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福岡で新設される半導体に関する2カ所の研究センターの内容が明らかに

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福岡県産業・科学技術振興財団(通称IST)が事務局を務める福岡先端システムLSI開発拠点推進会議は、今年2月のシリコンシーベルトサミットにおいて来春完成を目指し、先端社会システム実証研究センターと半導体先端実装研究評価センターを設置することを表明した(関連記事1)が、このほどその二つのCoE (Center of Excellence)の具体的な中身が明らかになった。


図1 LSI設計から実装・試作評価の後、社会での現場実験ができる

図1 LSI設計から実装・試作評価の後、社会での現場実験ができる


福岡先端システムLSI開発拠点推進会議はこのほど総会を開き、その中でこの研究センターについて明らかにしたもの。この推進会議は、企業257社、大学58校、行政4機関、支援機関等16機関の会員からなる半導体のコンソシアム。これまでLSI設計のファブレス企業を支援するインキュベーションセンターとして福岡システムLSI総合開発センターを2004年に設立、運営してきたが、設計がメインでアセンブリや実証実験する場としては十分ではなかった。

このため、半導体先端実装研究評価センターでは半導体のアセンブリとテストを中心に行い、完成したICチップの実証実験を先端社会システム実証研究センターで行うという訳だ。半導体の製造プロセスに関してはファウンドリを利用する。

実装技術が今後、3次元化する方向に向かっているため、TSV(Through Silicon Via)技術をはじめとする3D技術の開発とSiP実装基板などの標準化や規格を作る活動まで行う。製造方法、試験方法を世界的に標準化すれば低コストの3D-ICを実現できるようになる。福岡県はこの研究センターを世界的な拠点とすると意気込む。


図2 半導体先端実装研究評価センターは標準化まで提案

図2 半導体先端実装研究評価センターは標準化まで提案


半導体先端実装研究評価センターではセンター長として元東芝の開俊一氏が就任、総事業費30億円(建屋10億、設備20億)を投じて2階建て延床面積3268平方メートルの施設建設工事に今月着手する。完成は2011年3月の予定だが、産官学が連携して共同研究開発拠点を形成する。

半導体パッケージ技術は、最先端になればなるほどチップ実装とプリント回路基板との境が見えなくなりつつある。インテルのプロセッサのパッケージ基板はイビデンや新光電気工業などが供給しており、配線幅/配線間隔は15/15μmと肉眼では見えにくい幅になってきた。シリコンの45nmと比べれば太いようだが、人間の髪の毛が70〜80μmであるから、髪の毛の1/5の線幅であり、配線間隔が空いているかどうかの確認はもはや肉眼ではできない。

すでにJPCAショーをレポート(関連記事2)したように、微細なプリント基板の配線を形成するには印刷(プリント)ではなく半導体と同じリソグラフィ技術を使う。「基板と実装、パッケージの融合が進む」と開センター長が述べたように、配線形成だけではなく、ICチップ内蔵プリント配線板、システム内蔵プリント配線板、光導波路プリント配線板なども進化する。しかもこれら自身も3次元化するという。そこで、最適な組み合わせがこれからの電子システムに使われるようになると開センター長は語る。

このセンターでは、部品内蔵回路基板を含む3次元実装技術に関して産官学共同で研究開発と試作・評価を行う。新パッケージの開発も行う。企業が独自の研究開発を行ってもよい。大手企業が対応できないような開発を中小ベンチャー企業などが行うための設備を提供する。ここには高度設計ツールや先端パッケージの試作ライン、クラス100および1000のクリーンルームを用意し、SiP実装基板や部品内蔵基板の標準化や、製造方法や試験方法などを世界標準に持っていく。


図3 先端社会システム実証研究センターのビジネスイメージ

図3 先端社会システム実証研究センターのビジネスイメージ


完成したICを実際に社会に使ってみるともっと違った要求や機能があるかもしれない。ICを実際に使ったシステムを構築し、それを社会実験として使ってみて現場からのフィードバックを採り入れることで、ICをさらに改良していく実用になる半導体、売れる半導体を作っていく。このための研究機関が先端社会システム実証研究センターである。

これからの大きな市場はいうまでもなくアジアやアフリカだ。インドの銀行向け端末の実証実験などを九州大学チームはやってきた。九州大学の副学長を務める安浦寛人センター長は、「開発途上国市場は新しい技術とサービスの開発場所となる」、と認識しており、世界市場を前提としたシステム開発に取り組む。

この実証センターでは、社会実験を通してシステムLSIの応用製品や応用ソフトウエア、応用サービスを開発するための支援活動を行う。実証するための事前調査から要求仕様の作成、デザイン、ビジネスモデルの提案も含める。例えば、センターで試作したICカードやそれを使ったサービス機器を実証センターから貸出し、サービス提供実験を行う。その結果を利用料という収入を含めニーズをつかみ、開発拠点で商用化できるICを作り直し、本当の商品品化へとつなげていく。

特に社会インフラを利用する実験となると、社会における実証実験が欠かせない。しかも途上国市場は大きい。こういった社会インフラなどを中心とする半導体開発のプラットフォームを作ることで、世界に通用する技術・サービスなどを磨くことができる。二つのセンターは、福岡市の西にLSI設計センターのさらに西に新設する二つのセンターを置く。


図4 福岡市の西を結ぶ☆印の場所に建設する予定

図4 福岡市の西を結ぶ☆印の場所に建設する予定


関連記事:
1) 福岡県に実装とシステムの二大開発センターを設置、ワンストップでICが完成 (2010/02/24)
2) 半導体技術とプリント回路基板技術との境界がますます見えにくくなる (2010/06/04)

(2010/08/05)

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