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液晶テレビに勝ち目はあるのか、シャープのLEDテレビへの遅れは大丈夫か

9月最後の週は、東芝の半導体関係に関する研究体制(アドバンストマイクロエレクトロニクスセンター)をスリム化するため、本社の研究所である研究開発センターと工場に異動させ、1200人から500人に削減する、というニュースのインパクトが大きかった。次がLEDをバックライトに使う液晶テレビをシャープがサムスンに遅ればせながら発売することを表明した話題などを採り上げる。

9月29日付けの日本経済新聞によると、本社の研究所には500人、四日市・大分・姫路の工場に200人を配置転換すると伝えている。研究所と事業部門における半導体開発のダブりをなくし、コスト削減と開発期間短縮につなげるという。アドバンストマイクロエレクトロニクスセンターは製品化のための回路設計などの業務は残すという。

サムスンがLEDをバックライトに使う液晶テレビを開発していることをセミコンポータルが報じてから早2年がたった。このLED液晶テレビはサムスンの一人勝ちという状態にシャープも遅れながら参入するというわけだ。バックライトを従来の冷陰極管からLEDに置き換えるだけでも消費電力は少なくなるが、さらに小さくなる。導光板で光源からの光を拡散させて、しかも表面に水平方向から垂直な方向へと光を放射させる点では同じだが、スクリーン上の暗い場面があれば、そのLEDも消してコントラストを上げると同時に消費電力も下げることができる。このコントロールを行うのはパワーメネジメント用のシリコン半導体ICだ。

シャープが11月10日から4モデルを発売すると発表したことに続き、ソニーや東芝も追撃する。LEDバックライト液晶テレビに関しては韓国が先行し、日本勢が追いかけるという展開をするようになっている。

シャープは10月1日から大阪府堺市に設置した第10世代の液晶テレビ用のラインが稼働を始めた。同社のラインは2.88m×3.13mという大きさの基板を使うことが最大の特長で、40インチの液晶テレビ基板を18枚とれるため、生産性が上がり、1枚当たりの生産コストを下げるというもの。先行する韓国・台湾勢はもっと小さな第8世代のガラス基板で30インチ台の液晶パネルを生産するため、シャープの戦略は40インチで韓国・台湾勢よりもコスト競争力があるとしている。逆にいえば、インフラコストが高くなる大面積のガラスに頼ることしかコストを下げられないことに、シャープの低コスト化技術は行き詰っているとも言えそうだ。同じガラス面積なら台湾・韓国の方がなぜ安く作れるのか、ここを追求せずに競争力のある低コスト化技術の開発はあり得ない。同じことが半導体デバイスについてもいえる。

10月3日には、国内家電ベンチャーであるバイ・デザイン社に対して台湾の瑞軒科技が33%出資し、台湾製の液晶テレビをバイ・デザインのブランドを通して国内市場で販売するというニュースが流れた。2008年12月期に赤字を計上したバイ・デザインにとって資本の提供は望むところで、大手量販店へ販路を拡大する方針だという。

一方、パナソニックは9月30日に中国で生産していたブラウン管式のテレビの生産も中止し、中国の合弁会社の出資持ち株をすべて合弁相手に譲渡すると、報じられた。これにより、パナソニックはブラウン管から完全に撤退することになる。逆にいえば、パナソニックはブラウン管工場をなかなか離さなかったといえる。動きが遅いとのそしりは免れない。

(2009/10/05)
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