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話題はキンドルの上陸、トレンドはグローバルなコラボレーション

先週のニュースの中でやはり採り上げるべきものは、米インターネット書籍大手アマゾンの電子ブック「キンドル」の日本上陸だろう。この新しい携帯端末が果たしてヒットするかどうか、気になるところである。他には、やはりグローバルなコラボのニュースが目立つ。

キンドルは、電子ペーパーを利用した9.7インチ・ディスプレイに本のコンテンツを流す携帯電子機器。アマゾンが持つ書籍のうち、28万冊以上の中から3G携帯ネットワークからダウンロードして読むことができる。不揮発性ディスプレイの電子ペーパーなので電源を切っても文字は消えない。価格は279ドル。アマゾンの米国版の通販サイトから予約し米国から配送されるという。


アマゾンの電子ブック、キンドル
アマゾンの電子ブック、キンドル


米国では第1世代のキンドルはヒットしていると言われており、台湾でもキンドルはヒットしていると言われている。日本ではどうか。ある人は「もう本を読む人は少なくなっているから無理だろう」と言い、別の人は「電車でも本を読む人は相変わらずいるから期待できるのではないか」と言う。私は、楽しさをどう表現できるか、によるだろうと思う。仮説だが、「楽しさこそ、キラーアプリを生み出す原動力になる」と思っている。キンドルに楽しさをどう付けるか、ハードで付けるかソフトで付けるか、コンテンツで付けるか、何でも良いのだが、楽しさがあれば僕も私もほしい、ということにつながるからだ。

グローバルなコラボの例として、NECエレクトロニクスとインドのKPIT、ベルギーのIMECと台湾のTSMC、スペインのEndesaとイタリアのEnel、伊仏合弁のSTマイクロエレクトロニクス、さらに英ARMと米GlobalFoundriesをとり上がる。

NECエレクトロニクスはインドのソフトウエア設計会社のKPITと車載用マイコンのソフト開発で提携し、市場投入を始めたというニュースが流れた。まず車載用ソフトウエアの標準化団体であるAUTOSARが定めた「AUTOSAR R3.0」に基づく基本ソフトウエアパッケージを共同で開発した。この共同開発により、NECエレの32ビットマイコンV850向けにAUTOSAR R3.0に準拠したマイコンのドライバソフトウエアMCALを市場へ投入するという。KPITはV850マイコン向けの基本ソフトウエアも開発する。

AUTOSARは欧州の自動車メーカー、ティア1電装メーカーなどが設立し、自動車向けソフトウエアを共通化しようという狙いがある。自動車特有の制限事項や条件などもAUTOSARに織り込まれているが、いちいちそれらを参照するのではなく、NECエレとKPITのソフトウエアを使えば、AUTOSAR準拠のシステム開発が楽になる。

6日にはベルギーの研究開発機関のIMECとTSMCがMEMSで協力するというニュースが日刊工業新聞から流れたが、このニュースは正しくない。実はMEMSで両社が協力することは以前から伝えられていた。今回は、MEMSだけではなく光ディテクタや化学センサー、バイオインターフェース、温度センサー、マイクロミラーなど、More than Mooreと呼ばれる多機能回路をCMOS ICと一緒に一つのパッケージに集積する技術で協力することが決まった。SoCというよりもSiPにより1パッケージ化する技術がその提携のキモである。SiGeのMEMSやTSV(スルーシリコンビア)、WLP(ウェーハレベルパッケージ)、さらにはテストや信頼性試験なども対象となる。

スペインの電力会社Endesa社が持っている電力網に加わっている1300万世帯の家庭にある電力計を、遠隔操作可能な電子メーターに置き換える計画が進んでいるが、その電子メーターを設計製造するイタリアのEnel社にSTマイクロエレクトロニクスがチップセットを納入することが決まった。イタリアではすでに電子メーターが普及しているが、これは電力泥棒ともいうべき電線を無断で引き回す人間がいることに対処するためというお国事情がある。STマイクロのチップは電力線通信を行うSoCのST758xに加え、32ビットマイコンSTM32、パワーマネジメントIC、MOSFET、EEPROMなどである。

イタリアに設置している電子メーターは通信モジュール(M2M:machine-to-machine RFとベースバンド、モデムを内蔵したデータ通信モジュール)を使って、電力を監視しているが、今回のEnel社のシステムとSTマイクロのチップは電子メーターにさまざまな機能を付加するスマートメーターへとつながる可能性がある。電力線通信を使いながら、機能をソフトウエアで書き換えられるようなフレキシビリティを持っているためだ。

ARMとGlobalFoundriesは長期的なパートナーシップを結び、28nmのHigh-kメタルゲート技術を使うSoCを設計生産する体制を築く。ARMのハードコアIPとファブリックIP、プロセッサIP一式で設計するSoCをGlobalFoundriesの製造ラインで生産できるようになる。まずはARMの低消費電力・高性能のマルチコアCortex-A9プロセッサを集積するSoCをGlobalFoundriesの28nmゲートファースト・プロセスで開発する。

こういったグローバルな企業同士のコラボは先週から出てきたわけではない。もはや1社だけで何もかもやれる時代は終わったと認識しているからこそ、グローバルなコラボが活発になっていると見るべきだろう。

(2009/10/13)
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