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ドイツBosch、「自動車産業のリーダーだから半導体を生産する!」

Boschの300mmウェーハのドレスデン工場にはEUとドイツ政府、ザクセン地方政府の3者の支援があったことを明らかにした。「イノベーションを達成させるためには投資が必要」と同社会長のStefan Hartung氏は述べる。2021年は売り上げの8%に当たる61億ユーロ、22年は70億ユーロを研究開発に投資する。Boschは新半導体時代に向けた投資戦略を明らかにした。

図1 Bosch会長のStefan Hartung氏 出典:Bosch Tech Day 2022

図1 Bosch会長のStefan Hartung氏 出典:Bosch Tech Day 2022


自動車産業は今後、これまで以上に半導体コンテンツを増やしていく。「Boschは自動車産業のリーダー企業だから半導体を生産する。これまでもロイトリンゲン市(シュトゥットガルトの南30km)に10年間、150〜200mmウェーハ工場でMEMSデバイスなどを製造してきた。昨年、ドレスデンに300mmウェーハ工場を稼働させた(参考資料1)」とHartung会長は述べている。

欧州は米国と同様、CHIP Act法案を通過させ、現在、世界における半導体シェアは日本と同じ10%しかないが、これを2030年までに20%に上げていくという目標を掲げている。ドレスデンの新工場にはこれまで最高額の10億ユーロ(約1400億円)を投資した。これはEC(欧州委員会)とドイツ連邦政府、ザクセン地方政府の支援によって可能になった。この昨年のプログラムはIPCEI(Important Project of Common European Interest)1と呼ばれている。この新工場では350名の社員が働いており、2022年末には400名に増やす計画だ。社員の2/3がエンジニアとコンピュータサイエンティストだという。しかもこの工場だけで20ヵ国の人たちが働きに来ており、文化の多様性が特長になっている。

今回、Boschは30億ユーロを2026年までに投資する、と発表したが、これはIPCEI2プロジェクトの支援を受けて半導体技術に投資するもの。この投資によって、ロイトリンゲン工場とドレスデン工場をさらに拡張する。中でもドレスデン工場には2023年までに現在のクリーンルームの1/3にあたる3000平方メートルのクリーンルームを追加する。


Bosch Automotive Semiconductors / Bosch Tech Day 2022

図2 Boschの新開発レーダーセンサSoCにはAI解析機能も付けている 出典:Bosch Tech Day 2022


今回の投資によって、自動車技術の三つの分野を広げていく。一つは安全性として、自動運転技術のセンサとなる360度レーダーセンサがある(図2)。これは交通事故の9割が人間のミスによるものという従来のデータに基づき、運転支援技術を開発する。二つ目はコネクテッドだ。メタバースなどで使うスマートグラス向けプロジェクションモジュール用のMEMSセンサが具体例の一つ。三つ目はサステナブルで、電気自動車(EV)用にSiCやGaNなど電力効率の高いパワー半導体を開発していく。現在EV化は全自動車の6%にすぎないが、その市場は年率30%で伸びていくと予想されており、SiCに力を入れる。さらにGaNも耐圧1200Vの製品開発に取り組んでいるという。

Boschは今後10年でクルマ用の半導体チップの出荷金額は、1台当たり200ユーロから800ユーロと4倍になると見ており、半導体チップの開発と量産設備に投資をしていく。

Hartung会長は「半導体開発の政治的な決断は重要だが、社会に受け入れられることも重要」という認識を示し、若いエンジニアを育てるためのSTEM(Science, Technology, Engineering, Mathematics:科学、技術、生産技術、数学)教育に力を入れる。具体的には「技術をオープンにしてSTEM教育を進めれば将来、実を結ぶ」と同会長は述べている。

半導体技術をしっかり理解させるために半導体製造工程を教えるだけでは応用が利かない人間になってしまう。半導体の原理をきちんと教えなければ、シリコンだけではなく化合物半導体や量子力学もきちんと身に付かなくなる。そうなれば今後の量子コンピュータにも対応できなくなる。また、これからのチップにはセキュリティの搭載が必須だが、暗号化技術には数学の知識がいる。つまり、STEM教育をしっかり身に付けさせることでこそ、半導体を中心にこれからのさまざまな技術に対応できるようになる。

参考資料
1. 「Boschの新工場にはAIoT、AR、ローカル5G等新技術が満載」、セミコンポータル (2021/06/22)

(2022/07/21)

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