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メタバースに欠かせない半導体が明確になりつつある

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メタバース(Meta-verse)という言葉に見合った半導体開発が始まった。メタとは日本語の「超」、バースは宇宙(Universe)から取った言葉であり、メタバースはその合成語である。メタバースは、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)などのグラフィックスを用いてもっと没入(immersive)体験ができる次世代のインターネット応用だと言われている。メタバース用半導体とは何か。

フランスViva Technologyに出演したMetaのMark Zuckerberg氏

図1 フランスのViva Technologyのオンラインビデオに出演したMeta(旧Facebook)のMark Zuckerberg氏


「メタバースの最大の特長はテレポーティング機能だ」と社名をFacebookからMetaに変えた同社CEOのMark Zuckerberg氏は、Viva Technologyが主催するビデオインタビューの中で述べている(図1)。テレポーティングとは場所を瞬間移動するという意味。現実には人間が瞬間移動することができないため、アバターがその代わりを果たしてくれるという考え方だ。

ビデオ会議をVRで見せることで、参加者をアバターで表現する。Zuckerberg氏は、テレビに代わる新しい消費者の体験(Consumer experience)になると期待している。「しかもAR/VRはワイヤレスでなくてはならない」とZuckerberg氏は主張する。このためには、5Gのような高速通信と、グラフィックス演算機能がメタバースを実現する半導体には求められる。

技術的には、デジタルホログラムのように演算専用の半導体プロセッサで実現する必要があり、最近Intelはグラフィックスプロセッサを開発していることを明らかにしている。このGPUは単なる機械学習(AI)を演算するためのデバイスではなく、グラフィックスを高速に描くための並列MAC演算器(MAC:Multiply and Accumulation)である。グラフィックス機能は従来のゲーム機向けのレンダリング技術がAR/VRにもそのまま応用できるため、GPUはAI向けにも、メタバースAR/VR向けにも演算できるチップとなる。

Intelは、開発中のGPUチップの演算能力は現在のチップの1000倍も高いため、メタバースの世界を駆動するのに威力を発揮できるとしている。


VRを利用したメタバースの世界の一例 / Qualcomm

図2 VRを利用したメタバースの世界の一例 世界のパートナーと一共に開発に取り組むことができる 出典:Qualcomm


メタバースの応用をイメージしているのはQualcomm社も同様(図2)。最新のArm V9アーキテクチャのCPUコアを集積、4nmノードで製造された同社のSnapdragon 8は明らかにメタバースの世界を意識し、5G高速通信とGPUコアを集積した製品。

こういったメタバースを利用する開発ツールをNvidiaが提案しており、彼らはOmniverseという名称のソフトウエア開発プラットフォームを開発している(参考資料1)。このプラットフォームは、クルマや建物を3D-CADで設計したモデルにシミュレーションにより熱や電磁波など目に見えない物理量を可視化するのに使われている。この可視化した物量量の分布をVRなどで見る訳だが、データ速度が速くレイテンシが小さい5Gなら、世界中の事業所でこのモデルを共有しながら製品開発できる。

MetaはこれからのVRデバイスはスマートグラスのような形になるとして、すでに眼鏡メーカーのRay-Banと一緒に開発しているという。製造担当がRay-Banになる。

参考資料
1. 「Nvidiaの最新技術会議、ハードとソフトのセット応用拡張戦略が明確に」、セミコンポータル (2021/11/16)

(2021/12/17)

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