セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

ハイエンドからローエンドまで、宇宙用途まで、用途を拡大するSiFive

|

2023年はフリーのIPコアのRISC-Vが本格的に立ち上がりそうだ。利用する市場が開けつつあり、ソフトウエア開発のエコシステムが拡大している。25年には624億個のLSIチップにCPUコアとして集積されるとの見通しがある。22年暮れに来日した米カリフォルニア大学バークレイ校のKrste Asanovic教授(図1)は、「RISC-Vは性能などが少し良い程度ではなく、けた違いに良い」という。

2022年末に来日した際のカリフォルニア大学バークレイ校のKrste Asanovic教授

図1 RISC-Vコア発明者の一人カリフォルニア大学バークレイ校のKrste Asanovic教授


このためRISC-Vの用途は急速に広がっており、その市場拡大速度はArmの3倍も速い、とSiFiveジャパンの代表取締役社長のSam Rogan氏は述べる(図2)。すでに100社以上の企業と取引があり、300件以上のデザインインを始めているという。RISC-V市場全体としては、2021年時点で100億個のRISC-Vコアを搭載したチップが出荷されており、2025年には624億個に達すると予想されている。


Krste Asanovic教授とサイファイブジャパンRogan代表取締役社長

図2 サイファイブジャパンのSam Rogan代表取締役社長(右)


RISC-Vは米カリフォルニア大学バークレイ校が開発したCPUコア。「今や世界標準となっており、オープンスタンダードである。ISA(命令セットアキテクチャ)がクリーンであることが特長となっており、拡張命令を自由に誰でも設計できる」とAsanovic氏は言う。同氏はUCバークレイ校の教授だけではなく、RISC-V Internationalの会長でもあり、SiFive社のCTO(技術担当責任者)でもある。

RISC-Vコアは誰でも改良や手を加えられる「民主的な」CPUコアであるが、基本的なコアだけでは実際に使うCPU性能としては不十分。パイプライン段数やOut-of-OrderなどCPUの性能を上げる技術、そのための命令の追加なども必要である。このため、SiFiveはそのままSoCに使えるCPUコアIPとして完成させた。このためSiFiveはRISC-VのCPUコアをライセンスし、量産時にロイヤルティ料をいただくビジネスモデルであるが、Armのライセンス料やロイヤルティ料と比べると、「ずっと安い」(Rogan氏)という。

RISC-Vコアを使う分野は、ウェアラブル応用のエッジからスーパーコンピュータのようなハイエンドまで、そして航空宇宙用途のような高信頼性応用まで、幅広くある。宇宙用は20年間使われることを前提にしなければならないが、Asanovic氏は「最近、Microchip社と共にNASAと契約し宇宙向けのCPUとして使う」と述べている。その理由は、現在のコンピュータと比べ、RISC-Vは100倍もパワフルだからだという。しかもオープンスタンダードなので、ユーザー企業が買収され事業継続を打ち切られるリスクがないというメリットがある。そのようなプレッシャー(Gravity)がない、とAsanovic氏は表現する。

事例として、ルネサスエレクトロニクスが自動車向けのCPUとしてSiFiveのパートナーとなった。機能安全規格も満たしている。さらに、ハイエンド用途ではGoogleが大規模なデータセンター向けにAIアクセラレータとして使う。また、GoogleのAndroidをサポートすることを2022年末のRISC-V Summitで公表している。Qualcommは自社の中核となるSoCであるSnapdragonに載せてウェアラブルとコンピュータ向けにSiFive社のP470を採用する。また、SamsungもシステムLSI事業部門がモバイルやウェアラブルなどの民生機器向けにSiFiveのRISC-Vコアを使うという。


Strong ecosystems are essentia / SiFivel

図3 多くのソフトウエア企業とエコシステムを構築している 出典:SiFive


多数のユーザーを獲得するために、多数のソフトウエア企業と共に強力なエコシステムを構築している(図3)。マルチコア向けのソフトで定評のあるGreen-HillsやIAR Systems、リアルタイムOSのWind Riverだけではなく、EDAのトップスリーである、SynopsysやCadence、Siemens EDAなども参加している。

さらに最近では、Intelのファウンドリ部門とも提携し、SiFiveの製品HiFive Pro P550を集積したSoCの開発ボードを提示している。このボードにはOut-of-Orderを実行でき、DRAMやPCIeインターフェイスも搭載しており、そのIPコアは4nmプロセス相当のIntel 4プロセスで製造され、2023年には入手できるようになるという。SiFiveは大学発ベンチャーであるからこそ、米Rice Universityとも提携を交わし、日本の大学とのコラボレーションにも期待している。

参考資料
1. 「ライセンスフリーのRISC-Vコアの老舗SiFiveが日本オフィス設立へ」、セミコンポータル (2022/08/10)

(2023/01/12)

月別アーカイブ