23年2Qのファブレス半導体ランキング、Nvidiaがトップに躍り出る
2023年第2四半期(2Q)でのファブレス半導体ランキングでNvidiaが初めてトップになった。ファブレス半導体のトップ10社ランキング(図1)を発表したのは台湾系市場調査会社のTrendForce。Nvidiaは前四半期比68.3%という驚異的な成長率で、QualcommとBroadcomを抜き、トップになった。
図1 2023年第2四半期におけるファブレス半導体ランキング 出典:TrendForce
23年2Qにおけるファブレス半導体、上位10社の合計は前四半期比12.5%増の381億ドルとなった。これだけ見ているとファブレス半導体は回復期に入ったように見えるが、Nvidiaの破壊的な成長にドライブされているため、ゆっくりと回復期には向かっているが、前年比ではまだマイナスである。2022年2Qにおけるファブレス上位10社は394.8億ドルで、今年よりも多かった。
Nvidiaの大きな成長は言うまでもなく、生成AI向けのGPU(グラフィックスプロセッサ)やそのサブシステムによるもの。大規模言語モデルで作られている生成AIは、巨大なソフトウエアからなるため、これを許容できる時間内で学習や推論を実行するためには巨大なハードウエア(半導体チップ)が必要になる。NvidiaのGPUはAI(ニューラルネットワークをベースにした超並列な行列演算)の演算に適した構造(超並列の積和演算回路)を持つため、生成AIを学習させる企業や大学、研究機関が欲しがるのである。
2位に落ちたQualcommはスマートフォン需要が落ちていることから前四半期比9.7%減の71.7億ドルに、3位のBroadcomはデータセンター需要もスマホやパソコンより少し遅れて落ちたため、スマホやパソコンほどひどくはないものの、0.2%減の69億ドルとなった。
4位のAMDはほぼ横ばいの53.6億ドルとなり、ゲーム用のGPUが振るわなかった。ただ、AMDはデータセンター向けCPUにも力を入れているが、Broadcomと同様、データセンター需要はまだそれほど大きくなっていない。6位Marvellもデータセンター向けが強いが、上記と同様な理由で1.4%減の13.3億ドルにとどまっている。
民生機器向けの半導体に強い5位のMediatekは、テレビやWi-Fi向けのSoCが在庫調整を終え回復しつつあり、2Qにおいては、1.5%増の32億ドルとなった。同じく台湾勢のNovatekやRealtekも有機ELテレビのディスプレイドライバなどが好調で、それぞれ24.7%増、32.6%増と好調だ。ただし、これはまだ一時的なもので全面的な回復に至っていないため、3Qではマイナス成長になるかもしれないとTrendForceは見ている。
在庫調整に関して、後半は前半よりも少しは良くなるため、Q3は少し上向くがまだ全面的な上向きとはならないと見ている。ただし、やはりけん引するのは生成AIであり、Nvidiaは2桁成長を続けるだろうとしている。
参考資料
1. 「直近のファブレス半導体トップテン、20%減でもQualcommがトップ」、セミコンポータル (2023/05/02)