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国内に新半導体R&Dセンター構想

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半導体業界の新しいR&D組織として、「デバイス&システム・プラットフォーム開発センター(DSPC)」が設立され、STARCフォーラム2015でその概要が発表された(図1)。2015年度に終了するSTARC(半導体理工学研究センター)と、SIRIJ(半導体産業研究所)の後を受け、2016年3月に発足予定の(株)DSPC(NewCo)の準備会社だという。

図1 新会社「デバイス&システム・プラットフォーム開発センター」の概要 出典:DSPC

図1 新会社「デバイス&システム・プラットフォーム開発センター」の概要 出典:DSPC


日本の研究開発コンソーシアムは、日本の半導体産業が落ち込み始めたことを受け、SeleteやAspla、Miraiなど様々な組織を作り、会費で運営してきた。しかし、半導体産業の売り上げは減る一方だった。1990年代は海外の半導体産業の中でも、米国が復活、台湾と韓国が急伸、欧州も成長を模索してきた。世界の半導体は成長しているのに日本の半導体は下降してきた。凋落原因はいろいろあるが、研究開発コンソーシアムは先端技術をひたすら開発することで、競争力が付くと言い続けながら、産業は没落、という結果を招いてきた。この低下傾向は2010年代に入っても続き、コンソーシアムでは競争力はつかない、という考えも最近、業界内では浸透してきた。

今回の研究開発組織は、これからの成長分野として期待の大きなIoT/CPS(Internet of Things / Cyber Physical System)での研究開発を行おうとするもの。全てのモノがインターネットにつながるような時代には、モノからのデータを大量に集めビッグデータを解析して新しい価値を生むものにする、とこの組織はIoT/CPSを定義している。

ただ、研究開発組織であるから、ここにはエンドユーザーは存在しない。Industry 4.0はIoTを利用して工場の生産性を上げようというコンセプトであるから、エンドユーザーは工場である。Industrial Internetは、エンドユーザーが動かす巨大なシステムを例えば20年間無故障で動かす(ダウンタイムゼロ)ための仕掛けであり、エンドユーザーは風力発電業者や航空会社である。しかし、IoT側の視点で見る限りユーザーは見えてこない。


図2 新R&Dセンターのイメージ 出典:DSPC

図2 新R&Dセンターのイメージ 出典:DSPC


それでも技術は開発しておこう、というのが今回の新研究開発会社である。準備会社の代表取締役社長である斎藤昇三氏は、IoT/CPS関連研究開発・社会実装・標準化のための組織であり、日本国内から有志企業を募り、日本版IMECのような組織を目指すと述べている(図2)。想定される有志企業は装置、材料、マスク、デバイスなどのメーカーとサービスベンダー、アプリメーカーなど。

交通インフラや、農林業・防災、工場・建物、家庭、クルマ、モバイル、医療・ヘルスケア、物流などの応用を想定し、インテリジェントセンサシステムを構築する、といったシーンを応用例として想定している。また、ビッグデータを保存するための新しいストレージデバイスやシステム技術の開発なども訴求している。新会社は半導体業界団体の再編という位置づけにもなっている(図3)。


図3 半導体業界団体の再編でもある 出典:DSPC

図3 半導体業界団体の再編でもある 出典:DSPC


斎藤氏の講演の後、会場から「IoT/CPSを今プロジェクトにするテーマとしては遅いのではないか。みんなでやるテーマなのか、と危惧している」といった厳しい質問が出た。これに対して、「遅いことは承知だが、現状では、みんな一斉に4Kテレビやスマホに向いている。今回の研究開発会社は、かつてのAsplaのようなコンソーシアムにならないようにする」とだけ答えた。

(2015/12/17)

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