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マクニカ、AIモデルを実装するプラットフォーマーになる

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半導体やネットワーク機器の商社であるマクニカが、AI(機械学習やディープラーニング)を適用するためのサービス「macnica.ai」を提供する。製造業だけではなく、小売りや介護業界、金融、製薬などさまざまな業種から、AIを使って業務を分析し業績を上げたいという要求がある。顧客ごとにカスタム対応するためのツールがこのプラットフォームだ。

図1 マクニカ代表取締役社長の中島潔氏

図1 マクニカ代表取締役社長の中島潔氏


マクニカは単なる電子部品商社ではない。「技術力のあるエンジニアを1000名抱える商社だ」で同社代表取締役社長の中島潔氏は言う。FPGAを使った設計が得意であり、顧客のために設計を提供するが、そのためのボードも提供してきた。部品商社からソリューションベンダーでビジネスを変革している。

AIを業務に生かすには、AIに何をどのように覚えこませるか、そのためのAIモデルをどう立てていくか、業務ごと、企業ごとにコンサルティングしながら、システムを構築する必要がある。それにはどのような部品(ソフトウエアとハードウエア)や技術を使うべきか、などコンサルティングが欠かせない。さらにシステムを構築し、AIの仮説を検証しOKとなれば実装するが、システムが完成した後も運用していく。

マクニカは、顧客に寄り添ってAIコンサルティングサービスを展開するが、その基本ツールがmacnica.aiである(図2)。例えば製造業では、工場内機械の異常検知や故障、劣化の予知を行う。IoTセンサを取り付け、センサからの経時変化データを蓄積し、故障を判定するのにAIを利用する。また、製造ラインでの異常検知や歩留まり向上では、不良原因を分析し歩留まりを上げるためのプロセスやパラメータを特定しデータを取得し、判定する。この時のAIモデルを開発し製造ラインに実装する。外観検査の判定にもAIはよく使われる。製品の外観を見るために画像認識技術を使って、検査装置から得られるデータに基づき、合否を判定する。これまでなら熟練技術者が合否判定に必要だったが、人材不足により熟練技術者を得ることが難しいため、AI判定で自動化するようになる。


macnica.aiのソリューション全体像

図2 macnica.aiの仕組み フルカスタム可能なAIプラットフォーム上に開発されるAIモデルを実装する


顧客に寄り添ってAIモデルを開発し、顧客の要望に沿った判断基準を作るためには、マクニカ側にデータサイエンティストが必要になる。この人材確保がAIの最大の問題だが、macnica.aiでは、インドのCrowdANALYTIX社株式の41.8%を取得したことでこれが可能になった。CrowdANALYTIX社の特長の一つとして、世界50カ国にいるデータサイエンティスト2万人以上を手配できるようにした(図3)。彼らがモジュラAIを作り、実行プラットフォームに実装する。これによってフルカスタムのAIソリューションができる。組織化した2万人のデータサイエンティストは、普段はIT企業や設計企業に勤務しながら、パートタイムジョブとして豊富なAIの知識を活用しAIモデルを作る。


CrowdANALYTIXの特長

図3 マクニカが買収して手に入れたCrowdANALYTIXプラットフォーム


CrowdANALYTIXは、フルカスタムができるクラウド利用のSaaS(Software as a Service)型のソリューションで、顧客に必要な各種のAIモジュールを実装することでカスタマイズする。マクニカは、AIを活用する業務の選定から仮設・検証、実装、運用までを支援する。さらに、顧客の課題をシステム要件に落とし込み、自社およびエコシステムパートナーのデータサイエンティストが最適なAIモデルを開発、クラウドAIプラットフォームへのAIモデルを実装するだけではなく、エッジ端末にAIモデムも組み込む。

またマクニカは、これまでのFPGA開発キットMpression(参考資料1)を利用して、AI学習環境、エッジの実行環境を構成するモジュールやボードも提供する。加えて、エッジ端末やセンサ、半導体などハードウエアも提供する。


参考資料
1. 高級なFPGAをもっと使いやすく、開発キットに注力するAltera、マクニカ (2015/02/20)

(2019/01/29)

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