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半導体で盛り上がる九州、シリコンシーベルト2.0を標榜

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TSMCが熊本に工場を建設中で、九州地区がにわかに半導体ブームで熱く盛り上がっている(図1)。「九州半導体人材育成等コンソーシアム」の人材育成ワーキンググループ座長の安浦寛人氏は、再び九州半導体を盛り上げるために「シリコンシーベルト2.0」を提唱し始めた。これは、半導体の重要性や魅力ある産業であることを発信するための標語である。

九州の半導体/製造装置の生産の推移 / 九州経済産業局

図1 九州における半導体生産額(左)と半導体製造装置の生産額(右) 半導体は14年ぶりに2022年は9300億円を上回り、装置生産額は4930億円となった 出典:九州経済産業局


「九州半導体人材育成等コンソーシアム」の人材育成ワーキンググループ座長の安浦寛人氏は、かつて自身が九州大学副学長の時に「シリコンシーベルト」を提唱していた。これは九州から韓国、台湾。中国沿岸部、シンガポール、インドに至る半導体の利用・設計・製造の世界的なサプライチェーンを作ろうというもの。最近の半導体産業の盛り上がりを推し進め、日本から、かつて2002年から2011年まで標榜していたシリコンシーベルト構想を見直し2.0と表現している。

「九州半導体人材育成等コンソーシアム」は、経済産業省傘下の九州経済産業局と九州半導体・エレクトロニクスイノベーション協議会が事務局となって、2022年3月に設立された。参加している団体は徐々に増加していき、今では大学などのアカデミア14校と民間企業34社、さらに取りまとめる行政機関13官庁と協力団体15からなる。全部で76団体にもなる(図2)。

2023年3月30日現在の九州半導体人材育成等コンソーシアム構成機関一覧

図2 九州半導体人材育成等コンソーシアムの構成機関 出典:九州半導体人材育成等コンソーシアム


コンソーシアムの目的は、半導体人材の育成と確保、半導体大手企業とユーザー企業とのマッチング、海外との産業交流、の3本柱だ。特に海外との交流は、台湾や米国、欧州とのアライアンス形成を目的とし新しい関係を構築する。2022年度には台湾の国立陽明交通大学や台湾大学との交流を始めている。

九州はかつてシリコンアイランドと呼ばれていた。九州と面積がほぼ等しい台湾と比べてみると、人口は台湾が2倍多く、GDPも2倍だが、半導体生産額は10倍以上大きい。さらに半導体関連産業の生産額も10倍近く大きい。しかし、1990年ごろは半導体も半導体関連産業の生産額も九州の方が10倍以上大きかったと安浦氏は述べる。この差は人材育成の差だという。

台湾と言えば、TSMCやUMCなどのファウンドリが際立っているが、実は半導体設計を手掛けるファブレス半導体やデザインハウスは238社もある。むしろファウンドリを含む半導体プロセスのメーカーは15社に留まる(図3)。


台湾の半導体関連産業 / 台湾半導体産業協会および九州半導体人材育成等コンソーシアム

図3 台湾の半導体産業エコシステム 出典:台湾半導体産業協会および九州半導体人材育成等コンソーシアム


ファウンドリがいくらあっても、設計しフォトマスクまで作らなければファウンドリへ渡せない。しかも超高集積LSIは設計だけで1〜2年はかかる。微細になればなるほどプロセスだけではなく設計も複雑になる。台湾の強みは設計でもある。世界の半導体トップ10位以内に入るMediaTekはもともとUMCの設計部門として出発したが、微細加工が必要な携帯電話向けモデムやアプリケーションプロセッサのチップはライバルでもあったTSMCへ依頼している。UMCとはもはや親子関係がないからだ。

九州半導体人材育成等コンソーシアムは、今年の2月に台湾の台湾大学と陽明交通大学、TSRI(実験研究院台湾半導体研究中心)、ITRI(工業技術研究院)などを訪問、大学との交流を深めた。台湾の大学への留学やダブルディグリーなど台湾の教育システムを活用できるように国際連携を作り上げた(図4)。


Top人材の育成のための大学強化と国際連携 / 九州半導体人材育成等コンソーシアム

図4 台湾の大学と九州の大学との国際連携 出典:九州半導体人材育成等コンソーシアム


今や台湾は半導体の先生となった。日本は台湾から謙虚に学ぶことが日本の半導体復活への早道でもある。実際の寸法が14/15nmでも5nm/4nmプロセスと称しているTSMCをはじめとする先進ファウンドリの技術の実態(すなわちエリアスケーリングあるいはDTCO: Design Technology Co-Optimization)を学び、3nmや2nm相当のプロセスを習熟することは日本復活には欠かせない。

参考資料
1. 「半導体人材育成、産官学で活発化」、セミコンポータル (2023/04/10)

(2023/04/11)

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