通信事業者からインターネット利用業者へと手を広げるNTT
NTTが光電融合デバイスだけではなく、鉄塔や道路などのインフラ点検事業に進出、自動運転の新会社やAIプラットフォームの新会社など、通信業界を核とした事業に積極的に乗り出している。通信回線を敷設する事業者から、通信回線を利用するインターネットサービス会社へと手を広げている。
図1 NTT代表取締役社長の島田明氏 筆者撮影
NTTは光電融合デバイス事業の強化により、通信からコンピュータや半導体の領域に進出してきたかと思うと、通信を利用するサービス業界にまで乗り出してきた。かつて「俺たちは通信回線を敷設しただけか?」というメッセージを筆者は聞いたことがある。通信回線を利用してCSP(クラウドサービスプロバイダ)をはじめとするインターネットサービス業者がサービスで稼いでいたことへの悔しい想いを持っていた。通信業者は通信回線を張り巡らせ、世界中との通信によるインターネットを可能にしてきたという自負があったものの、売り上げがCSPよりも劣り、まるでインターネットのインフラ屋のような気持ちになっていた。
売上はCSPやハイパースケーラの方がずっと大きく、しかも彼らは成長してきた。NTTは、そのような想いを一掃するため、光電融合デバイスでしっかりした技術を持ち、さらにサービスでもこれまでのインフラ事業をしっかりした柱に育てようとしている。
例えば光電融合デバイスは、これまで幹線の基地局やコンピュータ同士をつなぐために用いられてきた。それらを光ファイバで結んできたように、CSPたちも光ファイバ敷設船を自社で持つなどして世界中のコンピュータをつなげるように通信事業へ乗り出してきた。CSPは、データセンター同士を光ファイバで接続してきており、世界中のコンピュータを仮想化している。
さらに、データセンター内のコンピュータラック間を光ファイバでつなぐだけではなく、コンピュータラック内のブレードサーバー同士をつなぐために光ファイバを用いようとしている、さらにその先はサーバー内の基板同士を光ファイバでつなぐ。光電融合デバイスはそのための光ファイバを使った光電変換/電光変換の役割を果たす。さらに、光導波路で光の干渉や位相シフトなどで導波路の経路を利用して写像変換により、ニューラルネットワーク演算を光処理だけでできるようにした実験を産業技術総合研究所が行っている(参考資料1)。
「光電融合デバイスは半導体メーカーの協力なしでは達成できない」。こう語るのはNTT代表取締役社長の島田明氏(図1)だ。その事業会社NTTイノベーティブデバイスの社長である塚野英博氏は、半導体メーカーとの協力を模索する一方、自らもデバイスを作っている。光ファイバは光軸合わせがディスクリートでは難しいため、ソケットに挿入するようなタイプのパッケージも試作している。
さらにNTTの事業サービスも拡大している。例えば、AIプラットフォームのサービス事業としてNTT AI-CIX社を2024年8月に設立した。NTTが考えるAIプラットフォームとは以下のような事業形態である。AIは基本的には専用のシステムである。ただし、実際に運用する上で、一つのAIだけではなく、複数のAIをしかも手順通りに行うことで一つのシステムをAI化できる。そこで、AI1、AI2、AI3、、、と専業化のAIを作り、それらをエージェントAIがつなぐ、というシステムを考え、これらをAIプラットフォームとして扱うのである。
こういったAIプラットフォームを顧客に提供する訳だが、その前に各AI部品を作るために顧客の業務形態をコンサルティングでヒアリングしておく。その顧客と相談しながらシステムをいくつかの手順に分解し、それぞれの業務の効率をあげるためのAI部品を作っていく。NTTのAIプラットフォームは、このような手順を組み入れ、どのような顧客にも使えるような仕組みを構築することが目標である。
また自動運転車のサービスを提供するNTTモビリティが2025年12月に設立された。これは、自動運転車を提供し、走らせ、そして運行を支援する、というサービス会社となる。定時・定路線の自動運転バスは、すでに実証実験が日本各地で行われており、オンデマンドやタクシーなども対象としている。自動運転レベル3では、運転手なしで運行するが、遠隔でモニターすることになっているため、実用上は問題なさそうだ。
もっと泥臭い事業もある。例えば、NTT西日本を筆頭株主とするジャパン・インフラ・ウェイマークは、元々鉄塔の点検を行っていた会社である。道路や鉄塔、トンネルなどの点検すべき施設が老朽化するものの、担い手が不足してきたため、テクノロジーを活用して人手不足の解消を目指す。橋梁や暗渠、上下水道、鉄塔、水道設備などのインフラ点検に空飛ぶドローンやボート型ドローンを活用する。ボート型水上ドローンにはソナーを搭載し水中の物体を検知する。
支援サービスとしてドローンの他、現場のアプリの提供やAI解析、新型機体の開発、機体のレンタルサービス、パイロット育成サービスなどを提供する。各自治体や建設コンサルティング会社などが顧客あるいはパートナーとなる。
NTTはこういったグループ会社を通じ、サービスを提供していくわけだが、NTTの島田社長は年初めの役員懇談会で「光電融合デバイスの販売開始、AIファーストの会社にする、自動運転サービスで設立したNTTモビリティのスタート」を2026年の大きな事業とすると述べている。
参考資料
1. 「世界初シリコン光集積回路のみでニューラルネットワーク演算に成功」、産総研マガジン、(2023/09/13)


