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ルネサスの火災事故の生産開始は1カ月後、ロードマップ示す

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ルネサスエレクトロニクスは、那珂工場での火災事故からの復旧状況について、3月30日に記者とアナリストに向け明らかにした。火災発生から発表の第1報、2報、最初の会見に続く第2回の会見である。事故への対応が極めて速く、しかも透明性が高い。これまでの日本企業にはない、隠さず話す姿勢が歓迎されている。

図1 焼けただれた装置やクリーンルームの板材は撤去された 出典:ルネサスエレクトロニクス会見でのスクリーンショットから

図1 焼けただれた装置やクリーンルームの板材は撤去された 出典:ルネサスエレクトロニクス会見でのスクリーンショットから


まず、焼けただれていた装置や天井は撤去され、N3棟1階天井の構造材取替工事が29日に終了、フィルタのような部材の手配とススの洗浄は順調に進んでいる。火災時に作業中のウェーハの3/4が無事で、使用できることがわかったという。そして1階にある製造装置全体の90%の動作確認を終えた。柴田英利CEOは、うまくいけば1カ月以内に再開できる可能性は大きくなった、と期待している。

最初の会見があった3月21日以来、装置メーカーによる現場検証と、装置メーカー派遣の外部専門家による詳細な現場検証を行った。25日には消防が現場を再訪、詳細検査を行った。焼けただれた装置やクリーンルームの床材などの撤去はその後だが、すでに復旧に向けた作業が始まっている(図1)。

ルネサスの会見を聞いていて、これまでの報道との違和感の原因がわかった。柴田CEOが生産再開時期を1カ月で始めたい、と言っているのに対して、多くのメディアはIC製品が出荷される時期を言っているのではないかという違いだ。生産が開始されても実際にIC製品が出荷される時期は4〜5カ月先になる。これまでの仕掛品を全て処理しても、2〜3カ月先になる。ただし工場での再開は1カ月以内から始まる、ということである。

そこで、今回は被害を受け修理や代替などが必要な製造装置をリストアップした(図2)。ここで示した製造装置からわかることは、Cu(銅)配線に必要なプロセスであり、BEOL(プロセスの配線工程)であることだ。この内、オレンジ色で示した2台のメッキ装置が火元とみられ、6月以降にならないと使えない。その次に時間がかかりそうなのは黄色で示した5月中の手配、そして緑色が4月中に調達できる見通しの装置である。バンプ工程や多層配線工程で使われる装置である。


製造装置調達

図2 被害を受けたことがわかった製造装置は23台だった 出典:ルネサスエレクトロニクス会見でのスクリーンショットから


交換ないし修理が必要な装置が当初見積もりの11台から23台に増えたのは、後で製造装置の専門家に見てもらって判明した。特に塩素ガスが発生したことによる腐食が多かったとしている。このため塩素濃度は必ず測定しながら復旧作業をしている。化学フィルタや有機フィルタを追加したという。これからススの清掃だけではなく、有機物汚染や塩素濃度を確認しながら生産再開に向けていく。

ルネサスのN3棟の1階がダメージを受けた生産ラインであり、2階は正常に稼働するラインであるが、1階ではBEOL(Back-end of Line)のバンプ形成や多層配線だけが行われているわけではないという。一部のリソグラフィ装置もあり、2階と1階をウェーハが行き来する構成になっている。このため、FEOL(Front-end of Line:CMOSトランジスタや素子分離などの回路のプロセス工程)だけを先に優先して終わらせることはできない。

そして、生産開始のスケジュールに関しても、図3に示すような計画を述べた。火災事故が3月19日に起きてから30日間は、今ある仕掛品で組み立てテスト、仕掛ウェーハでのテストまでできるが、その後30日間は生産ゼロ状態になる。しかし30日後に生産が開始される。FEOLの生産を40日かけて生産し、その後20日間かけてBEOL工程でバンプや多層配線を形成する。その後のウェーハテスト、組み立てテストへと進み、稼働は100%回復へ進むと同時に出荷されていく。その後は新規ウェーハ投入となる。


生産再開見通し

図3 生産再開の計画見通し 出典:ルネサスエレクトロニクス会見でのスクリーンショットから


発火したメッキ装置では、陽極からの配線の一部に過電流が流れ、火花が飛び散ったことが原因だとされているが、回路ブレーカーはもちろん備えているものの、陽極配線においては過電流保護回路を入れていなかったという。難燃性の樹脂も使われていなかったようだ。

(2021/03/31)

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