Micron、NANDフラッシュの工場を拡張、セレモニー開催
メモリメーカー第3位のMicron Technologyが3D-NANDフラッシュの最大の工場Fab 10Aの建屋をシンガポールに完成させた。8月14日のセレモニーには総勢500名の顧客やサプライヤー、代理店、大学や政府関係者が集まった(図1)。「この工場はシンガポール最大の工場となる」として、Smart Manufacturingをはじめとするハイテク技術をフル活用する。
図1 MicronがシンガポールでNANDフラッシュの新工場拡張を祝う式典を開催
Micron CEOのSanjay Mehrotra氏(図2)は、Singapore工場はMicronの中でNANDフラッシュの最大の工場となる、と述べた。MicronはNANDフラッシュの将来を見据えており、今は不況時であるが、NANDフラッシュのようなストレージデバイスは、AIやIoT、5G、自律化などに向けたデータ社会でデータ保存の主要デバイスとなる。Micronはデータを指向して強い企業であり、強くなっている企業である、とMehrotra氏は何度も強調した。
図2 Micron Technology CEOのSanjay Mehrotra氏
シンガポールではEDB(経済発展局)が一企業を支援しており、ここが日本の経済産業省とは大きく違う。日本政府は企業がまとまれば支援するが、一企業のためには支援しない。シンガポール政府の副首相であり財務大臣のHeng Swee Keat氏(図3)は、「今やシンガポールは半導体プロセスの生産能力で見ると世界市場の11%にも達するとみられている」として、「半導体企業60社が集まり、この産業はシンガポールのGDPの7%にも達する」と述べている。
図3 シンガポールのHeng Swee Keat副首相
同政府は、RIE(Research, Innovation and Enterprise)2020計画を策定しており、半導体を未来に向けた産業、と位置付けている。シンガポールにおける半導体産業には3万5000人が働いており、Micronはそのうちの8000名の従業員を持つ。Fab 10Aが稼働すると8500名になると見込んでいる。
今回、工場を拡張したのは、プロセスの生産能力を上げるだけではない。現在の量産では64層の3Dメモリセル構造で、試作やサンプル段階では96層ができているが、その先には128層が控えている。3D-NANDフラッシュは3次元の奥行を深くすることでメモリ容量を稼ごうとする傾向が強い。「層数を上げるのに従い、プロセスステップ数が増えるため、同じウェーハ枚数を生産する場合でも製造装置がもっと必要になる」と同社CTOのManish Bhatia氏は語る。Mehrotra氏は、「3D NANDは、もっと先進的なテクノロジーが必要となるため、この工場を拡張した」と言う。この将来方向を見据えて、従来の浮遊ゲート方式から最近、チャージとラッピング方式にMicronは変えた。
Micronは、このシンガポール工場をNANDフラッシュのCoE(Center of Excellence:中核となる研究開発拠点)と位置付けており、今回のFab 10AとFab 10Xの二つのプロセス工場と、一つのアセンブリおよびテストの工場がある。工場の詳細は、後編(参考資料1)で紹介する。
参考資料
1. Micronがメモリ不況中にNANDフラッシュ工場を拡張する理由 (2019/08/23)