3月の駆け込み需要を実証する6月の半導体製造装置の販売額
2014年6月の日本製半導体製造装置の受注額は前月比8.3%減の1063億8600万円、販売額は28.7%減の1009億4500万円、そのB/Bレシオは1.05となった(図1)。3月から5月まで販売額は1400億円前後で推移していたためB/Bレシオは0.82あたりを示していた。
図1 日本製半導体製造装置の受注額・販売額・B/Bレシオ 出典:SEAJ
この販売額・受注額は3ヵ月の移動平均で表しているため、3〜5月の販売額が高い金額をキープしていたことは、3月に異常に高い販売額を示し、4月と5月が2月あるいは6月並みの金額を示していたことが反映されている。3月販売額の移動平均値が急に上がっていることは消費増税をにらんだものだろうと4月22日の記事(参考資料1)で推察したが、やはりその通りであった。
「消費増税の前に製造装置の代金を支払おう」、と考えた半導体メーカーの姿が目に浮かぶようだ。国内半導体メーカーでは、これまで納入されたばかりの製造装置をチェックするため、その代金を検収後に支払うことが習慣化していた。事実上、代金支払いを延ばしてきたといえる。装置メーカーをかつて取材した時、「台湾や韓国の半導体メーカーの支払いは早い。装置納入後にその80%程度はすぐに支払われ、残りの20%が検収後」と答えていた。だから装置メーカーは、国内の半導体メーカーよりも台湾・韓国企業を優先して納入してきた。これでは国内半導体メーカーの競争力が失われるのは無理もない。4月の増税前の駆け込み支払いこそ、未だに変わらない姿勢ではないだろうか。加えて、プロセスチューニングで差別化すると称してきた方針も、検収後の支払いという悪しき商習慣を常態化してきた一因であろう。
また、図1から、B/Bレシオだけで景気判断はできないことがよくわかる。特に今月は、販売額・受注額共に減少したのにもかかわらず、B/Bレシオだけが0.82から1.05へと増加した。0.82の3月、4月、5月が悪い景況を示していたわけではない。3月の駆け込み需要の影響を引きずりすぎたのである。
この先の7〜9月期の受注が落ちているという情報もある。ここでも、移動平均の受注額が6月に落ちていることは単月で大きく落ちたことを表している。この要因は、6月のApple開発者会議でのiPhone 6に対する見通しが発表されなかったことや、SamsungのGalaxy S5の失望感などによって、スマホ需要に一時的な陰りがあったためではないか、と推察する。TSMCの最近の決算発表では、今年末までファウンドリ受注は満杯という。また、SEMIの予測でも2014年全体は20%の伸びになるとしている(参考資料2)。7〜9月期の受注停止の情報が流れる前に発表されたSEMIの見通しは24%増だったから、7〜9月期分を見越した下方修正での20%成長だと見てよいだろう。
日本製のFPD製造装置も半導体と同様、6月は受注額、販売額とも下がった。販売額が6.2%減の233億2300万円だが、受注額は16.8%減の256億500万円、B/Bレシオは前月の1.24から1.10に減少している(図2)。
図2 日本製FPD製造装置の受注額・販売額・B/Bレシオ 出典:SEAJ
FPD製造装置は、3月に受注額が急増しており、4、5月とほぼ同じレベルで推移していた。同じ3月に販売額は急に下がっており、B/Bレシオは1.50と非常に高まったが、6月にようやく沈静化した。ただ、要注意なことは、受注額・販売額共に減少気味で、7〜9月期にモバイル市場の一時的な停滞があるとすると、7〜9月は楽観できないこと。ただ、第4四半期に期待されるモバイル端末市場に合わせて、半導体製造装置も期待される。この好調さに引きずられて、液晶パネルも上向きになる可能性はある。
参考資料
1. 半導体製造装置は4月増税による駆け込み需要?ならば検収とは何? (2014/04/22)
2. 2014年の半導体製造装置市場、Q3の低迷を考慮しても20.8%増 (2014/07/08)