Semiconductor Portal

HOME » セミコンポータルによる分析 » 会議報告 » 会議報告(プレビュー)

先端トランジスタ、先端パッケージングが続出する2023 VLSI Sympo

6月11日から京都で開催されるVLSI Symposiumのプログラムが決まった。投稿論文数はこの10年間で最多の359件、採択数は123件、採択率は34%となった。2017年から回路とプロセスが一体化したVLSI Sympoだが、2023年の全体テーマは「持続可能な未来のため、VLSIデバイス技術と回路技術を再始動」である。FinFETの次となるGAAやCFET、など新トランジスタ技術や裏面電源技術などの実装技術が話題になりそうだ。

2023年6月11日〜16日開催 2023 Symposium on VLSI Technology and Circuits (VLSI Symposium)


図1 2023年6月11日〜16日京都で開催される2023 Symposium on VLSI Technology and Circuits(通称VLSI Symposium)


大きな技術の流れを紹介するプレナリーセッションでは4つの講演がある。ヘテロ集積の先端パッケージ、将来のハードウエア設計の見直し、シリコンベースの量子コンピューティング、カスタム化へと進むNANDフラッシュ、である。6月13日はシンガポールのA*STAR IMEのS. Bhattacharya氏、GoogleのP. Ranganathan氏、14日は日立製作所の水野弘之氏、Western DigitalのS. Sivaram氏がそれぞれ講演する。

ヘテロ集積の先端パッケージでは、13日の朝「半導体システム微細化のためのマルチチップ異種集積パッケージ」と題した発表をA*STAR Institute of Micro ElectronicsのBhattacharya氏が行う。今後数十年に渡りシステムのスケーリングの必要性を語る。具体的には、多数のさまざまなチップレットを集積するためのパッケージング技術について語り、SIP(システムインパッケージ技術)をスケーリングのためのツールボックスとして、ヘテロ集積化技術があるという。

続いて、Google社のRanganathan氏は「VLSIの未来を語る6つの言葉:AI駆動、ソフトウエア定義、うずうずするくらいエキサイティング」と題して、二つのテーマについて語る。一つは、カスタムシリコンのアクセラレータを使う効率的なハードウエア設計であり、もう一つは、ソフトウエア定義のシステム設計を通じてハードウエアを有効に使う技術である。アジリティやモジュラリティ、信頼性、サステナビリティといった重要なテーマに触れながら解説する。

翌14日の朝には、日立の水野氏が「量子コンピューティング 誇大広告からゲームチェンジャーへ」と題された講演を行う。量子コンピュータ実用化までの長い道のりを示し、投資回収が容易ではないことを述べる。量子効果を出すためにはごく低温まで冷却する必要があるが、量子アニーリング技術ならCMOSでもイジングモデルを実行できる。水野氏はCMOSアニーリング技術を紹介する。

続いて、Western DigitalのSivaram氏は、「ノンリニアリティーを求めてNANDフラッシュにおけるスケーリングリミット」と題した講演を行う。3D-NANDフラッシュはそろそろ成熟期に入り、セル層を増やすだけでは限界があるとする。メモリ密度を上げながらコストを下げる手法を探る必要があるとして、ウェーハ張り合わせの時代が来そうだという。また用途に応じてカスマム化を図ることも重要になるという。

一般講演では、FinFETに代わる新しいトランジスタとしてGAA(ゲートオールアラウンド)トランジスタ(Samsung)や、ナノシート利用の2次元TMD(Transition Metal Dichacogenide)トランジスタ(TSMCなど台湾グループ)、GAAのnチャンネルとpチャンネルをスタックさせるC(Complementary)FET(imec)などが登場する。TMDはTSMCがGAAやCFETの次に考えている新トランジスタ構造。裏面電源ライン技術はIntelがPowerViaテクノロジーとして発表する。


地域別投稿・採択論文件数(Circuits/Technology計)

図2 採択数では日本がトップに 出典:VLSI Symposium


地域別では、ここ2年くらいアジアからの投稿が極めて増えている。ただし採択される論文では日本の復活がある。採択数では日本は国別で北米(50件)、韓国(48件)に次ぐ3番目の26件である(47件の投稿中)。採択率では55.3%と日本がトップになった。

(2023/04/26)
ご意見・ご感想