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マイクロンの活発な買収、ポートフォリオ拡大に要注意

先週のニュースの中で最も注意を喚起させられたのは、マイクロンのアグレッシブな相次ぐ発表だろう。2月9日にはNORフラッシュやPCRAMに力を入れているニューモニクスを買収することを発表した。その1週間ほど前はインテルと25nmプロセスを共同開発したと発表しており、1月にはオーストラリアのエネルギー会社と太陽電池の合弁会社を設立することを発表した。

ニューモニクスのチップ

ニューモニクスのチップ


マイクロンのニューモニクスに対する買収額は12億7000万ドル。株式交換方式で資金を調達する。ニューモニクスは元々インテルとSTマイクロエレクトロニクスのNORフラッシュ部門が一緒になった合弁会社だ。マイクロンの株式はニューモニクスの株主とインテル、STマイクロ、ファンドのフランシスコパートナーズに発行される。

最近ではフラッシュの次のメモリーとしてPC(相変化phase change)RAMの製品化に力を入れていた。

また、2月1日には、インテルと25nmプロセスを共同開発し、167平方ミリメートルの8GB(64Gビット)のNANDチップをサンプル出荷し始めた、と発表している。このチップを両社の共同出資製造工場であるIMフラッシュテクノロジーズが生産する。2ビット/セル技術を使い、TSOPパッケージに納めている。これによりコンピュータ用のSSD(ソリッドステートディスク)の普及を促進する。集積度が従来の2倍に上がったため、256GBのSSDなら従来は64チップが必要だったが、これを使えば32個で済む。

1月14日にはオーストラリアのエネルギー企業オリジンエナジーと共同で太陽電池会社を設立すると発表している。太陽電池は半導体メーカーからみると製造がやさしいフォトダイオードであるからこそ、半導体メーカーとして将来への布石を着実に打っているといえる。

マイクロンの積極的な買収工作に対して、NANDフラッシュのメジャーである東芝は2010年度から3年間に渡り三重県四日市市に8000億円を投じて工場を建設すると、2月10日の日本経済新聞は報じた。早ければ10年夏ごろに着工し11年春の稼働を目指すという。昨今の景気後退により設備投資を抑えてきていたが、ようやく立ち上がることになった。しかし、需給バランスは11年の後半くらいから崩れてくるようになるかもしれない。

もう一つ気になったニュースは本日付けの日経産業新聞に掲載された、サムスン電子が半導体製造装置大手の米アプライドマテリアルズの役員らを、半導体製造技術をハイニックスに流出させたという理由で起訴した、というニュースだ。韓国では、サムスンとハイニックスのライバル争いは未だに激しいようだ。かつての日本でも、東芝、NEC、日立、富士通、三菱などの半導体メーカー同士のライバル意識は極めて強かったが、韓国はサムスン、ハイニックスが独立して競争しているため、その意識は極めて高い。

ただし、韓国企業同士のライバル意識の高さは、米国・欧州企業からは想像しにくいくらい高い。東南アジアでは、よく「韓国や日本の企業」という言い方をし、「台湾や東南アジアの企業」という言い方をする。「台湾や韓国の企業」という分け方は東南アジアではまず聞かれない。これは韓国と日本のメンタリティが良く似ていることを表現しているとも受け取れる。日本でもあるが、「近親憎悪」というメンタリティで、同じ国内だからこそ余計、ライバル意識が強いことを表わしている。

サムスンの工場に入り込んで半導体製造装置の検収や修正を行うことはよくあるため、ライバルメーカーが製造装置メーカーに接触すると技術流出を疑われる危険性はある。このことを理解したうえで、サムスンとハイニックスに装置や材料を売らなければ、次は日本の装置・材料メーカーが標的にされるかもしれない。

(2010/02/15)
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