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営業利益率が四半世紀に渡り低下し続けていた大手電機

大手電機メーカーの本格的な業績回復がまだ見られないのは、営業利益率が四半世紀に渡って長期的に低下し続けているため、という半導体メーカーにとってもエレクトロニクスメーカーにとっても、厳しいトレンドが発表された。前ドイツ証券調査部長の佐藤文昭氏が「半導体・フラットパネルディスプレイ マーケットセミナー」において明らかにしたもの。

それによると、日本の製造業全体を、電機、機械、鉄鋼、精密機器、自動車部品、電子部品、繊維、紙・パルプなどの業種にわたりトップ15位のランキングを、1980年度から2006年度まで調べた。その結果、電機は1980年度営業利益率8.4%の5位、85年度も5位、90年度は7位、95年度は11位、2000年度、2005年度と14位、2006年度15位の3.1%と営業利益率が徐々に悪い順位に下がってきている。それぞれの分野は大手トップ企業を選び、電機はトップ10社を選んでいる。電機の弱さは、実は1995年ごろから電機10社と電機以外63社営業利益率の差が徐々に開いていくことが裏づけられている。1980年度から85年度までは電機10社のほうが非電機よりもむしろ利益率は高かった。

現在の3.1%という営業利益率でさえ、実は企業として健全な利益ではない。特に、売り上げに対する減価償却費と研究開発費は1991年からこれまでの間、減少傾向にある。言い換えると開発費を削って利益を確保しているわけだ。このことは将来が暗いということにつながる。だから企業価値が上がらないことにもつながっている。

電機10社の成長性の指針となる株価は下がり気味である。1980年度を100とすると、そのあと140まで上り1989年度までずっと100を超えており、89年度に一度100まで落ちた。その後再び100を超え、ITバブルの160まで上り詰めた後、2002年度まで、100に落ちていない。しかし、その後は下がり続け、2007年度には70程度にまで低下した。

海外企業と比べるといっそう顕著である。売上高18兆7900億円のGEと、同10兆2480億円の日立製作所を時価総額で比べると、GEが44兆2260億円に対し、日立はわずか2兆8330億円しかない。つまり、この金額でしかその企業を買ってはくれない。これは日立製作所に限ったことではない。三洋半導体社の2006年度の売上高は1813億円だが、9月8日の日本経済新聞によると、国内のファンドであるアドバンテッジはこれまで最高の1200〜1300億円を提示したもようだという。この最高金額でさえ、売上高よりも小さい。

日本の電機、半導体メーカーの成功例はエルピーダが示してくれているが、いわゆるシステムLSIメーカーの成功例といえるモデル企業はいまだに出ていない。これについて、佐藤氏は日本の半導体メーカーが低収益である原因は5つあると見る。1)テクノロジーへのこだわりが強く、最先端のR&D、設備投資を継続している、2)5,6インチの旧工場をまだ数多く保有し、その比率が高い、3)総合半導体メーカーで品種が多く、リソースが分散している、4)先端システムLSIのボリュームが小さい、5)品質・ブランドへのこだわりが強く、オーバースペックぎみでコスト高、という5つをあげる。

これに対して、半導体産業で成功するための3つのビジネスモデルとして世界の半導体企業の収益モデルから3つ紹介している。1)設備を持たないファブレス企業、2)新規設備の投資をするならば群を抜くトップ企業、3)枯れた設備でアナログIC、ディスクリートを作る。これらはいずれも利益率の高い、世界の企業をモデルにした提案である。

例えば1)の成功例であるファブレスのトップQualcomm社の2006年度の売上高は75.3億米ドル、純利益28億ドルだから、利益率は37.2%になる。2)はいわずと知れたIntelやSamsungが当てはまる。いずれも利益率は2005年で30%程度と高い。3)では利益率40%以上のLinear Technologyの例がある。2005年度は高収益企業としてBusiness Week誌で紹介され、2006年は少し低下したとはいえ、売上高10億9300万ドル、純利益4億2900万ドルで39.2%もある。ただし、Linear Technologyは汎用品ではなく高性能品で勝負しており、枯れたプロセスを利用しても性能・機能で差異化している。

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