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第5回RD20 (1):提言から実行に移す年が始まった

第5回RD20(Research and Development for clean energy technologies)の開催日時と開催地が決まった。2023年10月3〜6日、福島県郡山市の「ホテルハマツ」で開催される。RD20は、G20が開かれた2019年に始まり、カーボンニュートラルに向けた研究者同士のディスカッションの場を設けようという趣旨で始まった。5回目となる今年は、国際連携の強化と若手研究者育成という新しい試みが始まる。第5回RD20の事務局長である産業技術総合研究所ゼロエミッション国際共同研究センター(GZR)の統括研究主幹である吉澤徳子氏(図1)にRD20 2023の特長や狙いを聞いた。

第5回RD20 吉澤徳子事務局長

図1 産業技術総合研究所ゼロエミッション国際共同研究センターの第5回RD20の事務局長である吉澤徳子氏


2019年6月に大阪で開催されたG20サミットの席上で故安倍晋三首相が提案したRD20はこれまで、カーボンニュートラルの達成に向けて国際連携を図りながらG20各国の研究機関が一堂に会し、そのソリューションをディスカッションしてきた。毎年1回開催される国際会議であったが、昨年の第4回の会議では、1回の会議だけではなく年間を通じた活動にしようという提案があった。今年は提案を実行に移す年になる、と吉澤氏は決意を語る。


サマースクールを7月に開催

昨年のRD20 では、サマースクールを開催して若手の研究者同士のネットワーク形成を支援しようという提案がフランスのCEA-LitenのFlorence Lefebvre博士(参考資料1)からあった。この提案を今年は実行することになる。フランスのCEAとCNRS(フランス国立科学研究センター)が中心となって今年の7月2日(日)〜7日(金)にグルノーブル市郊外でサマースクールを開催した(図2)。


サマースクール会場

図2 サマースクールが開催されたフランス・グルノーブルのホテル会場


1コマ1時間を13コマに渡ってカーボンニュートラルに直結するソーラーや風力などの再生可能エネルギーや、それらの制御技術などについてディスカッションした。参加者はRD20に参加している各国の研究機関から推薦された若手研究者54名と講師人14名である。イタリアのある若手研究者は、「欧州内の研究者とはいつもディスカッションしてきたが、域外の研究者ともディスカッションできてよかった」と話す。

サマースクールの場を通じてキャリアアップとなる人材育成だけではなく国際連携のためのネットワーク(人脈)作りにも貢献できる。RD20の主催者側が若手研究者の参加費や宿泊費を負担した。

昨年決まったもう一つの年間活動として、活動委員会(Action Committee)の設置がある。活動委員会は、年に1回のRD20会議とは別に、年に数回開催されRD20の方向性を議論する。今のところ米国、ドイツ、フランス、EU、オーストラリアなどが主体となり、産総研GZRの近藤道雄氏(参考資料2)が中心となって議論していたが、今後は発展途上国の方々の参加も促していく。


初めての福島開催

そして2023年のRD20の最大の目玉は、東京を離れて福島で開催することである。福島は2011年の3.11東日本大震災で世界的に大きな関心を与えた地域として注目されている。開催によって復興した姿を見せるとともに、日本のエネルギー政策上で重要な場所であることを示す良い機会にもなる。

加えて、産総研にとっても福島再生可能エネルギー研究所(FREA)が設置されている、なじみの場所でもある。10月6日に行われる予定のサイトツアーではこのFREAを見学してもらう予定になっている。FREAで働く研究者にとっても世界にアピールする絶好の機会となるため、カーボンニュートラル実現に向けた現地企業の取り組みをポスターセッションなどで紹介し、世界の研究者とディスカッションしてもらう。

RD20の位置づけは、先進国がリードして脱カーボンに向けて走るのではなく、発展途上国にはそれぞれ特有の問題があるため、それぞれの地域でそれぞれの解決策を示し、各国がお互いにそれぞれの事情を理解しながら、進めていくものになっている。例えば、昨年のRD20インタビューで紹介したように(参考資料34)、インドではバイオ燃料やバイオ水素、バイオマスに力を入れている。オーストラリアでは牛や羊などの家畜が発生する「ゲップ」が排出するメタンガスが問題になっている。メタンガスはCO2の数倍も環境負荷が大きい。


今後はさらにグローバルに展開へ

昨年決まった実行の場は、着々と展開されていく。今後は、クリーンエネルギーの社会実装をさらに進めカーボンニュートラルの実現に向け、RD20という研究機関の集まった組織を生かしながら、もっと新しい取り組みへと発展させていきたいと吉澤氏は語る。

オープンなセッションの場と、専門研究者だけのクローズドなワークショップも開催する。忌憚のない自由な議論はワークショップで発揮され、ここでは本音で議論が交わされるため、今後の方針を決めるのに役に立つ。こういったワークショップを含め自由なディスカッションによって国際連携のプラットフォームとして生かしていきたい、と吉澤氏は期待する。

これまでずっと日本で開催してきたが、今後、海外と日本の1年おきに場所を変えようという意見が昨年のRD20で出ていた。開催場所に関しては、まだ結論は出ていないが、議論を進めていくことになりそうだ。

参考資料
1. 「水素の影響を共通評価、RD20で国際協力へのカギとなる〜フランスCEA-Liten」、RD20 スペシャルインタビュー、Florence Lefebvre博士 (2022/07/04)
2. 「今年のRD20、『国際連携の具体的テーマを決めたい』」、RD20 スペシャルインタビュー、近藤道雄氏 (2022/06/13)
3. 「バイオ燃料やバイオ水素で環境問題に対応していくインド」、RD20 スペシャルインタビュー、Vibha Dhawan博士 (2022/08/22)
4. 「日本とのコラボで資源大国の価値を高めるオーストラリア」、RD20 スペシャルインタビュー、Larry Marshall博士 (2022/09/09)

(2023/09/06)

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