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リニアテクノロジー、工業用IoTを推進するコンソーシアムを設立

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Linear Technologyが2011年12月に買収したDust Networksは、工業用のIoT(Internet of Things)を推進する企業である。日本法人であるリニアテクノロジーが10月17日「ダスト・コンソーシアム」の設立を発表した。

図1 ダスト・コンソーシアムを立ち上げたリニアテクノロジーの面々

図1 ダスト・コンソーシアムを立ち上げたリニアテクノロジーの面々 左から代表取締役社長の望月靖志氏、事務局長の小林純一氏、本社Linear TechnologyのGordon Charles氏


Dust Networkは、工業用ワイヤレスセンサネットワークのシステムにおいて、強固な切れない接続性と、長期電池駆動(消費電力が低い)、接続の安定性、セキュリティ、そして設置しやすさ、という5つの特性を兼ね備えている。それぞれの特長は昨年セミコンポータルで紹介したが(参考資料1)、従来のZigBeeやWiSUNネットワークとは違い、このSmartMeshネットワークにはセキュリティが確保されている。さらに「有線と同じ程度の接続信頼性を持つ」(リニアテクノロジーの代表取締役社長の望月靖志氏)。

工業用IoTは、巨大な化学プラントの事故防止、貨物列車のブレーキや軸受の劣化監視、トンネルや橋梁の老朽化監視、あるいは巨大な風力発電タービンの劣化監視など人手でチェックしにくいような巨大なシステムを監視するのに使われ始めている。リニアは、こういったインフラの老朽化問題や原子力発電所の安全管理、国際競争力のある農業システムなど、現代日本が持つ問題を一挙に解決する可能性があると見る。

昨年2月に発表した時は初めて日本でもDustのモジュール技術の販売を開始した。今年になり、5月のWireless Japanに出展したときに多くの企業がブースにやってきて、その内350名が企業を訪問させてほしいと希望したと望月氏は語る。この工業用IoT技術には、センサ、モジュール技術、システムインテグレータ、ソフトウエア開発メーカーなど、総合的な技術が必要になる。これらの企業がDustの技術に興味を持った。このため、リニアはサプライチェーンからカスタマまで含めたパートナー同士の組織が必要だと考えた。これがダスト・コンソーシアムになった。

コンソーシアムを正式設立する前に、会員を募ってみた所わずか1カ月で130社が集まったという。日本でこういった企業主導のコンソーシアムは珍しい。ダスト・コンソーシアムが対象とする企業は、(1)ガスや電力、鉄道、公共団体などのインフラ運用会社、(2)出来上がったIoTシステムをターンキーソリューションで提供するシステムインテグレータやソリューションプロバイダ、(3)ハードウエア・ソフトウエアのメーカー(センサ、電池、アナログ回路、筐体、アンテナなどのメーカーにダストとリニア)だ。

IoTを作りたいメーカー、それを使って社会インフラを運用したい企業などが集まる団体として、ダスト・コンソーシアムは、憲章を以下のように定めている;
「ダスト・コンソーシアムは、無線で確実に“つなぐ”技術によって、誰もが安心して使用できるインフラの構築や、各種産業のさらなる効率化の実現を目指します。ダスト・ネットワークス(Dust Networks)の技術と、センサ、無線、電池、アンテナ、筐体、データベース、解析アルゴリズム、ユーザーインターフェイスなど、多くの技術を組み合わせた複合技術によるシステム構築をするため、業界間の壁を取り除き新しいビジネスチャンスの場を提供していきます」。

今の所、このコンソーシアムは日本が中心だが、米国にも欧州企業や台湾企業のハードウエア/ソフトウエアなどのベンダーが集まったエコシステムが出来ている。Linear TechnologyのDirector of EngineeringのGordon Charles氏によると、20~25社くらいのエコシステムだという。将来は日米一緒にしたグローバルなエコシステムを作りたいとしている。日本企業にとっても、グローバルなエコシステムに最初から参加できる絶好のチャンスとなる。

参考資料
1. LTC傘下のダストネットワークス、WSN用半導体とモジュールを日本市場へ販売 (2013/02/15)

(2014/10/17)

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