シリコンウェーハの出荷額、23年は7%減だが24年は8%増へ
2023年のシリコンウェーハの販売額は、半導体不況の影響を受け、前年比7%減という数字が見込まれているが、2024年には回復し前年比8%成長で戻ってくると期待されている。これは、半導体材料専門の市場調査会社であるTechcet社が最新のレポートで予想したもの。
図1 シリコンウェーハの23年以降の成長予測 出典:Techcet
シリコンウェーハの販売額は、2023年から5年間の年平均成長率CAGR 5%で成長していき2027年には200億ドルに達する、と予測する(参考資料1)。シリコンウェーハの中でもSOI(Silicon on Insulator)ウェーハの成長率が最も大きく、CAGRでは11.5%に上ると見ている。
2023年は300mmウェーハの需給が崩れ、在庫が溜まり、半導体業界は不況に見舞われてきた。しかし、半導体は長期的に成長産業であることが認識されて以来、ウェーハメーカー大手5社(信越化学工業、Sumco、GlobalWafers、Siltronic、SK Siltron)は、2024年〜25年にかけての新しい工場拡張計画を発表してきていた。ただ、そのタイミングはまだ微妙で、新工場の建設や拡張工場への着手はやや遅れると見られている。市況や長期契約の状態にもよるが、2025年以降にはさらに追加の生産ライン増設も期待されているという。
長期的にTechcetは、半導体ウェーハの需給バランスが2024年には安定になり、25年には再び供給不足になる可能性があると見ている。その反動が26年にやってきてややスローダウンになる可能性を考えている。
長期的に半導体不足がこの先も再びやってくることに対する備えも表れている。欧州の自動車メーカー、Stellantisは複数の半導体メーカーと2030年までに100億ユーロ(1兆5500億円)の長期契約を結んだと通信会社のロイターが報じた(参考資料2)。Stellantisは、フランスのPSA(プジョーやシトロエンなど)と、米伊のFiat Chrysler、が合併した会社で、アルファロメオやマセラッティ、ジープ、オペルなど14ブランドを持つ。同社は、半導体不足でクルマの生産ラインを止めるという苦渋を味わったことで、その経験を活かし今後の半導体不足を少しでも和らげることが狙い。協業する半導体メーカーは、Infineon、NXP、onsemi、Qualcommなどで彼らと話し合いを続けているという。
Techcetはシリコンウェーハだけではなく、それを含めた半導体材料市場(図2)についても調査しており(参考資料3)、2023年は前年比3%減の696億ドルになると予想している。しかし、生成AIなどのロジックや成長が続く自動車向け半導体が2023年の落ち込みを支えている。
図2 半導体プロセスに使う材料の市場予測 出典:Techcet
2024年には同8%増の750億ドルに達し回復するとTechcetは見る。特に300mmウェーハやエピタキシャルウェーハ、半導体特殊ガス、銅合金ターゲットなどが、サプライヤーの拡張遅れによってひっ迫する恐れがあると指摘する。2024年以降に需要が強いのは、フォトレジストや現像液などEUV関係の材料が2022年〜27年のCAGRで20%の伸びを示すと予想している。さらにNANDフラッシュ製造に必要な材料も同5%で成長するとしている。
参考資料
1. "Silicon Wafers Supply Swinging Back to Positive for 2023", Semiconductor Digest (2023/07/19)
2. "2023 Semiconductor Materials Market Slowing but Resilient", Techcet News Release (2023/07/12)
3. "Stellantis inks $11bln in contracts for vital semiconductors by 2030", Reuters (2023/07/18)
4. 「シリコンの出荷面積、2四半期連続でマイナスに」、セミコンポータル (2023/05/09)