Semiconductor Portal

» セミコンポータルによる分析 » 市場分析

世界の半導体製造装置、中国が需要もないのに買いだめ続く

中国が半導体製造装置を買いだめしている様子が明確になった。セミコンポータルでは、Applied Materialsと東京エレクトロンの中国への出荷が増えていることから、中国側の買いだめによるものと見ていたが、2024年第2四半期でも全ての半導体製造装置の中国売り上げが大きく増加していることをSEMIがWorldwide Semiconductor Equipment Market Statistics Reportで明らかにした。

Semiconductor Equipment Billings By Region / SEMI

図1 半導体製造装置の国別販売額 出典:SEMI


2024年第2四半期(2Q)における全世界の半導体製造装置市場は、前年同期比(YoY)4%増、前四半期比(QoQ)1%増の268億ドルになったとSEMIが発表した(参考資料1)。これだけ聞くと製造装置市場は今年も成長しているようだが、図1を見ると中国だけが2024年1Q、2Qとも大きく成長している。2QではYoYで72%増の122.1億ドルに達する(図2)。

2024年前半(1H)では、世界ではYoYで0.7%増とほぼ横ばいの532億ドルであったが、中国だけの半期をとれば、同84%増の247.3億ドルとなった。前半で中国が大きく伸びた。


Semiconductor Equipment Market Revenue by Region / SEMI

図2 2024年第2四半期における地域別半導体製造装置販売額 出典:SEMI


中国におけるスマートフォンやパソコンの市場が回復したというニュースはまだ見ていない。YoYでせいぜい10%増えたかどうかという程度であり、半導体チップへの大きな需要は出ていない。にも拘わらず製造装置だけが大きく売れている。このことは中国が製造装置を買いだめしていると言えそうだ。事実、そのように捉える海外メディアもある。

そこで、中国を除く世界の半導体製造装置の販売額を拾ってみると、その様子が良くわかる。2024年2Qには、中国を除くと145.7億ドルとなり、1年前の23年2Qは182.5億ドルであるから、今年の2QはYoYで20%減という数字になる。つまり24年2Qの半導体製造装置は、中国以外では20%減であり、中国に買ってもらっていることになる。

一方中国は、需要がなくても、米国や日本の200mの製造装置や古いタイプの製造装置は半導体を生産するうえでとても重要な装置であるため、買えるうちに買っておこう、という姿勢になっている。一方、日本と米国、オランダなどは売れるうちに売ってしまえ、というスタンスだ(参考資料2)。米国政府の対中輸出規制が300mmウェーハ対応機以外はまだ緩いため購入できるが、いつ禁止になるかは米国政府次第だ。

この買いだめがあまり続くと、今度は中国に大量の製造装置が集まり、値崩れを起こすリスクが高くなる。1Q、2Qとも中国で大売れしてしまったわけだ。このため製造装置メーカーはそろそろ注意して扱うべきかもしれない。

参考資料
1. "Q2 2024 Global Semiconductor Equipment Billings Increased 4% Year-Over-Year, SEMI Reports", SEMI newsroom, (2024/09/04)
2. 「中国、『今のうちに半導体製造装置をせっせと購入しておこう』」、セミコンポータル、(2024/06/21)

(2024/09/11)
ご意見・ご感想