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メモリーが好調、昨年投資できなかった生産能力を上回る需要で値上がり続く

先週、ビッグニュースはなかったものの、昨今の景気が回復してきた様子をしっかりと伝えている。まず、メモリーがDRAMにせよ、NANDフラッシュにせよ、好調を続けている。これを裏打ちするかのように、ディスコや大日本スクリーン、TDKなどの1〜3月期が快調に利益を伸ばしている。一方で、iPadの分解ニュースをアイサプライが発表した。富士通騒動にも触れる。

国内唯一のDRAMメーカーであるエルピーダメモリは昨年、破産寸前の憂き目に会い投資どころではなかったことから、メモリーの需給バランスが崩れ供給不足に陥り値上がりが続いている。2月半ばから急騰を続けており単価3ドルを超えた。今年はこれまで抑えに抑えてきた企業のIT投資(パソコンの買い替え)が活発化するとみられており、それをパソコンOSがVistaより軽く使い勝手の良いWindows 7に代わったことが後押ししている。このためDRAM不足は一向に解消されない。昨年末から始まったメモリーの設備投資は今年の生産能力アップにはまだ間に合わない。

フラッシュも同様、生産能力を増強できずにいたことで需要が強く、供給が間に合わない状況が続いており、価格の値上がりは止まらない。東芝はサムスンよりも遅れて設備投資を発表したが、少なくとも今年いっぱいは需要に追い付かないだろう。

ディスコはこの1〜3月期売り上げ210億円程度、営業利益は25〜30億円になる見通しだと4月6日の日本経済新聞が伝えている。半導体をけん引するメモリーが好調であること、さらにLED基板となるSiCやサファイヤをカットする技術を持つディスコにとってはシリコンであろうと、LEDであろうと、半導体ウェーハであれば何でもカットする技術を持つことは極めて心強い。これを裏付けるように、同社は期間従業員を400名増やす方向で採用を増やしている。

前工程の大日本スクリーン製造は2010年3月期下期(10月〜3月)の売り上げは940億円程度、営業利益は10億円という見通しだという。日本市場は不調であったが、台湾のファウンドリ企業が積極的に設備投資を進めたため、大日本はその恩恵を受けた。

TDKは、1〜3月期の売上高2000〜2100億円、営業利益50〜60億円になりそうだ、と4月9日の日経新聞が伝えている。営業利益は構造改革費用(70億円)を含めた数字であるため、この費用がなければ営業利益は120〜130億円になり、前期(2009年10〜12月)を上回った公算が強いとしている。特に、ハードディスクの磁気ヘッドの出荷が計画以上だったという。

先週、米市場調査会社のアイサプライは、アップルが4月3日に発売したiPadを分解し、中に使われているデバイスを特定したというニュースリリースを発表した。タッチパネルの部品は台湾製だった。iPhoneでは90%が日本製だったことから、日本製が台湾製に食われてしまっていることを報じている。

日本製の電子部品や半導体部品の付加価値をどこに付けるかを真剣に考える時期に来ているかもしれない。コモディティとなりうる製品であれば台湾、韓国が強い。半導体ならメモリーや液晶が良い例だ。タッチパネルは単なるパネル部品ならコモディティだろうが、ここに5本指、10本指を同時に検出できるとなれば新機能がつくことになる。現実に米半導体メーカーのサイプレスは最大10本指のタッチパネルコントローラ用マイコンpSoCを販売している。サイプレスのpSoCはiPhoneにも使われたと言われている。

また、あまり心地よいニュースではないが、富士通のごたごたが相変わらず続いているようだ。元富士通社長の野副州旦氏は7日に都内で記者会見し、富士通に対して、同社の役員2人を相手取り、約50億円の損害賠償請求を起こすよう求めていることを明らかにした、と日経新聞が報じている。これに対して、「取締役としての地位保全を求める仮処分申し立ての取り下げ」をしていたことを富士通は9日に公表した。この富士通の「お知らせ」は、前日、野副氏が損害賠償請求を求めることとは矛盾しない。「お知らせ」は取締役への復帰を要求した仮処分を取り下げることであり、野副氏は取締役に固執していないことを意味している。すなわち、取締役復帰は求めないが、2役員を相手取り50億円の損害賠償を求めることを宣言したわけである。

(2010/04/12)

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