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ルネサス、11年度決算は通期で営業損益568億円の赤字ながら4Qに明るさ見る

ルネサス エレクトロニクスの決算発表では、2011年度第4四半期(1〜3月)の売上額は前期比6.1%減の2097億円にとどまった。減少率は世界の半導体企業並みのレベル。2011年度通期では売上額は前年比22%減の8831億円と大きく後退し、営業損益568億円の赤字、純損益626億円の赤字となった。この1〜3月期の世界の半導体企業の業績は良くないことを考えると第4四半期は健闘しているといえそうだ。

図1 記者会見するルネサスの赤尾社長

図1 記者会見するルネサスの赤尾社長


2011年度は、東日本大震災とタイの洪水が大きく響き、パソコンやHDDの市場などが大打撃を受けた。この両市場向けの半導体ビジネスは大きく後退した。マイコン事業だけを取れば黒字だという。しかし、SoC事業ではスマートフォン市場への転換が遅れ、市場が小さくなる従来型携帯電話にこだわりすぎて、モバイル市場向け売り上げは前期比半減、民生やパソコン用半導体は30%減と、大きく沈んだ。アナログ&パワー部門でもパソコン向けは20数%減、ディスプレイドライバも30%減と出遅れた。

パソコン市場は今後回復基調であるが、コモディティのディスプレイドライバや携帯電話市場からの脱却と、スマートフォンなどの成長市場への切り替えを早く行うべきだろう。昔からの付き合いで沈みゆく市場にいつまでも固執しているとルネサス本体が揺らいでしまう。ここは思いきって決断してほしい。成長のエンジンに早急に投資し、シフトを図るべきだろう。

今回、ルネサスは製品戦略で新しい動きを見せた。今後のコアコンピタンスをマイコンと定義し、アナログ&パワー分野はグローバル市場を狙うというのである。これまでは海外比率を当初の狙いよりも高くできず、50%と昨年と変わらなかったことも成長が停滞した原因となっている。この比率をアナログ&パワー分野で伸ばそうという計画だ。

マイコンで力を入れるのはSmart AnalogともいうべきICである。センサからの信号処理と、デジタル変換した後の処理を受け持つマイコンを集積している(参考資料1)。この分野は自動車と産業用がメインとなりそうだ。この分野ではまだ海外対応ができていないが、まず国内の産業用市場を固めていく。


図2 マイコンを3シリーズに集約 出典:ルネサス エレクトロニクス

図2 マイコンを3シリーズに集約 出典:ルネサス エレクトロニクス


マイコン全体としては、8/16ビットのRL78、32ビットCISCのミッドレンジではRX系、32ビットRISCのハイエンドではV-850とSHシリーズを統合してRH850系を構築するという意思を見せた。1社2アーキテクチャという、いびつな構造から脱却するという訳だが、システム制御系のV850と周辺回路系のSHをどう統合するか、腕の見せ所となる。さらに、32ビット系ではRXとRH850という二つのアーキテクチャの役割分担をこれから検討していくと述べた。

さらに、V850とSHのソフトウエア開発などサードパーティとのパートナーシップに対しては、これから個別に対応していく予定だとしている。ルネサスの32ビットマイコンの主な顧客は自動車エレクトロニクス産業であるため、パートナーの数はさほど多くないという。

グローバル化に対してはさらにもう一歩踏み込んで、推し進めていこうと考えている。例えばノキアとの合弁のルネサスモバイルが受注したデザインインは、現在14件を完了しており、うち9件が海外企業であり、これまでにないほど海外比率が高い。ルネサスモバイルは今後の期待の星になる。というのは、アプリケーションプロセッサを持つnVidia とテキサス・インスツルメンツ(TI)とも提携し、彼らの持つTegraやOMAPとルネサスモバイルのベースバンドチップをシングルチップに集積していこうと考えているからだ。IPとして供給するのか、彼らからIPとして供給を受けるのか、まだはっきりしていないようだが、今後議論して詰めていく。モデムは全てのワイヤレスデバイスに必要とされるチップであるため、これを握っている限り成長マップを描くことができる。


図3 LTEモデムで伸びそうな企業と一緒に成長していく 出典:ルネサス エレクトロニクス

図3 LTEモデムで伸びそうな企業と一緒に成長していく 出典:ルネサス エレクトロニクス


2013年3月期の業績見通しについて語らなかったが、半導体市況を見極めるためとしており、今の段階では開示しない方針だ。これを追及するメディアもあったが、海外企業では将来の予測は出さないのが常識だ。株価操作につながる恐れがあるからだ。開示しない理由はいろいろ想像できるが、追求しない方が半導体産業のためになる。

ただ、ルネサスが将来戦略をさらに詰める議論を今後、数週間ですませなければグローバル競争に勝てず、置いてきぼりを食う恐れがある。とにかく急ぐことが何よりも肝要だろう。


参考資料:
1. 使いやすさがマイコン成長の道、ルネサス/シリコンラボがGUI環境を充実 (2012/04/04)

(2012/05/10)
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