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着実な量産化と変換効率でリードする多結晶系、今後の結果を待つ薄膜系太陽電池

昨年第1回のPV Japanが開催され、今年は第2回目を迎えた。今年は出展社数303社、小間数599小間と、それぞれ対前年比で37%、14%増加した。経済不況のさなかに増加した展示会は極めて珍しい。また、今回は、太陽電池の「PV Japan」だけではなく、再生可能なエネルギー協議会が主催する「第4回新エネルギー世界展示会」も加えた。しかし展示会の実態はPV Japanのブースが8割以上を占めていた。

PV Japan 2009

PV Japan 2009


アモーファスSi薄膜系太陽電池は1m×1mを超えるような実際に近い大きさのパネルで、変換効率がまだ5〜9%と10%足らずであるが、他の薄膜系と比べればパネルサイズの大きさで10%を超す薄膜太陽電池はまだ量産実績がない。実験室レベルや小面積での変換効率を争う時代ではもはやない。生産できるレベルでの効率を保証できるかどうかが実際に使う上で重要な決め手となる。今の薄膜系では光を照射すると効率が初期的に少し劣化し、しばらくして落ち着くという特性を示す。このため薄膜系では実際の変換効率は結晶系にはとても及ばない。

Si結晶系では実験室レベルで三洋電機が23%を記録した。多結晶Siでは三菱電機が18.9%というトップデータを発表した。しかし、今回のPV Japanで圧巻だったのは京セラだ。同社は2006年に変換効率18.5%と結晶並みの値を発表していたが、今年の秋にパネルの量産を開始すると発表した。生産が立ち上がると年間650MWの生産能力を持つことになる。


京セラ太陽電池


京セラは、シリコンの原料を外部購入してからは、自社内で四角いダイキャストを使って多結晶シリコンを引き上げる。その多結晶インゴットを厚さ180μmでスライスしていく。厚さ180μmの多結晶シリコンウェーハからpn接合を作り太陽電池とする。表面のメタルをすべて裏面から取り出す構造に変え、18.5%という変換効率を2006年に達成した。この技術を量産にするわけだ。太陽電池の基本セルは発生する電圧は0.3〜0.4Vしかないため、セルを順次直列接続し、出力電圧を17〜18Vにまで上げる。

太陽電池は基本的にはフォトダイオードであり、それを直列に接続したものであるから、一つのセルでも全く光が当たらなければ電流が生じない。実際には回り込みの光が入り込むため少しは電流が流れるものの、少なくなるため、太陽電池全体の電流も少なくなってしまう。このため、直列と同時に並列にも接続し電流も稼ぐ。しかし並列接続の問題はバラつきだ、安定化抵抗を入れるなり、定電流コントローラを入れるなりして、流す電流を回路的に均一に整える。もちろんこのために変換効率はさらに下がる。

セル間のバラつきが少しでも少ない材料が全体の効率低下を抑えることができる。結晶系のシリコン太陽電池がいまだに使えるのはこのためだ。薄膜系だと結晶系よりもバラつきが大きい。しかも完成直後に光を照射すると、効率は少し落ちて安定になる。この初期劣化は薄膜系では今のところ避けられない。

太陽電池パネルからの直流出力を出来るだけきれいな(正弦波に近い)交流に変換して家庭などに電力を供給しなければならない。高調波を発生させないようにしなければならないからだ。三菱電機は交流240V、100Vを出力するパワーコンディショナーの効率を97.5%と高め、小さな体積のパワーコンディショナーを開発した。出力電力0.9〜4.0kWに渡りこの効率をえた。正弦波に近づけるため、振幅一定のPWM(パルス幅変調)ではなく、入力電力を100V、240Vと直列に接続、3段階の振幅に沿ってPWM変調させることで、なめらかな正弦波を得るようになり、高調波が少なく効率が上がった。PWMのスイッチングデバイスにはIGBTではなくもっと小さな電圧でも動作できるMOSFETを用いたという。


パワーコンディショナーとパワーモジュール

パワーコンディショナーとパワーモジュール


トヨタのハイブリッドカー、プリウスに太陽電池パネルをオプションで搭載、駐車時でも発電できるため、車内にファンを回すことが可能だという。この太陽電池パネルには出力56Wの京セラの多結晶シリコン太陽電池を使っている。テュフ認定にはもちろんパスしているという。


プリウスの屋根に搭載する京セラの太陽電池

プリウスの屋根に搭載する京セラの太陽電池


アモーファス薄膜系では、アルバックとアプライドマテリアルズがライバルの火花を散らし、アルバックは効率9%を保証する量産向けのターンキー製造システムを売り出すと述べ、アプライドは世界各地に納入実績があることを強調する。太陽電池パネル製作、実動作の評価はこれからはっきりする。


(2009/06/25 セミコンポータル編集室)

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