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IoTシステムの開発会社が始動

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IoTシステム全体の開発会社として、デバイス&システム・プラットフォーム開発センター(DSPC)が7月末に設立されたことが発表された。終息したSTARCとSIRIJの後を受けて設立された準備会社(参考資料1)が、事業会社という形態に変わったもの。事業内容は、IoT関連のサービス、ライセンス、コンサルティング、少量生産など。

図1 デバイス&システム・プラットフォーム開発センターの会長の斉藤昇三氏(右)と社長の波多野至氏(左)

図1 デバイス&システム・プラットフォーム開発センターの会長の斉藤昇三氏(右)と社長の波多野至氏(左)


出資企業は、アルプス電気と東芝、凸版印刷、ニューソン(ソフトウエアプラットフォームの企業)が同じ出資額の筆頭株主で、さらに荏原製作所とテセラ・テクノロジー、東京エレクトロンも出資している。オフィスは、神奈川県川崎市の商業ビル、ソリッドスクエア内(東芝が入っているビル)に設け、代表取締役会長は東芝出身の斉藤昇三氏、代表取締役社長はアルプス出身の波多野至氏である(図1)。資本金は4150万円だが、出資比率については明らかにしていない。

出資金額がこれだけではモノづくりは難しいが、NEDOのプロジェクト「IoT推進のための横断技術開発プロジェクト」に企業連合で応募し、そのプロジェクトの中にある12テーマの内の一つ「超低消費電力データ収集システムの研究開発」(DSPCが参加)が採択された。この国家プロジェクトには平成28年度から32年度までの5年間に170億円が投じられる。DSPCが受託したテーマ「超低消費電力データ収集システムの研究開発」(図2)にはその一部が使われる。その金額をDSPCは明らかにしていないが、1件当たり原則0.5億円〜5億円/年程度だと応募要項に記されている(参考資料2)。


図2 NEDOからの支援金もIoT端末開発に使う 出典:NEDO、DSPC

図2 NEDOからの支援金もIoT端末開発に使う 出典:NEDO、DSPC


新会社は、これまでのコンソーシアムとは違い、NEDOのプロジェクトのテーマだけを行う訳ではない。このテーマは5年間の期限付きであるからこそ、NEDOからの補助金が切れた後でも、「事業を継続できるようにするため、DSPCを設立した」と会長の斎藤氏は述べている。これまでの国家プロジェクトの場合は、各社からの出資金を集めて、国からも出資し共同で開発研究するという形態をとっていた。開発した成果を各社が持ち帰ったが、半導体ビジネスにどのように生かしたのかわからないまま、半導体事業は弱くなってきた。開発が終了するとプロジェクトは解散した。斉藤氏の決意は、開発した成果をそのまま事業化することを強調している。NEDOはプロジェクトの事業化を推進しており、今の事業化率25%を40%に上げたいという目標を掲げているという。DSPCの目論見はこのNEDOの方針にも沿っている。

NEDOプロジェクトの超低消費電力データ収集システムの開発では、エネルギーハーベスティングを中心に、パワーマネジメント (電源) 回路や、蓄電回路などを中心に開発し、消費電力の低減を目指す(図3)。センサ部やマイコン、トランシーバ部分は手掛けなくても外部購入で済むため、それらの部品の実装技術は磨いていく。東芝は半導体、アルプスは実装するモジュールが得意。サイコロ程度の大きさのモジュールを目指す。現在さまざまなアプリのユーザーと話をしており、それを元に仕様を決めていくという。


図3 エネルギーハーベスティング電源を目指す 出典:DSPC

図3 エネルギーハーベスティング電源を目指す 出典:DSPC


IoTは、アドホックタイプのメッシュネットワークを利用するなら、ゲートウェイからWi-Fiなどでインターネットに上げるが、LPWAやNB-IoTといったセンサ端末(IoT端末)から直接モバイルネットワークを通してインターネットに接続する仕様も世界の通信会社から出ており、今のところはどの方式をとるのかユーザー次第のようだ。

IoT事業はインターネットにデータを上げてからデータを情報に変換する部分はクラウドで行い、それをユーザーに戻す訳だが、ハードウエアだけの企業同士では付加価値のある「うまみ」をシステムベンダーやサービスプロバイダーに取られてしまう恐れがある。ハードウエアベンダーでさえもソフトウエアやサービスに精通していなければ、価値の高い「うまみ」を手に入れることができない。情報をIoT端末に戻し、どのようなデータをセンスして価値に変換できるのかについてユーザーと直接、話を深めていくことができればIoTビジネスで価値を高められる。さもなければ半導体メーカーやモジュールメーカーは、付加価値を生まない部品屋に逆戻りしてしまう。


図4 チップからアプリまでのIoTシステムを構成する 出典:DSPC

図4 チップからアプリまでのIoTシステムを構成する 出典:DSPC


DSPCでは、ハードウエアだけに偏らず、クラウド層からアプリ層までを含むIoTシステム全体(図4)でビジネスを進める方式をとる。出資企業はIoTシステムに係わる企業であるだけではなく、足りない部分をパズルのように補うエコシステムを構築していく予定だという。

参考資料
1. 国内に新半導体R&Dセンター構想 (2015/12/07)
2. IoT推進のための横断技術開発プロジェクト公募説明会 (2016/04)

(2016/09/21)

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