハイブリッド車向けの開発・販売の専門部隊を強化すると24日の日経新聞は報じている。ただし、車載用SiCパワーMOSFETを開発しているメーカーに取材すると、商品化にはまだ2〜3年かかると見ている。SiCと酸化膜間のMOS界面の欠陥がトランジスタに悪影響を及ぼさないかどうかといった信頼性試験や、欠陥低減技術の開発、欠陥評価など、商品化へ向けた作業は山積している。

パワー半導体はマスメディアが盛んに持ち上げているが、冷静になってパワー半導体の成長率を分析してみる必要があろう。富士経済の2010年におけるパワー半導体市場は1兆958億円、2009年は前年比24%減の1兆311億円だった。すなわち2008年は1兆3567億円もあった。2015年の1兆3900億円は2008年規模に戻るという程度の規模にすぎない。

さらに回復基調にある2010年の1兆958億円から2015年の1兆3964億円は、年率平均に換算すると、6.25%になる。これは半導体デバイスの平均的な成長率にすぎない。パワー半導体全体を見るのではなく、その中の個別に関して、例えばSiCやGaNが伸びそうであり、逆にいえばそれ以外のパワー半導体の伸びはそれほどでもないことになる。ただし、SiCで唯一製品になっているショットキーバリヤダイオードの伸びの予測だけは明らかになっており、2010年の23億円が2010年に110億円の4.78倍になると予想している。これは年率平均成長率に換算すると36.8%になる。SiCの市場規模はまだ小さいものの、SiCは成長が期待できる製品といえる。

(2010/05/24)

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