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世界の半導体市場、9月から3カ月連続プラス成長、11月は2桁成長

世界の半導体市場が2023年9月以来、3カ月連続プラス成長で、特に11月単月では前年同期比12%増という結果になった。11月は同2桁成長する、とセミコンポータルが前回予測した通りの結果となった(参考資料1)。SIA(米半導体工業会)の発表した3ヵ月の移動平均値で11月にプラスと報じているが、単月では9月からプラスになっている。

半導体販売額の前年差と比 / WSTSの数字をもとにセミコンポータルがグラフ化

図1 世界半導体販売額の前年差と前年比


SIAは、2023年の世界半導体販売額は前年同月比5.3%増の480億ドルとなり、2022年8月以来のプラス成長だと表現したが、SIAの数字は3カ月の移動平均値である。つまり11月の数字は、9月、10月、11月の平均値である。このため、前の2カ月の影響が残った数字となっている。これでは回復傾向を読むのに、どうしても3カ月遅れてしまう。

このため図1のように単月の数字を積み上げていく方が将来の数字を読みやすくなる。2023年11月は479.6億ドルであり、2022年11月の428.4億ドルよりも12%プラスとなっている。23年10月は、464.2億ドルで、22年10月の440.0億ドルよりも6%大きい。そして23年9月は、495.7億ドルとなり、22年9月の494.0億ドルよりもわずか0.34%大きいだけにとどまっていたものの、プラス成長であった。

回復傾向が出ていることは間違いないだけではなく、前年の12月、1月とも23年12月と24年1月は、大きく沈み込んだ2022年11月からの数字と同程度なので、やはり10〜15%以上のプラスになることは間違いない。つまり回復傾向がはっきりと見えているといえそうだ。ただし、それでもまだ、20年末から22年3月くらいまでの大きな金額レベルには届かない。外挿すると、今年の5〜6月くらいには前回のピーク期間の金額に追いつき、それ以降は追い越すことになるだろう。

回復のモチベーションとして生成AIだけではなく、従来のAI(機械学習)がもっと広い分野へも適用されるようになりつつある。IntelのAI Everywhere戦略のように、クラウドだけではなくパソコンやIoTなどのエッジでもAIを学習させられるようになってきた。AIチップや回路が少ない追加学習でこれまでと同等以上の学習能力を持つことができるようになっている。画像認識や音声認識などの学習されたデータはすでにクラウド上にあり、それを手元のデバイスにダウンロードしフォーマットを整えて自分の使いたいモデルに追加学習させるだけで済むようになったからだ。

AIでは積和演算回路とメモリ(DRAM/SRAM)をデータの一時保存と重みデータの保存などにふんだんに使うため、GPUやAIチップメーカーだけではなく、メモリメーカーの回復も速い。特に大量で高速のメモリとしてHBM(High Bandwidth Memory)が生成AIの学習用・推論用に需要が多いため、HBMのトップメーカーであるSK Hynixの売り上げが急増、Samsungの背中が見えてきた。

ただ、日本の半導体メーカーは円安の影響で、世界ランキングからは遠ざかっている。これまでの2023年第1四半期から第3四半期までの売り上げでは、ルネサスの1兆1078億円を筆頭にソニー1兆478億円、キオクシア7377億円となっているが、1ドル=145円で表せば、トップのルネサスでさえ、76.4億ドルにしかならず100億ドルには届かない。超円安が続く限り、日本企業は世界企業とは肩を並べることは難しい。

参考資料
1. 「9月の世界半導体市場、前年同月比でプラスに転じた」、セミコンポータル (2023/11/24)

(2024/01/16)
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