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絶好調AMDの秘策は、サプライチェーンの強化だった

主要半導体メーカーが2021年第4四半期(10〜12月期)の決算を発表した。それによると、AMDが前年同期比49%増、Samsungは同43%増と好調な企業が多い。半導体企業によるが、一般に第4四半期は季節的に好調であり、次の翌年第1四半期には売上額が落ちるのが通例であるが、各社の第1四半期見通しは第4四半期並みの企業が多い。

図1 最近発表した2021年10〜12月期の各社の決算 出典:セミコンポータルのまとめ

図1 最近発表した2021年10〜12月期の各社の決算 出典:セミコンポータルのまとめ


Lisa Sue CEOが率いるAMDは、2021年第4四半期の売上額が48億2600万ドル、営業利益が12億2300万ドルで利益率は25%となった(GAAPベース)。2021年全体では、売上額は前年比68%アップの164億ドル(約1兆8700億円)、営業利益は36億4800万ドルで営業利益率は22%となった。Lisa Sue CEOは、好調な業績を獲得できた最大の理由をサプライチェーンの充実だったと語っている。ファブレス半導体メーカーのAMDが顧客の要求を満たすように、ファウンドリとOSATの確保に4〜5四半期に渡って全力を注いできたというのだ。つまり十分な量を生産できるようにファウンドリとOSATをサポートしてきたことが、結果的に大きな成長につながったと見ている。2022年第1四半期の見通しも売上額は50億ドル±1億ドルと今期実績よりも上回りそうだ。

Samsung半導体の第4四半期売上額は、前年同期比43%増の26.01兆ウォン(1ウォンは0.096円)となり、スマートフォンビジネスも含めた全社売上額は同24%増の76.57兆ウォンとなった。営業利益で見ると、全社の13.87兆ウォンの内、実に63.7%にあたる8.84兆ウォンを半導体部門が稼ぎ出している。また2021年を通した半導体部門の売上額は前年比29%増の94.16兆ウォン(内メモリが31%増の72.6兆ウォン)、営業利益は29.2兆ウォンと利益率31%にも達する。

2022年に関して同社はサプライチェーンのリスクはあるものの、新CPUの採用やITインフラ投資の増強によるサーバーの需要や、5Gスマホの需要でメモリは好調になるだろうと見ている。そのためにEUVを使った微細なDRAMとしてDDR5やLPDDR5などに向けたインターフェース需要拡大を期待している。またファウンドリビジネスとしては、量産最初のGAA(ゲートオールアラウンド)製品がグローバルな顧客に向けて拡大していくという。

2月2日に発表したQualcommの10〜12月期(2022年度第1四半期)は、売上額が前年同期比30%増の107億ドル、純利益がGAAPベースで33.99億ドルと好調だ。Qualcommには特許料ビジネス部門とファブレス半導体部門があるが、ファブレス半導体部門の売上額は同35%増の88.47億ドルとさらに成長率が高い。同社半導体ビジネスの内訳を見ると、端末向け売上額が前年同期比42%増の59.83億ドル、IoT向け同41%増の14.76億ドル、RFフロントエンドが同7%増の11.32億ドル、自動車向けは同21%増の2.56億ドルとなっている。次の四半期である2022年1〜3月期の予想は、全社売上額が102〜110億ドルと今期並みで2022年も良さそうだ。

一般に、10〜12月期の売上額は大きく、翌1〜3月期の売上額は10〜20%下がるという季節要因がある。クリスマス商戦が過ぎてしまうからだ。これに対して好調なAMDやQualcommは下がらないという見通しを得ているため、彼らは2022年もプラス成長で推移することは間違いなさそうだ。

日本勢の1社としてソニーも2月2日に10〜12月期の決算を発表したが、全社売上額は前年同期比13%増の3兆313億円、営業利益は4652億円と2桁の営業利益率を確保した。半導体部門であるイメージング&センシング・ソリューション部門の売上額は前年同期比21.6%増の3248億円、営業利益647億円と良好だが、実は手放しで喜べない。21年度第1〜第3四半期の合計売上額では前年同期比5.2%増の8211億円にとどまっているからだ。つまり、10〜12月期は大口顧客であるAppleのiPhone 13が発売されたことで、一緒に伸びたが、それ以外の四半期はほとんど成長していないことになる。

2021年10月時点では、半導体の2021年度売上額を1兆1000億円と見込んでいたが、今回その額を1兆700億円と下方修正した。この金額だと前年度比5.7%成長と極めて低成長になる。2021年の世界半導体は平均25%程度成長していることと対照的だ。これは、第2の大口顧客であった華為への出荷がほとんど止まったからだ。逆に言えば、華為に代わって大きく成長した小米やOppo、Vivoなどのスマホに食い込めなかった、ということになる。ソニー半導体としては、小米やOppo、Vivoなどの獲得にもっと力を注ぐための施策を作り実行することが問われている。ソニーが中国スマホを攻略できれば、もっと大きく成長できることになる。同時に、クルマ用途にも力を入れて開拓する必要がある。実は全く同様な状況がキオクシアにも当てはまる。

(2022/02/08)
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