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DRAMの需要はこれから、エルピーダ坂本社長が予測する今後

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エルピーダメモリ 代表取締役社長 坂本幸雄氏

日本唯一のDRAMメーカーであるエルピーダメモリ。DRAMは今年の第1四半期から第2四半期にかけて、激しい値崩れを起こした。DRAMを搭載したWindows VistaOSパソコンの売れ行きが予想以上に芳しくなかったためである。第2四半期での業績が赤字に陥ったDRAMメーカーが多い中で、エルピーダはなんとか利益を確保した。DRAMの値下がりを自ら食い止め、収益回復に向け着実にビジネスを進める坂本幸雄社長に今後の見通しを聞いた。

エルピーダメモリ 代表取締役社長 坂本幸雄氏


Q (セミコンダクタポータル編集長):坂本社長の努力もあいまって、売れ行きが鈍っていたパソコン用DRAMの価格はようやく下げ止まってきています。むしろこれから伸びそうな気配を見せています。一方で、日本経済新聞は薄型テレビ用DRAM価格が下がっていると伝えています。現状をどのようにみていますか。
A(代表取締役社長 坂本幸雄氏):パソコン用DRAMはわかりにくい状況にあります。大口のOEMからの引き合いは強いのですが、スポット買いの引き合いが弱いのです。おそらく供給がまだ多く、低級品の在庫がたくさん残っているのかなと思います。だからスポット市場が安く、OEM市場は高いのでしょう。OEM需要をサポートできるDRAMメーカーが少なくなってきていることも事実です。
 ただ、基本的には需要は多いはずです。Vista搭載機が1Gバイトから2Gバイトに移行することは時間の問題だと見ているからです。クリスマス商戦は2Gバイト機中心になると予想しています。ここで市場が回復するでしょう。この商機に向け市場は1Gビットで2Gバイトとのモジュールを作ってほしいと要求しています。価格的には、1Gビットの製品は512Mビット品の2.5倍から3倍ですので、悪くありません。
 薄型テレビに関して、従来のSDデジタル方式の受信機とフルデジタル放送受信機とでは需給状況が違います。SDデジタル式ではDRAMの余剰感がありDRAMが値下がりしていますが、フルデジタルテレビはむしろ不足気味です。(1920×1080画素の)フルハイビジョン方式となるとDRAMは足りません。フルデジタルのテレビが伸びてくるのはこれからでしょう。テレビ用DRAMは高速動作が必要で、800Mbps動作のDDR2で要求性能をなんとか満たせますが、本当はDDR3で1GbpsのDRAMが欲しいはずです。GDDR3とDDR2の関係も同じです。グラフィックスは高速動作が要求されますがGDDR3ではスピードがまだ足りません。しかし、DDR3の数量はそれほど多くは出ていません。エルピーダでもまだ月産数十万個しかDDR3を生産していません。しかし、実際にDDR3が需要が立ち上がるのは来年後半でしょう。要求としてはさらに高速のXDRを求める声もあります。おそらく2008年後半に市場が拡大するのではないでしょうか。さらに、一眼レフのデジカメにも1Gビットの需要はあります。デジカメも10%伸びるとカメラ業界は見ています。

Q: 台湾における生産拠点のRexchip社の状況は、第2四半期の決算報告で述べたとき(http://www.semiconportal.com/archive/editorial/industry/dram-1.html)と変わっていますか。
A:  基本的には好調で、決算報告のときに述べたように、Rexchipで生産するDRAM製品の歩留まりは最初から80%を超えています。広島工場のコピーエグザクトリとして設立したRexchipのラインでは、まだ問題が出ていないので、かえって心配です。Rexchipの合弁相手のPowerchip社は2006年11月から1Gビット品を流していますが、歩留まりは、1Gビット品専門のRexchipのほうが最初から高いです。
 8月22日にも会議を開きましたが、毎月PowerchipとRexchipと3社でレッスン&ラーンの会議を開き、お互いの状況を知らせあっています。
 広島工場で流している製品の50%は70nmプロセスで、300mmウェーハラインを使っています。Rexchipは初めから70nmプロセスで始めました。
 今のDRAM製品の動向として、チップ単体は1Gビット品、モジュールは2Gバイトが求められています。Rexchipの本格的な量産に入りましたので10月に市場に出てきます。時期的には市場の要求とピッタリ合っています。次の65nmプロセスは年度内に量産を始めたいと思っています。

Q: サムスン電子の工場で大規模な停電が起きました。エルピーダではどのような対策を施されていますか。
A: エルピーダではコジェネレーションによる発電機と電力会社からの高圧ラインの2種類の送電設備があります。今はコジェネが70%供給しています。高圧電力ラインは現在2本、すなわち工場内に2ヵ所に変電所がありますが、これをさらにもう1本追加します。現在の2本の高圧ラインだけでも冗長構成になっており、サムスンの工場よりも備えているつもりですが、さらに増やすのは法定点検で2本のラインを完全に止めても稼動できる状態を作っておくためです。その2本のラインのうち、1本は200mmライン用なのでいずれ閉鎖します。停電や停止による損失を考慮すると、150億円かけて多重化しておく意味があると思います。来年中ごろまでに、ラインの増強をします。

Q:  新潟沖地震が起きました。今回の地震では半導体関連工場の被害は報告がないようですが、地震対策はどのようにされていますか。
A: 新潟沖地震の教訓から、建物は耐震構造を採用しています。万が一被害にあったときの供給不安を解消するという意味では、広島工場とRexchipの関係が工場の二重化になっています。お互いの工場で災害が起きたときには、生産品を補完しあいます。
 逆にエルピーダのサプライヤに対しては2社のベンダーを使っています。セカンドソースの考えは必要です。部品メーカーはトヨタのカンバン方式では災害時の事故に対処できません。基本的にはどこかに在庫を持っていなければオンリーワン製品は危険です。キャッシュフロー重視によって評価損を生じさせないというメリットがカンバン方式ですが、キャッシュが豊富な企業なら在庫をまったく抱えないということは危険すぎます。
 コモディティ製品のDRAMは他社からも買えるため、エルピーダとしてはモバイルDRAMのバックアップをRexchipで生産するという考えです。

Q: 社長に就任されてから、生産ラインから業務意識に至るまでさまざまな改革を行われ、1年前に残された課題は営業力だといわれましたが、この1年間で営業力はどの程度強化されましたか。営業マンは代理店しか回らなかったと言われておりました。
A: 以前は1週間に1回しかユーザーを回らなかったが、今では6〜7回訪問しています。訪問先も、これまではコモディティDRAMのユーザー(パソコンなどのコンピュータメーカー)でしたが、携帯機器やデジタル家電企業の声も聞くようになってきました。世界中からの情報が入ってくるようになり、見えにくかった市場が見えるようになりました。今まではDRAMイコール、コモディティだったからユーザーの声を聞く必要がなかったのかもしれませんが。例えば、最近は画面の大きな携帯機器がモバイルDRAMを要求していることがわかりました。これからはこのような新しい市場に入り込めそうです。

Q: 最近、ドイツのQimonda社が中国のSMICに80nmプロセスでDRAMを生産してくれる契約を結びました(http://www.semiconportal.com/archive/blog/chief-editor/vs.html)。75nmプロセスでの生産も見込んでいます。この動きをどう見ますか。
A: 80nmでは競争力がありません。ただ、SMICに依頼するのは、少なくとも自ら投資して新ラインを作るほどの資金がないからです。しかし、中国でのプロセスの制約(ワッセナール条約による最先端技術の制限)は解消されつつあるのではないでしょうか。現在はメモリーは日本などと同じプロセスを使えるようです。ロジックはまだ制限があるようですが、米Intelが大連にプロセスラインを作る話があるわけですから、65nmプロセスを中国で作ることができるのは暗黙の了解があるのだと思います。そうでなければIntel製品をわざわざ130nmとか90nmでこれから作る意味はないと思います。
 トレンチDRAMを作っているQimonda社の70nm製品とエルピーダの70nmスタックセルの製品を比べると初めてスタックセルのほうが小さくできました。これまでは常にトレンチセルのほうがチップは小さくなったのですが、70nmで初めて数%程度スタックのほうが小さくできるようになりました。

Q: 後工程にも価値が出てきています。秋田エルピーダと海外工場との使い分けは。
A: 秋田はMCP(マルチチップパッケージ)やPoP(パッケージオンパッケージ)など先端的なLSIパッケージ製品を生産します。現在はまだ月産50万個程度ですが、2008年第2四半期から増えていくだろうと思います。先端パッケージを使うのはモバイルDRAMで、デジタル家電などへの応用です。海外はコモディティ製品の組み立てを行います。

Q: PCRAM(相変化メモリー)の現状を教えてください。
A: 試作品は出ているが性能がまだ十分ではありません。今年の第4四半期までに128Mビット品のサンプルを出したいと思っています。128Mビット品を出したIntelにしても512Mビット品を出したサムスンにしてもまだPCRAMは量産に至っていません。実際の量産にはまだ3〜4年かかるでしょう。

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