IBM、z16のロードマップを発表、ラピダスの顧客になりうる可能性を示唆
IBMは2nmプロセス相当のGAA(Gate All Around)トランジスタを2年前に開発しており、ラピダス社にその技術をライセンス提供している。IBMのメインフレームには現在7nmプロセスノードのTelumプロセッサが使われており、このプロセッサの進化がメインフレームの進化を支えている。ラピダス社はIBMを顧客として取り込めるだろうか。
IBMはいまだにメインフレームコンピュータを開発し続けており、2030年に向けても提供する。コンピュータとしてメインフレームは堅牢性、可溶性、信頼性に優れていることを特長としており、IBMはメインフレームをこれからも継続するという意思を見せている。20年代後半には3nmプロセスノードのTelumプロセッサを搭載するというロードマップを示した(図1)。
図1 IBMメインフレームとプロセッサのロードマップ 出典: IBM
昨年IBMはメインフレームコンピュータIBM z16のハイエンドとなるマルチフレームモデルを発表したが、今回はミッドレンジとなるシングルフレームと、ストレージや外部周辺機能を追加できるラックマウントモデルも追加した(図2)。これによって、様々なユーザーを取り込もうという戦略だ。
図2 IBMは昨年発表したマルチフレームから今年はシングルフレームとラックマウントモデルを揃えた 出典:IBM
IBMはさらに、昨年IBM LinuxONE Emperor 4マルチフレームモデルを発表したが、そのミッドレンジに当たるIBM LinuxONE Rockhopper 4のシングルフレームとラックマウントのシステムも発表した。
いずれのコンピュータでも64ビットのTelumマルチコアプロセッサを搭載しており、7nmプロセスノードを使ったSoCであり、1チップに8コアを集積している。2チップを搭載したデュアルチップモジュールをコンピュータボードに搭載している。最大4個のモジュールをコンピュータに搭載できるため、コンピュータシステム1台に合計64コアを搭載している形になる。このSoCには、CPUの他に、暗号化と圧縮のアクセラレータと推論用のAIアクセラレータも集積している。さらに量子暗号システムにも耐性を持つ強力なセキュリティ回路を集積している。動作周波数は4.6GHzと高速。
IBMのメインフレームは、図1で示すようにこれからもプロセッサの改良とAI技術などの搭載でさらに進化を続けるという。AIは特にコンピュータが障害を受ける可能性の高い場合にその兆候を検出して、ダウンしないようにコンピュータを守るために使われる。SoCプロセッサは、これからも微細なプロセスノードで高集積化を進めていく。2020年代後半にはラピダスが2nmプロセスを立ち上げることができれば、IBMのファンドリの候補になりうる、とIBMは述べている。もちろん、それによる製品イメージやファウンドリは、まだ決まっていない。IBMを顧客に取り込めるかどうかはラピダス次第だ。ラピダスが設計を充実させ、IBMの論理設計からマスク出力までサポートできることがカギを握るだろう。