半導体製造装置は底を打ったか
日本製および北米製半導体製造装置の4月の販売額が、それぞれSEAJ、SEMIから発表された。日本製半導体製造装置は、前年比18.1%減の1787億2900万円、前月比では5.0%減だった。北米製のそれは前年比29.0%減の19億1080万ドル、前月比では4.7%増だった。いずれも3カ月の移動平均値で表している。
図1 日本製・北米製半導体製造装置の販売額 出典:元の数字はSEAJ、SEMI
これらの数字から何が読み取れるか。2017年から2018年にかけて半導体産業ではメモリバブルが起きた。NANDフラッシュはプロセスが従来の2次元から3次元構造に代わり、しかも32層から64層へと大きく跳ね上がった。このため、最下層のセルから電極コンタクトを取るために深いエッチングが必要だった。もちろんエッチングと共に電極を埋め込むためのデポジションあるいはメッキ工程が加わる。こういった新しい装置が求められた。当初は歩留まりが上がらず、装置を多数揃え生産量を確保しようと動いた。このため3D-NAND用の装置需要は急増した。2017年末ごろから歩留まりが上がり始め、装置需要は減っていく。2018年の3〜4月が装置販売額のピークだったといえる。
2019年の4月を前年比で比べると、日米製装置とも大きく減少しているが、むしろバブルであったために落ち込み額を比較しても意味は少ない。DRAMは生産量を増やさなかったためにDRAMチップ単価だけが異常に上昇した。DRAM製造装置はさほど売れたわけではなく、ここにはあまり反映されていない。
NANDフラッシュ、DRAMとも中国で3社(モバイルDRAMのInnotron、特殊DRAMのJHICC、NANDフラッシュの長江ストレージ)が生産を始めるはずだった。このための製造装置を中国へ輸出する用意をしていた。ところが、米中貿易摩擦が激しくなり、製造装置の輸出を停止する事態になった。この結果、2018年の半ばからこれまでの間、製造装置の販売は下降曲線をたどっていた。
ただ、下降曲線は緩んできていることも確かである。こうした事実から見ると半導体製造装置の販売額はそろそろ底を迎えたといってもよいではないだろうか。これまで出荷してきた製造装置の数量が、大きく増えずにこれまでと変わらないと見れば、中国向けが急激に減るというシナリオも考えにくい。そろそろ底になってきたと解釈してもよいだろう。
参考資料
1. 日米とも半導体製造装置市場はどこまで下がるかが焦点に (2019/02/26)