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ルネサス那珂工場での生産が再開、5月中には火災前の生産能力へ

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ルネサスエレクトロニクスが那珂工場において4月17日から半導体の生産を再開した。まだ10%弱の生産能力しかないが、今週中(4月24日)までに30%に回復させ、4月末には50%まで回復、そして5月中には100%の生産能力まで復帰させることを発表した。

生産再開見通し

図1 ルネサスの描く生産再開見通しはほぼ予定通り 出典:ルネサスエレクトロニクス


3月19日に火災事故を起こしたルネサスは、復旧を超が付くくらいのスピードで回復を急ぎ、柴田英利CEOは、1カ月以内に生産再開にこぎ着けたいと述べていた。しかしほとんどのメディアは、柴田氏のコメントを信じずに、アナリストなどの見解を引用し2〜3ヵ月は無理だろうと結論付けていた。

4月19日にオンライン会見を開いた柴田氏は、開口一番、「海外企業も含めサプライヤーやユーザーなどあらゆるパートナーに助けられて、奇跡的に生産再開にこぎ着けてやってきました。本当に、本当にありがとうございます」と、感謝の言葉を述べた。クリーンルーム内で火事を起こした直後の焼けただれた凄惨な様子だったが、日本のモノづくりの総力を結集してここまで奇跡的にこぎ着けられたことに感謝を示した。

回復のスピードはほぼ予定通りだという。図1に示すように、前回(3月30日)発表した時のスケジュール(参考資料1)は赤い線で示し、今回の見通しを青い線で示すように、少し遅れ気味になるだろうと予想している。しかし、代替生産できる可能性が前回は90%だったが、今回98%に高まった。この二つの見通しを相殺することによって、予定通りという見通しを得ている。


CUめっき装置 火災対策

図2 火災事故を起こしたCuメッキ装置への対策 別のタイプのメッキ装置は電源配線系が異なっており火災の心配はないという 出典:ルネサスエレクトロニクス


また、火災前には6台あったCuメッキ装置は2台が焼損し、4台は正常に運転している。残った4台は焼損したメッキ装置とは異なる電源配線構造を用いており(図2)、同様の原因による発火の可能性はないと見ている。今回のタイプの装置の電源配線構造を改修し、さらに煙検知器2ヵ所と過熱防止センサを6ヵ所に設けたセンサから異常を検知すると自動的にCO2消火装置が動作するようにする。今はまだ手動式だが、6月までに自動式に改修する予定だ。

現在のクリーンルーム内(図3)では、大丈夫と思われたフィルタがススやパーティクルで目詰まりを起こしていたため、全て交換する予定にしている。ただし、フィルタの入手が遅れたため、国内外を含め可能な所から交換していった。ただし、パーティクルがすっかり減少するまでに時間がかかっているという。


現在の様子

図3 復旧中のクリーンルーム 出典:ルネサスエレクトロニクス


交換した製造装置は、焼損したものよりもスループットや性能が向上しているため、火災前と全く同じ台数ではなく、少し減らした台数でも、生産能力を元の状態に戻せるとしている。火災以前の状態に戻るには5月中になると見ている。

天井に設置しているOHT(Overhead Hoist Transport:天井走行式無人搬送車)のレールは、80%まで復旧したという。クリーンルーム全体の外周のレールは完成しているが、火災元のメッキ装置の近くは、まだレールが途切れている(図4)。この近くでは、OHTそのものが焼損したものがあり、レール、さらにストッカーを発注し、納期などを交渉している所だという。


現在の様子

図4 天井の搬送系はレールが80%まで復旧した 出典:ルネサスエレクトロニクス


柴田氏は、ファブライトの考えをこれまで同様、変えずに行くとしている。ただし、ファブのレジリエンス(Resilience:災害やトラブルに見舞われても素早く回復する能力)を高めるための投資は続けていくと述べている。そのための追加コストについてもユーザーが理解し、ある程度許容する雰囲気が出てきたため、ファブへの投資は継続していくとしている。

参考資料
1. ルネサスの火災事故の生産開始は1カ月後、ロードマップ示す (2021/03/31)

(2021/04/19)

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