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コラボはこれから必須とTSMCが言明

世界最大のファウンドリ企業である台湾TSMC (Taiwan Semiconductor Manufacturing Co., Ltd.)の上級バイスプレジデントであるMark Liu氏は、R&Dコストが32nmプロセスでは0.25μmプロセスの14倍にもなるとしてコラボレーションは欠かせないことを改めて強調した。

もはや単独で投資できる企業は米Intel社などかなり限られてくると、このほどパシフィコ横浜で開かれた、Industry Strategy and Technology Forum 2007で、今後の半導体産業のキーワードはコラボレーションであることを見通した。

この背景には、企業単独での研究開発コストや設備投資コストがあまりにも膨大になり、1社ではかなり重荷になってきたことがある。チップの集積度は膨大になり、複雑さが増加しているのにもかかわらず、設計期間の短縮が求められている。このため製品設計コストが増加し、65nmプロセス製品だと4500万ドルにもなると見積もっている。研究開発コストは、0.25μm技術を1とすると、65nm技術は10倍、45nm技術は12倍、32nm技術は14倍にも膨れ上がるという。製造コストは設備投資を入れて、90nmプロセスが25億米ドル、65nmで32億ドル、45nmで45億ドル、32nmで55億ドルと増大していくと見ている。

これからの市場は、一般的な見方と同様、デジタル家電が牽引する。ただし、デジタル家電向けのチップの主力技術は、製造技術から、システムソフトウエアと製品設計へとシフトしている。主なIDM(総合半導体メーカー)の80%はソフトウエアエンジニアだと見ている。プロセス技術の要はインテグレーションになり、個々のプロセス技術は大学や研究機関で開発すべきだと主張する。

こういったソフトウエア、システムへのシフトを裏付けるかのように、2002年から2006年までの平均年率成長率CAGRを見ると、IDMが13%に対して設計やソフトウエアだけのファブレス企業は26%と高い。この勢いを外挿すると将来、ファブレスがIDMを抜く日が来る可能性は十分にある。

一方で、ファウンドリ事業は半導体産業のひとつの柱になってきたことも事実である。TSMCは2006年、2007年前半ともトップ10ランキングの第6位に位置している(IC Insights調べ、2007/08/10 IC Insightsが最新半導体ランキングを発表)。どのような顧客にも対応することをモットーとするTSMCの微細化のペースはITRSよりも速い。ITRSでは2010年になっているが、Mark Liu氏は今45nm製品を生産しているという。実際TSMCは、パソコンやグラフィックス向けチップを80%以上、ハードドライブやBluetoothは60%弱、その他無線LAN、携帯電話のベーバンド回路、デジタルTV、セットトップボックス、DVDプレーヤー、イーサーネットなどの分野で大きなシェアを持っている。

ただし、半導体プロセス技術の微細化がすべての時代はもはや去ったといえる。同氏は「テクノロジーノードを売り物にしていたメリットは減っていく」と考えている。このメリットは増やすなら、回路モデルの精度を上げるとか、EDAベンダーやIPベンダーとコラボを組み、トータル設計システムを作り上げることだとしている。

ファウンドリ独自としては、300mmウェーハで月産10万枚以上のギガファブを推進する。投資金額は増大するものの、オペレーションコストは、月産1万枚以下のミニファブや2~3万枚のメガファブと比べて低いという。微細化と共に、量産開始から上がっていく歩留まりのペースである習熟期間は短くなっているとしている。例えば、高周波対応の技術であるRF CMOSは、90nmから65nmへの移行にかかった期間よりも、65nmから45nmへの移行期間の方がずっと早い。

TSMCは今後、CMOSのMEMSや、ウェーハレベルSiPパッケージングによる3次元ICなどにも力を入れ、請け負う製品のポートフォリオを広げていく。貫通電極を利用する3次元構造のSiPを開発中である。

突然の地震や停電などに対しての備えもある。シングルソースへの危険に対して、新竹のサイエンスパークだけではなく、台南の工業団地にもラインを設置している。加えて、米国、シンガポールにもラインを持っているため、一カ所の工場がストップしても他で対応できる。停電に対しては例えば台南工場の3つの棟では、それぞれ別々の電力供給ラインを備えている。供給不安を顧客に与えない体制をとる。

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