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ルネサスがIntersil買収で合意、マイコンとアナログで差別化技術

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ルネサスエレクトロニクスは、米Intersilを1株当たり22.5ドル、総額約32億ドルで買収することで合意した、と発表した。買収完了は2017年上期を目指している。その間、Intersilの株主総会、関係当事国での承認の取得が必要になる。

図1 ルネサスエレクトロニクスのCEOである呉文精氏

図1 ルネサスエレクトロニクスのCEOである呉文精氏


ルネサスはアナログ・ミクストシグナル技術で提携先を探していた。8月下旬に買収の話が日本経済新聞に報道された時に考察したように(参考資料1)、Intersilとルネサスとの提携はダブる製品がほとんどなく、シナジーを生み出せる関係になる、とルネサスCEOの呉文精氏(図1)は述べている。

Intersil買収の日経報道が出た時に、Intersilの買収金額は高いという業界アナリストがいた。本日の会見でも、高い買い物をどう正当化するのか、という質問が出た。アナログ技術は一朝一夕には身につかない。買収金額は、時価総額に対して約44%のプレミアムを載せた金額になっている。これを高いと見るか、安いと見るかは、アナログ技術の難しさをどれだけ理解しているかに大きく依存する。アナログ技術を簡単に得られるものと考えれば高いと判断し、難しいと判断すると安いとなる。これに対して、ルネサスは、10年かければできるかもしれない、と述べている。

アナログ半導体では、Texas Instrumentsがダントツのトップで、2位Infineon、3位Skyworksとなっており、Intersilはトップ10位に入らない。しかし、ルネサスは自分たちの得意なマイコンを利かすためにアナログ半導体企業を探していた。6位のMaximは、ルネサスがIntersil買収の動きを察知すると、Intersil買収にも動いた。しかし、Intersilは結局、身売り先としてルネサスを選んだ。

これに対してルネサスは、PMIC(パワーマネジメントIC、すなわち電源IC)ですぐにリアルなシナジーが期待できそうだ、としてIntersilを買った。最近の業績もルネサスに似ているという。ここ数年、Intersilは不採算部門の切り捨てによって売り上げは減少してきた。一方で、営業利益率は20%程度確保しており、決して悪くなかった。ルネサスの呉CEOは、Intersilが6インチという古い工場を使いながら利益率が高いことから、価格戦略を学びたい、と述べている。

Intersilは、軍事エレクトロニクスに強い元Harris Semiconductorのフロリダ工場を購入して現在の6インチ工場としている。ただ、PMICはDC-DCコンバータやバッテリマネジメント、電圧レギュレータなどのパワーICであるため、それほどの微細化は必要としない。デザインルールとしては0.3µm〜0.7µmあるいはそれ以上の製品もある。ある程度耐圧を確保するためには平面距離を稼がなければならないからだ。その代り、小さなチップ面積でロスの少ない回路やアーキテクチャを考案しなければならない。ここが知恵の絞りどころとなる。Intersilは最近、工業用の48Vからいきなり1Vまで下げられるDC-DCコンバータを発売している。通常は、48Vから24Vや12Vに落としてから、さらに5V、そして1Vへと落とすのであるが、こんなところにIntersilの優れた技術がある。

Intersilはルネサスと違い、クルマ用の半導体には全く弱い。しかし、宇宙・航空・軍事用途には極めて強いため、高信頼性・高品質という点ではルネサスと共通点がある。だからこそ、高信頼性・高品質のアナログとマイコンは、差別化できる絶妙なコンビとなる。しかもマイコンは制御に使われることが多く、制御命令が充実しているが、その用途は入力にアナログのセンサ、出力にアナログのアクチュエータやディスプレイを使うことが多いため、マイコンアナログはむしろセットで持っていると大きな強みになる。

因みにマイクロプロセッサCPUは制御命令よりも演算命令が充実しており、しかもさまざまな分岐命令に対応できるという特長がある。またGPU(グラフィックスプロセッサ)は分岐命令が少なく、決まった演算を連続して行う作業が得意である。DSP(デジタル信号処理プロセッサ)は積和演算専用のマイクロプロセッサであり、級数展開の演算が得意なプロセッサである。これらのプロセッサはデジタル入力とデジタル出力が多いため、アナログとは強い親和性がない。

マイコンの特長はアナログとの親和性が強いことであり、ルネサスがIntersilを買収する意味はここにある。しかもアナログは20年程度の経験があって初めて独自設計ができる「巧みの世界」そのものである。アナログエンジニアとして4〜5年経験すれば、回路を読むことはできるが、独自に回路を生み出すことは極めて難しい。ルネサスがIntersilに期待するのは、これからのIoT時代に向け、独自の高性能汎用アナログICの創出だろう。PMICで即戦力に加え、将来の差別化システムを設計する上でもIntersilに対する期待は大きい。


参考資料
1. 事実なら、ルネサスのM&A戦略に沿ったIntersil買収提案 (2016/08/22)

(2016/09/13)

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