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パイオニアの資本増強に三菱電機、三菱化学が名乗り、カーナビ・EL照明へ

先週のニュースではパイオニアの資本増強に三菱電機がカーナビの協力を強化するため、三菱化学が有機EL照明を開発促進するため、それぞれが参加することが報じられた。一方景気の明るさとして、米国の失業率が10%を割り始めた。アドバンテストが検査装置にその前後の機能も付けることで床面積の削減を狙った装置を開発しているというニュースもあった。

米沢のルミオテック社の有機EL試作品

米沢のルミオテック社の有機EL試作品


三菱電機は20〜30億円をパイオニアに出資するのを機にカーナビの共同開発や販路拡大につなげたいとしている。パイオニアはプラズマ事業で大きな損失を出し今は再建に向け資本を増強している。シャープはすでに14.3%を出資して2009年の9月時点では筆頭株主だそうだが、ホンダは25億円を出資し、三菱同様、カーナビ事業を強化する。三菱化学は第3者割当増資に応じる形で10〜15億円(1〜2%)を引き受ける。パイオニアの自己資本比率が16.5%にまで下がったことへの対応策である。

ところが、日立製作所が社長交替のニュースのなかで自己資本比率が13%台しかないことが報道されており、日立はパイオニアよりもひどい財務状況であることが露呈した。新聞の見出しは「日立、危機対応にメド」とあるが、日立の再建への道のりはより険しいように思える。今期の赤字により金融危機前の2兆5000億円もの借金(有利子負債)はさらに増えているだろう。

先日、NECエレクトロニクスが2010年3月期に590億円の赤字を見込んでいることが発表されたが、ルネサステクノロジも830億円の赤字になりそうだとしている。黒字にしてから合併すると意気込んでいたこの2社だが、思い通りにはいかないようだ。赤字同士の企業が合併する形になるが、まずはサバイバルプランを出して赤字を解消し、さらに成長戦略へとつなげていければいいのだが。

東芝は後工程を四日市に集約し、福岡の東芝LSIパッケージソリューションを閉鎖する方針を固めた。東芝はパッケージ技術をフラッシュを生産する四日市工場に集中させることで、スタックでチップを重ねていくフラッシュならではのパッケージ組み立て技術に集中する。一方でパッケージ組み立て事業の80%を海外生産する方針も発表しており、台湾のASEなどを使うのかもしれない。

一方、米国の失業率が10%を割った。従来から、景気後退から景気回復する道のりとして、まず企業の業績が回復し、その後で失業率が改善するというストーリーであったが、今回もそのストーリーをたどっているようだ。景気の本格的な回復はもはや時間の問題となったといえるのではないだろうか。

海外では、2月3日と5日の「IT攻防 変わる勢力図」というコラムでまとめているように、半導体の新しい応用に向けて激しい競争が繰り広げられていることを伝えている。ヘルスケア分野が一つ、もう一つはネット接続コンピュータ・組み込み機器のバトルである。ヘルスケアは、2年前の「英国特集」でお伝えした英トーマツ社のデジタルプラスターと同じ概念だ。心拍や体温、血圧などを24時間モニターし、そのデータを携帯電話を通してインターネットに載せ医者が常にモニターできるというもの。無線で体のデータを近くの携帯へ送るため消費電力が少なくて済み、健康管理プラスターを使い捨て出来る。

ネット接続端末はこれまでのノートパソコンから、ネットブック、スマートフォン、電子書籍などさまざまなハードウエアが出てきた。これらを動かすソフトウエアは半導体チップ(マイコンやアプリケーションプロセッサ、フラッシュメモリーなど)に埋め込む。ソフトを書き換えればいくらでもコンテンツを変えられる。ソフトウエア企業はもはやハードなしでは生きられない。オラクルがサンマイクロシステムズを買収する一方で、デルはパソコンだけではなく携帯電話にも進出する。アップルはiPadを開発し、アマゾンというネットの書店までがハードウエアを開発する時代になった。こういったコンピュータシステムを使った非コンピュータ(これを組み込み機器、あるいは組み込みシステムと呼ぶ)がエレクトロニクスの主役になってきたという時代認識こそ、半導体ビジネスをさらに発展させるための出発点となる。

(2010/02/08)
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