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VLSI Symposia2022、回路とテクノロジーが合体、基調講演から見えるもの

今年のVLSI Symposiumはこれまでのテクノロジーと回路を分けずに1本化することが決まった。半導体チップの微細化や複雑さから、プロセスと回路技術を分離することが難しくなり、新しい技術への対応が必要になってきたためだ。しかも昨年一昨年のオンラインから、リアルとのハイブリッドで開催される。

今回のVLSI Sympoのテーマは、「Technology and Circuits for the Critical Infrastructure of the Future:未来を担う不可欠な社会基盤、VLSIテクノロジーと回路」である。このテーマにした理由について、「昨今の半導体不足により、半導体技術が私たちの生活や産業にとって重要な地位を占めるかを改めて知らされたことが大きい」とVLSIシンポジウム委員長の黒田忠広東京大学教授は述べている。

半導体回路は複雑になればなるほど、実は回路とプロセス・デバイス技術とは切り離せなくなっている。その象徴はTSMCにある。TSMCは半導体プロセスの微細化技術で先頭を走っていると言われているが、最先端の5nmプロセスノードでは、チップ上のどこにも配線幅やピッチが5nmまで行っていない。例えば7nmノードでもメタルピッチは40nmであるし、チャンネル長は15nm程度にしか微細化できない。短チャンネル効果やホットエレクトロン効果のため、これ以上チャンネル長を短くできないからだ。性能、消費電力、面積などのパラメータが前世代のノードよりも20%、30%改善されているが、これは全体的なバランスと配線層やレイアウト上の工夫によって性能を上げているのである。実は7nmノード、5nmノードのICチップの設計を行っている部署が横浜にあるTSMCデザインセンターだ。

地域別採択論文件数推移 / VLSI Symposium 2022

図1 VLSI Symposium2022での投稿数232件、内採択数82件 日本は投稿数が減少するも採択率は54%と高い 出典:VLSI Symposium 2022


元々日米半導体摩擦を半導体エンジニアのレベルでも解消しようという趣旨で始まったVLSI Sympoだが、今では欧州やアジアからの参加も多く、インターナショナルな会議となっている。VLSI Sympoの今年の採択数は、投稿数232件の内82件で、採択率は35%となった。投稿数では日米は46件と全体の20%しかないが、採択数は26件で全体の32%を占める。相変わらず日米のレベルは高い。

基調講演は4件ある。テクノロジー関係は、ASMLの社長兼CTOのMartin Van den Brink氏による「Holistic Patterning to Advance Semiconductor Manufacturing for the 2020s and Beyond」(2020年代以降の半導体製造を進化させる総合的パターニング技術)およびTSMCの研究開発担当SVPのYuh-Jier Mii氏による「Semiconductor Innovations, from Device to System」(半導体イノベーション〜デバイスからシステムまで)の2本。

回路関係では、QualcommのSVPであるChris Patrick氏による「From System-on-Chip (SOC) to System on Multichip (SoMC) Architectures: Scaling Integrated Systems Beyond the Limitations of Deep-Submicron Single Chip Technologies」(システムオンチップからシステムオンマルチチップへ: 微細シングルチップの限界を超えた集積システム拡張)、およびSK Hynixの社長兼CEOのSeok-Hee Lee氏による「『The Rise of Memory in the Ever-Changing AI Era – From Memory to More-Than-Memory』Semiconductor Innovations, from Device to System」(変化し続けるAI時代におけるメモリの隆盛–メモリからメモリの先へ)の2本である。

これらのテーマを見る限り、もはや回路とテクノロジーとの間に壁はないと言ってよいかもしれない。すでにこれらのジョイントフォーカスセッションのテーマでも招待講演として、「Memory Technologies and Circuits for CIM」、「Advanced Wireless Communications」、「Biomedical Applications」、「3D Heterogenous Integration」という両社の壁がなくなったようなテーマが並んでいる。

(2022/05/02)

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