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携帯電話の機能、ゲームの世界、カーライフを変えるマイクロマシン技術

MEMSファンドリーも拡大予想

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 阿部英雄 代表取締役)はこのほど、ボーダレスの動きが進む、半導体・電子部品実装工程。株式会社富士経済では、アプリケーション機器の軽薄短小化、機能向上に貢献するマイクロマシンの国内市場の調査を実施した。その結果を報告書「2007 マイクロマシン関連市場実態総調査」にまとめた。

2007 マイクロマシン関連市場実態総調査◆調査結果の概要

 マイクロマシン技術の利用は情報通信分野、自動車、バイオ、インダストリアル、医療など、多方面に広がっている。特にデバイスが小型化された「MEMS」技術の進歩が著しく、携帯電話にはマイクロ加速度センサ、マイクロ照度センサ、シリコンマイクなどが搭載されはじめ、ナビゲーション、輝度調整、高音質などの機能向上に貢献している。また自動車には圧力センサや加速度センサなどが搭載され安全性が向上し、快適な運転を可能としている。

 MEMS市場がマイクロマシン市場の多くを占めているが、将来的にはメカ的マイクロマシンの実用化が進み、双方の融合が進んで行く。現状のメカ的マイクロマシンで市場が形成されているのはデスクトップファクトリーなどのプラントである。今後は小型のケミカルプラントやマイクロロボット、マイクロモータなども徐々に実用化に向かうとみられる。さらに、プラントがマイクロマシンを製造することも期待される。メカ的マイクロマシンの市場はまだ小さいものの、今後モノづくりの変化を促していくことは確実である。

 MEMS製造装置も現状では既存の半導体製造装置の流用が可能なため大きな市場にはなっていない。MEMSファウンドリーサービスは当初、余剰生産能力の有効活用という意味合いが強かったが、現在は戦略的にMEMS製造ノウハウを活用する考え方に変わっている。今後、半導体ファウンドリーのように一定のポジションを確立すると考えられる。現状では市場が顕在化しているMEMS市場を中心に構成されているが、近い将来マイクロマシンの市場は、周辺市場を巻き込んで、デバイスと装置のマイクロ化の連鎖によって拡大していくと予測される。


◆注目市場

(1)シリコンマイク
国内市場規模 2006年見込 21億円 2010年145億円 (伸長率690%)

 小型マイク市場は現在、ECM(エレクトロ・コンデンサ・マイク)が主流となっているが、携帯電話やPDA、デジタルカメラなど、モバイル機器の普及に伴い、マイクの小型化が一段と進んでいる。ECM代替製品としてシリコンマイクが期待されており、携帯電話などのモバイル機器を中心に採用が進んでいる。シリコンマイクは音圧を感知するセンサで、Si薄膜とキャパシタの静電容量変化から音声信号を読み取る。ECMと大きく異なる点は、はんだリフローにより表面実装が可能なことで、ソケットを使う必要がない分製造コストを低減できる。ただし、ECMは製造工程が確立されているため低コスト化が進んでおり、トータルコストでは現在のところ若干ECMが割安である。

 市場は2002年頃から形成され始め順調に推移している。国内市場ではノウルズ・エレクトロニクス・ジャパンが参入している。市場拡大に伴い、今後は国内ECMメーカーも参入してくるとみられる。ワールドワイドでは、Akoustika(米)、Sonion(デンマーク)などが参入しているが、実績はまだ少ない。現状、価格はECMより0.2ドルほど高いが、量産が進み、参入企業が増えるに従い、低価格化が進むとみられる。携帯電話への採用が本格化したことから、今後出荷量が増加していくと予測される。

 アプリケーションとしては、携帯電話向けが90%(数量ベース2006年見込)を占めている。機器の薄型化に伴いマイクの小型化が特に求められている用途である。他のアプリケーションとしてはデジタルカメラ、ゲーム機、ICレコーダーなどであるが、小型化のニーズが低く、コスト面などがネックとなり、一部の機種への採用にとどまっている。今後有望視される分野は、近い将来にパソコンOSに搭載されると見込まれる音声認識ソフトの音響サポート用である。また、シリコンマイクは従来のECMと比較して温度劣化しにくいという特性を持つことから、自動車への搭載も充分可能性がある。さらなる量産により、自動車電装品メーカーなどへの安定供給体制が確立されれば同分野の構成比が高くなっていく。

(2)マイクロ圧力センサ
国内市場規模 2006年見込 375億円 2010年520億円 (伸長率139%)

 マイクロ圧力センサは、ピエゾ抵抗型、静電容量型などがあるが、現在はピエゾ抵抗型が多い。ピエゾ抵抗型は、応力に伴い拡散歪ゲージの抵抗率が変化し電気信号を得る。自動車用途中心の市場で、数量ベースでは93%(2006年見込)を占めており、エンジンコントロール、油圧コントロール、カーエアコン用として採用されている。また、タイヤの空気圧検知用としてすでに米国を中心に採用が始まっており、今後は国内での普及も期待される。他のアプリケーションでは、医療用やFA関連、各種計測器などで採用されているものの、大幅な採用には至っておらず、現状は自動車用途中心である。デンソー、ボッシュなど車載電装品メーカーが自社電装品向けに内製するケースが多く、この内製化の動きは今後も強まって行くとみられる。他の用途にも研究開発が進んでいるが当面は自動車用途がメインとみられる。


◆マイクロマシン関連市場のアプリケーション

 主な用途は携帯電話と自動車である。この分野は高付加価値化が急速に進んでおり、アプリケーション自体の進化も著しい。将来的には携帯電話はウェアラブル化や、リモート制御のコア的なツールへの進化、自動車は自動運転システムへと進化するなど、さまざまな可能性を持っている。

 携帯電話は、すでにマルチバンド化、TV、音楽プレーヤーとしてのメディア利用、省電力/長時間利用、高音質、ナビゲーション機能など、様々な方向からの開発が進められている。今後もあらゆる機能を持ち合わせた製品となっていく。そのため、常に新しい発想が取り入れられ、それを現実化していくためにマイクロマシン技術は無くてはならないものとなっており、今後も携帯電話の進化を支えていく技術である。現在のところフラッグシップ機、ハイエンド機への採用となっているが、GPS機能の標準搭載などの動きもあり、今後3軸地磁気センサなどはミドルレンジ向けへの採用も増えていくとみられる。また、ナビゲーション機能では6軸モーションセンサなどの3軸加速度センサと3軸地磁気センサのハイブリッドタイプも開発されており、高精度の電子コンパスとしてハイエンド機を中心に搭載されていく方向にある。

 自動車向けとしては、マイクロ加速度センサ、マイクロ圧力センサ、マイクロジャイロの採用が増えている。あくまでも車両運転における安全を目的とした利用がメインとなっているが、最近ではカーナビなどの電子機器に組み込まれるケースも増えてきている。安全・安心に加え、快適といった観点からの採用も増えていくとみられる。高級車などのハイエンド向け車種へ多く採用されており、自動車メーカーとしても安全・快適を前面に出し、差別化を図っている。最近ではミドルレンジの車種などへの採用もでてきており、また、バイクへの応用もでてきている。一部の750ccクラスの大型車種で横転時のエンジン制御用などにマイクロ加速度センサやマイクロジャイロが採用されている。

 他のアプリケーションで今後期待されるのは、AV機器、OA機器、白物家電等のアプリケーションである。現在の採用率は低いものの、アプリケーションの需要量から見てもポテンシャルが高い。アプリケーションの特徴としては2つに大別される。一つはMEMS機能が製品のキーテクノロジーとなって前面に出てくるもので、ゲーム機などがこれにあたり、任天堂「Wii」のようにマイクロ加速度センサなどの機能を利用しバーチャルリアリティを実現している。もう一つは製品の高付加価値化に貢献するが表面には出てこない採用方法である。白物家電の水位検知、自動車の空気圧検知、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラの手ブレ補正などの機能である。マイクロマシン機能を全面的にあるいは裏方的に利用するなどでアプリケーションの可能性は大きく広がり、将来的には、アプリケーション単体としての高付加価値化が進むとともに、ホームオートメーションなどのネットワークと連動するなどして機能していく。

 在宅医療機器や携帯型オーディオは、すでにマイクロマシンの採用率は高いが、ネットワーク化などでアプリケーションの可能性が広がり、マイクロマシンの採用が拡大していく可能性をもっている。


◆調査対象

調査対象

 本報告書では、マイクロマシンを『小さなデバイスから小さな装置』という広義で捉えている。現状では、小さなデバイス(=MEMS)の市場が先行し、ナノテクノロジーへと進化を遂げ、市場が形成されているが、小さな装置(=狭義のマイクロマシン)はまだ模索の段階である。小さなデバイスを製造する装置(=MEMS生産設備)は、プロセス工程のため小型化はあまり求められていないのが実情である。

フルレポートはhttps://www.fuji-keizai.co.jp/report/index.html?keyword=140607814にて購入可能。

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