SanDisk、クルマ用のフラッシュカードに進出
東芝の四日市工場でNANDフラッシュを生産しているSanDiskがSDカードで車載分野に進出する。4月には、8GBから16GB、32GB、64GBという容量を持ち、最大20MB/sのシーケンシャル書き込み/読み出し性能を実現し、しかも安全仕様AEC-Q100規格の認証を取得したSDカードを出荷する。動作温度範囲が-40℃〜85℃と広く、自動車に使えるレベルに達している。
これまでクルマ用には、NANDフラッシュはあまり使われてこなかった。NANDフラッシュに8GB以上の大容量データを利用する用途がなかったためだ。Spansionが小容量のNORフラッシュで、333MB/sと高速のデータレートを利用するHyperBus仕様を12ピンで実現してきた(参考資料1)程度にとどまる。
図1 サンディスク プロダクトマーケティングディレクターのラッセル・ルーベン氏
しかし、クルマが車車間通信や路車間通信をはじめ、モバイルインターネットやGPS(Global Positioning System)などとつなぐ用途が今後出てくるようになる、と日本法人サンディスクのプロダクトマーケティングディレクターのラッセル・ルーベン氏(図1)は述べる。特に、リアルタイムデータの収集と解析のために大容量のストレージが必要で、クラウドとのやり取りのバッファリングでの大容量化も要求されるようになってきた。クラウドとのやり取りだけでクルマのデータを扱うなら、レイテンシが許容できないため、クルマ内部で大容量のストレージを持っておく必要性が出てくる。
SanDiskはこれまで、カメラ用やスマートフォン用などのNANDフラッシュに力を入れてきた。しかし、民生市場の伸びがもはや期待できなくなり、クルマや産業用分野への用途を探してきた。幸いにもコネクテッドカーと言われるようにクルマに通信機能が充実してくるのに従い、OSやミドルウェアだけではなく、アプリケーションソフトウエアの更新が簡単にできるようになる。クルマが「つながる」ようになればソフトウエアの更新が簡単にできるようになり、それらをストアするのに必要な十分大きい容量が求められる。コネクテッドカーでは、4GBから1TBが要求されるとSanDiskは見ており、フラッシュの大容量化が求められるようになる。しかし、NORでは大容量ができない。このため大容量NANDフラッシュストレージに顧客が注目しているという訳だ。
今回、SanDiskがクルマ用に開発したNANDフラッシュカードには、「スマート機能」と呼ぶ機能を備え、信頼性とモニタリング能力を強化した。スマート機能には次のような働きがある(図2);
1) ヘルスステータス:これはカードの健康状態を見る機能であり、多数回書き換え、メモリセルが摩耗しているかどうかを検出し、摩耗を検出してから交換すると、コストを節約できる。
2) 電源遮断機能:突然予期せず電源が遮断されてもデータを保護する機能である。
3) リードリフレッシュ:地図データなどで同じ場所を何度も読み出す場合、読み出しディスターブ現象が起こり、最初に蓄積したはずの電荷が少なくなることがある。そのような場合は再書き込みしてセルをリフレッシュする。ここでは自動的にリフレッシュするようなアルゴリズムを開発、読み出し耐性を強化している。
4) プログラム可能なストリングを内蔵:ここにOEMの名前やプロジェクト名、日付などをビット列(ストリング)でIDをふっておく。固有のIDとして認証に使える。ストリング値の長さは32バイト。
5) ホストロック:カードそのものをセキュアに保護するため、パスワードでカギをかけておく。これによりカードを他の機器に差し込んでも使えないようにする。
6) 安全なファームウエア更新:暗号キーと認証キーを使った二重の保護機能により、ファームウエアを更新する場合でもフィールドでもセキュリティが保たれる。
図2 「スマート機能」の内容 出典:SanDisk
これらのスマート機能は、コントローラIC内に集積しており、特にそのためのプロセッサチップを開発した訳ではないという。SanDiskは、クルマ用のSDカードだけではなく産業用のSDカードも同時に2016年4月から出荷を始める。産業用にもスマート機能を搭載するとしている。産業用では、AEC-Q100認証を除き、クルマ用とほぼ同じような仕様であるが、使用温度範囲が-40℃〜85℃と、-25℃〜85℃の2種類とmicroSDカードを用意した。ルーベン氏によると、microSDは動画に使われる用途が多かったため、産業用途にとどめ、クルマ用にはmicroSDは用意しなかったという。
参考資料
1. Spansion、333MB/sと高速のシリアルバスを提案、フラッシュNOR製品発売 (2014/02/21)